BTS・RM×ファレル・ウィリアムス 赤裸々に語り合ったスーパースター対談

「責任」「プレッシャー」との向き合い方

RM:BTSとして、僕たちは国連本部を訪れ、バイデン大統領と対面する機会にも恵まれました。そんなことが現実になるとは夢にも思っていませんでしたが、僕らは自然な流れで、アジアのコミュニティの代弁者になったと思っています。僕は常に「その役割を担う存在として、自分はふさわしいのだろうか」と自問しているんですが、どこか胸を張ってイエスと言えない自分がいて。あなたはコミュニティへの奉仕活動を積極的に行なっていると伺ったのですが、誠実さとモラルが求められるその責任について、あなたはどのように考えているのでしょうか?

ファレル:俺が慈善活動に取り組む時は、必ず何かしらの背景があるんだ。俺は馬鹿げたことを口にして後悔したこともあるし、一部の人々に悪影響を与えたレコードを作ったこともある。そういう経験を経て、俺は物事について異なる見方をするようになったんだ。俺は非営利団体を立ち上げて、社会における無関心に立ち向かおうとした。それは無知な自分自身を戒め、教育するっていう意味もあったんだよ。そうじゃない場合は、今まさに君が言ったことが動機になっているんだ。「自分にそんな資格があるのか?」「自分はそういう立場にいるべき存在なのか?」っていう疑問が湧く時こそ、俺は積極的にそういう活動に取り組むようにしてる。そうすることで疑問に対する答えが見つかることもあるし、毎晩ゆっくり眠れるようになる。今の自分の立場やファンからのサポートを享受する資格について自信が持てなくなる時や、何かしらネガティブな思いに駆られる時、そうすることで気持ちが上向くんだ。


PHOTOGRAPH BY MASON POOLE FOR ROLLING STONE. WILLIAMS: BOOTS AND PANTS BY BOTTEGA VENETA. RM: JACKET, PANTS AND SHOES BY BOTTEGA VENETA.

RM:自分の中にある混乱や馬鹿げた考えが、少しでも人生をいい方向に向かわせ、ファンに夢を与えられる存在に近づくきっかけになればいいなと思っています。

ファレル:一般の人々には理解できないこともあるからね。君には無数のファンがいて、10万人のファンを前にした時に……。

RM:それは集団でしかなく、一人一人の表情は認識できない。

ファレル:凄まじいエネルギーが自分に向けられていて、君は「ジャンプしよう」と声をかける。

RM:みんなが一斉にジャンプする。

ファレル:思いっきりね。そして君が歌うと、みんな一字一句間違えることなく合唱する。その空気の振動を通じて、君は自分の行動が目の前の人々の人生に大きな影響を与えていることを実感する。そういう状況にどう対処すべきなのか、俺には想像もつかないよ。俺自身もそういう曲をいくつか作ったし、それをステージ上で歌う時、責任の重さに耐えきれなくて泣いてしまうんだ。そういう状態に近づくたびに、俺は条件反射的に一歩引いてしまう。

RM:それはなぜ? 重すぎるから?

ファレル:そう、ヘヴィすぎるからだよ。責任の重圧に耐えられなくなるんだ。だから俺は、君や君のバンドのメンバー、ビヨンセ、ジェイ・Z、カニエといった存在を心から尊敬している。毎晩のようにステージに立ち、あのプレッシャーを経験するなんて、俺には到底できない。それをこなすには、途方もなく強靭な精神が必要だろうから。君に敢えて聞きたいんだけど、ステージで全身に電流が流れるような興奮を経験した後、どうやって気持ちを沈めているんだろう?

RM:僕が初めてステージに立ったのは15歳の頃で、客が10人くらいの小さなクラブだったんですが、歌詞の大半を忘れてしまって。その時こう思ったんです。「僕はスターになるタイプじゃない。カート・コバーンやミック・ジャガーのような、どんな状況にも動じないフロントマンにはなれない」って。僕はただ曲を書くのが好きな、普通の人間でしかないんです。

例えば去年(2021年)の4月、ラスベガスのスタジアムでコンサートを開催したんです。4デイズだったんですが、毎晩異なる課題に直面しました。最初の3曲を歌い終えた後、僕ら全員もどかしくなってイヤホンを外した時に、「遂に戻ってきたんだ」って実感したんです。そこからの2時間半、僕には異なるペルソナが宿り、文字通り別人になっていました。でもその状態になるまでは、リハーサル中でも飛行機の中でも、僕は途方もなくナーバスになっていたし、ものすごく大きなプレッシャーを感じていました。ブラジルや日本、韓国など、世界中のファンがチケットを買って集まってくることを知っていたので。たった一晩のために。

だからこそ、その思いに応えないといけないと思いました。人生で最高の体験を提供しないといけないって。理屈じゃ説明できないし、とてつもないエネルギーに慄くこともあります。僕は普通の人間で、すごく緊張するし、落ち込むこともあれば、途方もないエネルギーに飲み込まれてしまいそうになることもある。それでも僕がやめないのは、やっぱり音楽が好きだからなんです。ファンが向けてくれる愛もそう。愛は受け取るよりも、誰かに対して向ける時に真の力を発揮すると思うから。だからこそ、僕は受け取った愛をみんなに返したい。みんながいなければ、韓国の小さな街で育った僕らが、ラスベガスやロサンゼルス、ニューヨークという音楽業界の中心地にたどり着くことはできなかった。僕が今こうしてあなたと話せているのも、世界中にいるファンのおかげだから。常に感謝の気持ちを忘れずにいたいし、絶対にみんなを失望させたくないんです。

Translated by Masaaki Yoshida

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE