YouTuber/シンガーが語る「注目される歌」の極意、韓国発カバー動画の先駆者J.Fla

コロナ禍とオリジナル曲

—YouTuberとしてたくさんの曲をカバーしてきて、名実ともに韓国のYouTuberを代表する一人になった。そのことはJ.Flaさんのソングライターとしての活動にもフィードバックされていると思いますか?

J.Fla:編曲やトラックを作ることはやってきたんですが、YouTuberとしての活動は自分のオリジナル性を発揮する場ではなかったのかなと感じていて。作曲家としては今回、1年間休んだなかで自分のオリジナル曲をたくさん作りましたし、2月にはまた新しいオリジナル曲を出して、来月には正式な1stアルバムが出る予定なので、自分のソングライターとしての力を発揮する、第2章が始まるのかなと思っています。

—これまで築き上げたYouTuberとしての地位から飛び出して、新たにシンガーとしてやっていくわけですが、今どんな気持ちなんでしょう?

J.Fla:おっしゃる通りですし、自分の根っこはYouTuberだと考えています。いつも自分のことを紹介する時に、ソングライターでありYouTuberであるJ.Flaです、と言っていて、両方の顔を持っていたいという気持ちがあります。オリジナルだけ、カバーだけということではなくて、オリジナルであれカバーであれ、それは音楽であり歌であるので、これからもそういう多様な歌を歌っていきたい。今後も「この曲はいい曲だな、カバーしたいな」と思える曲に出会ったらもちろんカバーを発表したいです。そして自分のオリジナル曲を発表することで、たくさんの人に喜びをお届けできるんじゃないかなって考えています。

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©GOODSEN ENTRTTAINMENT

—世の中がパンデミックでロックダウンしている時に、ミュージシャンが自宅からYouTubeで音楽を届けることが普通になりましたが、J.Flaさんはその前からそれをやっていたわけじゃないですか。その状況はどう見ていたんですか?

J.Fla:YouTubeやSNSなどで曲を発表できるのはすごくいいことだと思うんですが、私はコロナ禍で逆にそれをやらなかったんですね。なぜなら、必ず人間はコロナに勝てると信じていたから。コロナに勝った時、つまりパンデミックが終わる時に自分がどんな音楽をやるんだろうと考えると、オリジナル曲をやりたいと思ったたんです。だからコロナ禍の間、YouTubeをお休みして自分のオリジナル曲を書き続けました。

—ご自身の会社(GOODSEN ENTRTTAINMENT)を立ち上げたのも、オリジナル曲で活動していくためだったんですか?

J.Fla:会社を設立したのは、音楽を自由にやりたいと思ったからなんです。今までより、もっと自由に音楽をやるために会社を作ろうと思ったんですが、自分で会社を立ち上げて音楽をやることも、本当に大変でした(笑)。YouTuberとしての活動のなかで、韓国をはじめ、アメリカだったりもちろんイギリスだったりから、CMの依頼がすごくたくさん来て。私はすべてお断りしてやらなかったんです。その理由は、まだ自分のオリジナル曲が1曲もない分際なのにCMをやるのは、ファンに対して失礼なんじゃないかと考えたから。誰もが知っているようなメーカーから依頼が来た時は、さすがにすごく悩んだんですけど、それもお断りしてやりませんでした。でも今回自分が会社を設立して、やっぱりちょっとそういうものもやりたいなって考えが変わりました(笑)。

—(笑)自作曲のシングル、「Bedroom Singer」「The Hare」「Before I Met You」は、YouTubeを1年間休んでいた期間に作られた曲なんですか?

J.Fla:はい。

—特に「Bedroom Singer」は、パンデミックの時の気持ちが込められているのかなと思ったんですが、どうでしょうか?

J.Fla:今回アルバムを出すにあたって作品の世界観を一つ作り、その世界観の中で曲を1曲ずつ出していくように考えていました。「Bedroom Singer」では、私がなぜYouTuberになったのかを歌っています。どんなステージよりも大きいところに私は立っている、と想像しながら歌いました。コロナ禍でみんなが小さい部屋に閉じこもって、未来が来るかもわからない恐怖のなかで生活をしていたけど、次の未来を想像する、そして諦めなければ必ず叶うよというメッセージを込めました。初めてのオリジナル曲っていうのはすごく重要だと思っていて。他の曲も含めて作ったのは同時期だったんですが、何から出すかはすごく自分の中で悩みました。「Bedroom Singer」は当時の自分と被るところがあったので、この曲を一番初めに皆さんにお届けするのがいいかなと考えたんです。



—「Before I Met You」も「The Hare」もそうですが、今おっしゃっていたように、世界観がはっきりしている3曲だなと思いました。それはJ.Flaさんが物語が好きだからなのでしょうか?

J.Fla:そうです。私は想像することが本当に大好きで。私が一番恐れているのは、身体が大人になることではなく、考えが大人になってしまうこと。だからいつでも想像することが好きで、自分が持っているものにも名前をつけたりして、そのものに命を吹き込むようにしているんです。以前病院に行った時に、「ウサギとカメ」の童話があって、もちろん前から知っているストーリーだったんですが、ちょっと手にとって読んでみたんです。読んでみると、ウサギがかわいそうだなと思ったんです。私がウサギ年だからということもあるかもしれないんですが(笑)。それでできた曲が「The Hare」で、なぜウサギがかわいそうだと思ったかというと、ウサギは多分、カメさんとの勝負に勝とうと思っていなかったんじゃないかなと思ったんです。休みたかったから休んだだけだし、試合をやりたいわけではないのに、勝手に戦いのステージに立たされてしまっているのではないか……と。それでウサギがすごく不憫に感じてしまって、その時の自分に重ねてしまったんです。当時の私は毎日14時間くらい曲作りをしていて、目も真っ赤になっていて、そんな姿もウサギみたいで。そして、いつの間にか試合に巻き込まれていたウサギと自分が重なった。だけど落ち着いて1歩ずつ行けばいいと切り替えることができて、この曲を作りました。私の曲史上、一番BPMが速い曲です。



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