Tani Yuuki、Ado、BE:FIRST…Spotifyランキングで振り返る2022年の音楽トレンド

 
Adoの快進撃、音楽とアニメの結びつき

ーSpotifyランキング全体で、Adoの存在感も際立ってますよね。今年は映画『ONE PIECE FILM RED』への起用、米ゲフィン・レコードとのパートナーシップ締結も話題となりました。彼女の活躍についてはいかがでしょうか?

柴:1stアルバム『狂言』が今年初頭のリリースでしたよね。「うっせぇわ」から始まった一連の現象、つまり様々なボカロPの作った曲を歌うシンガーとして広く認知され、さいたまスーパーアリーナでワンマンを開催したというストーリーだけでお釣りが来るほどの大ブレイクなのに、『ONE PIECE FILM RED』でさらにブーストがかかった。本人のキャラクターや歌唱力が抜きん出ているのは大前提としても、予想以上というのが正直なところです。


Adoは〈国内で最も再生されたアーティスト〉4位、〈国内で最も再生されたアルバム〉2位と5位



芦澤:「Liner Voice+」というアーティストが自身のアルバム制作への思いや裏話を語るSpotifyの人気シリーズ企画があって、基本的にはご自身で楽曲制作をされているアーティストに依頼させていただいているのですが、Adoは制作者というより表現者というポジションのアーティストであるにもかかわらず、表現に対してのこだわりや本人の考えが興味深かったこともあり、『狂言』のタイミングで例外的に参加をお願いしました。当初から「歌い手とボカロP」という枠を超えた表現者としての才能を感じていて。それが『ONE PIECE FILM RED』と合わさったことで、さらに別の方向へと化学反応を起こし、世界的な活躍を見せてくれました。


Adoは「新時代」が〈国内で最も再生された楽曲〉8位、〈国内で最もリピートされた楽曲〉5位、〈ゲーム機で最も再生された楽曲〉1位、「私は最強」が〈国内で最もいいねや保存された曲〉9位にランクイン。



柴:音楽とアニメの結びつきは、2022年を象徴するキーワードの一つだと思っていて。SpotifyランキングでもAdo「新時代」を筆頭に、Aimer「残響散歌」(『鬼滅の刃 遊郭編』)、King Gnu「一途」「逆夢」(『呪術廻戦 0』)、Official髭男dism「ミックスナッツ」と星野源「喜劇」(『SPY×FAMILY』)の躍進が目立ちますし、米津玄師「KICK BACK」(『チェンソーマン』)は国内アーティストとして初めてSpotifyグローバルランキングでトップ50入り。もともとアニメ作品とのタイアップは、国内アーティストの海外進出という点でも大きな意味を持っていたわけですが、今年はさらにメインカルチャーとしての座を掴んだような感じがします。

芦澤:これまでもアニメタイアップに特化して楽曲を送り出してきたアーティストは一定数いましたが、今年ヒットしたアニメ主題歌については、もともとアニメ以外の文脈で評価されてきたトップアーティストが、作品に対して愛情やリスペクトを持ったうえで曲を書き下ろすという、より進んだ関係でのコラボレーションが多かったように思います。マリアージュ的と言いますか、成熟度が上がってきている感じがしますね。







柴:以前、Vaundyにインタビューしたとき、彼にとってアニメソングは音楽的ルーツの一部であり、『王様ランキング』の主題歌「裸の勇者」は念願が叶ったタイアップだったと話していました。つまり、アーティスト側が恋い焦がれる対象として、アニメとのタイアップが位置付けられるようになった。


最新アニメシーンの話題曲をまとめたプレイリスト「Anime Now」

ーSpotifyも「音楽とアニメの結びつき」を重要視していて、いろんな施策を行ってきたそうですね。

芦澤:2018年から『進撃の巨人』『東京喰種トーキョーグール』『攻殻機動隊』『ジョジョの奇妙な冒険』といった人気アニメシリーズの公式プレイリスト制作を開始したところ世界中で聴かれるようになり、Spotifyの〈海外で最も再生された国内アーティストの楽曲〉トップ10のうち8〜9割をアニメ関連の楽曲が占めるという現象が起きています。

さらに、より深いレベルでコンテンツとパートナーシップを組むために、アニメの世界観に没入できる体験ーー例えば『竜とそばかすの姫』ではオーディオコメンタリーで音楽面の制作過程を解説していただいたり、「Canvas」(Spotifyモバイルアプリで楽曲を全画面再生する際に、背景でループ再生されるショートムービー)という視覚的要素を楽曲に実装するなど、Spotifyならではのコンテンツ制作に取り組んできました。最近では『すずめの戸締まり』で、『聴く小説・すずめの戸締まり』と題して、すずめ役の原菜乃華さんに原作のノベライズ小説を朗読していただくコンテンツも制作しました。





柴:『すずめの戸締まり』も2022年を代表する作品だと思いますし、アニメの制作側とアーティストがリスペクトし合って相乗効果を生むというのは、2016年の『君の名は。』が一つのターニングポイントになったと思います。新海誠という作家とRADWIMPSというバンドが作品の主題を深く共有することで、日本のポップカルチャーを代表するような現象になった。あの作品から変わってきた感じはありますね。

 
 
 
 

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