Aile The Shotaが語る、感情と本能が突き動かす、緻密なサウンドメイキング

身体に響く「気持ちいい」という感覚

―でも、たとえば「DEEP」とか特にそう感じますけど、まずはシンプルに「気持ちいい」という感覚が身体に入ってくる音楽を作ることをShotaさんは大切にしていますよね。

Aile The Shota 曲としていいものを書こうという気持ちはずっとありました。「音やべえな」から始まって、よく見たら「すごくいいリリック」くらいのバランスでいいかなって。もともと抽象的にすることは大事にしてましたけど、具体・抽象のバランスが曲によって違っていて。「DEEP」「無色透明」は抽象、「gomenne」「LOVE」は具体、でも曲によって1:9だったり3:7だったりする。そういうことが曲を書いていて面白いなと思うと同時に、そこを大事にしたいなと思いました。

―「DEEP」は、A.G.Oさんのおかげで新しい扉が開いた感覚が大きいですか?

Aile The Shota いやあ、これは開かざるを得なかった(笑)。A.G.Oくんに全開できてもらったトラックにノリたくて、A.G.Oくんのディープハウスを聴きたいというところからオファーさせてもらいました。最初のセッションでビートの基盤はできていて、Bメロはキャッチーなメロディをつけて、サビは音サビにしようと。“ソノママデ”のメロディも最初から決まってましたね。バースのイカれたドラムは「これ超難しいよ」って言われながらも「いやもうやっちゃってください、そのままいきましょう」って(笑)。「DEEP」はフロウとか言葉のはめ方がヒップホップマナーのチルなトラックやJ-POPのやり方では太刀打ちできない次元だったので、ダンスやっててよかったなと思いました。



―やっぱりダンスのスキルや多種多様なリズムのノリ方を身につけていることが、Shotaさんのソングライティングにはめちゃくちゃ活きているんですね。

Aile The Shota 特に「DEEP」はダンスが活きている曲ですね。フロウとかは、レコーディングブースで踊りながら考えてました。最後のラスサビの裏拍のノリは、「ここでどうやって踊ったら気持ちいいかな」「あ、裏いったらやばい」みたいな。A.G.Oくんもダンスをやってたので、「あのダンサーがエグく踊るビートにしましょう」みたいな、ダンサー知識で会話できたことが面白かったです。リリックはサウナで、まさに“細胞のレベルで感じて”考えました(笑)。

―(笑)。J-POPや歌謡曲っていかに「愛してる」と言わずにそれを表現するかが美であったりすると思うんですけど、R&Bはいかに「セックス」という言葉を使わずにそれを描写するかが肝だと思っていて。「DEEP」はそういった描写と「Love yourself」に通ずる生きる指針のメッセージが層になっていて、音と言葉の絡め方がとてもいいなと思いました。

Aile The Shota たしかに、まさにそうですね。ダブルミーニングというか、「本音」とそれを掛け合わることを、書き始める当初から大事にしたいなというのはありました。超バランスよく書けましたね。受け手次第でどちらにも取れるし、歌ってる僕としてはめっちゃ気持ちいいので。「DEEP」は特に研ぎ澄まして作った感じがあります。たとえば、“君の中で”なのか、“君の中へ”なのか、本当に細かい言い回しでニュアンスが変わる曲だと思ったので繊細に作りました。大変でしたけど、超楽しかったです。A.G.Oくん自身がこの曲をめっちゃ気に入ってくれてるのがすごく嬉しくて。先行シングルとしてディープハウスを出せたことも「やったぜ」って。多分、今後すごく活きてくるんだろうなって思いましたね。どのEPにもヒップホップは1曲入れているので、本軸を持ちながらもどのジャンルをやってもAile The Shotaだと示せたという意味でも、これを作れてよかったなと思います。

―「DEEP」はまさに、“星になっても時を越えれる”(「LOVE」)曲な気がします。

Aile The Shota 死んじゃっても作品は残るから、生きている間に、好きなように曲をいっぱい書きたい。取り繕っていたら自分の曲ではないじゃないですか。自分がいなくなったあとに「これは自分じゃないんだよな」と思う曲が残るのは、果たして「僕が残っている」ということになるのかなって考えたんですよね。だから自分が納得できる曲を書き続けたいなと思います。

―そして「無色透明」は、どういった背景から書いた曲ですか?

Aile The Shota これは……自分が相手のことを染めてしまおうとしてるんじゃないか。染めようとしてるのは自分だし、それに自分が染まっていってるのかもな。でも何にも染まってない透明な部分を求めてしまう……そういうところから「無色透明」にしようって。正直すぎて恥ずかしいくらい(笑)。TAARくんには「『染める』をテーマにバラードを書きたい」って話しました。ありのままの感情だからこそ、こんなに抽象的な歌詞になったのかな。「撞着」という言葉を初めて使いましたね。「矛盾」だと聞き馴染みのある言葉すぎると思ったから濁したくて。あとは韻で遊ぶことを変わらずやっていて、それも聴きやすさになっているかなとは思います。



―「gomenne」とかもそうですけど、韻の踏み方の気持ちよさが増しましたよね。

Aile The Shota そうですね、研ぎ澄まされている感じがします。完全に踏んでいるところと、あえて踏まないことの気持ちよさもあって。ヒップホップを好きなことが、こういうところに活きているなと思います。今作は生むのが難しかった楽曲が詰まっているからこそ、できあがった瞬間は超嬉しかったです。新しい扉を開かざるを得なかった曲が多いですね。



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