ゲスの極み乙女、NFTアート販売の真意とは? 川谷絵音ら登壇トークイベントをレポ

 


川谷絵音インタビュー「一曲500万円とかがあってもいい」

ートークセッションの最後に増井さんが話した「購入者の3割が北米からだった」という結果について、どんな風に感じていますか?

川谷:自分たちのサブスクの数字を見ると北米のリスナーがもともと多かったり、ミックスエンジニアをやってくれてる美濃隆章さんが所属するtoeとか、春ねむりさんとかも北米ツアーをやってたりするから、日本の音楽を聴く土壌があることはわかっていたので、めちゃめちゃ驚いたというわけではなく、再確認したという感じでした。「再確認」って重要で、何となく思っていたことが実際に数字になると、俄然やる気が出るんですよね。ちゃんと聴いてくれる人がいるってわかると、今まで及び腰になってたこともちゃんとやろうかなって気になるので、いずれ北米ツアーにも行きたいなと思いました。

ー途中の話に出た「『ドーパミン』で海外のチームがめっちゃ踊ってる映像を見せてもらった」というのも、自分たちの音楽が間違ってないことの再確認になったでしょうね。

川谷:あの曲は完全に海外を意識して作ったんですけど、特に何も言わずに出したから、ファンの人は「何だこれ?」ってなっちゃってたんです。でも改めて考えてみると、昔は聴く人を想定していたというか、大学でコピーバンドをやったときは、上手い先輩に認めてもらうことが目標だったし、ゲスの極み乙女を始めたときも、最初はそれまでindigo la Endで対バンしてたバンドに向けてやってたり、明確な目標があったんですよね。今回NFTをやって、最初から対象を狭めて作ったのって、ある意味で原初の気持ちがよみがえったというか、これはこれで正しいのかもなと思いました。

ー権利の関係などもあり、メジャーのレコード会社に所属しているアーティストでNFTのプロジェクトを行っているアーティストは世界的に見ても稀だという話がありましたが、川谷さんは自分の会社を持つことで独立性を保っていて、だからこそ自由にバンドを掛け持ったりもできている印象があります。そういった環境作りはどこまで意識的なものなのでしょうか?

川谷:僕らはわりと自由というか、誰に縛られてるわけでもなくて、ちゃんとしたマネージャーもいないような状態なので、新しいことに対してはわりとすぐ乗り気になるというか、悪い意味でも止める人がいないので、走っちゃったら走っちゃうんですよ。もともと前の事務所にいたときからあんまり人の言うことを聞くタイプではなかったですけど(笑)、今の方が責任感があるというか、リスクがある中で一つひとつ選び取ってはいます。ただ、僕も課長ももともと理工系で、新しいもの好きなので、だからNFTとかもすぐ「やりましょう」ってなったんですよね。でかい会社に所属していたら、権利やお金の問題があったと思うけど、僕らはそれをそこまで考えてないんです。


Maruのデジタルアート作品例(川谷絵音バージョン)

ー川谷さんはLATENCYというプロダクトブランドもやっていたり、これまでも音楽家のマネタイズの仕方についてオルタナティブなあり方を提示してきたように思います。トークセッションでも話されていたように、その核にあるのは「面白いと思えるかどうか」だと思いますが、そういった活動からも独自の目線がうかがえるなと。

川谷:会社をやるようになって、もちろんメンバーの生活もかかってるので、そこは大きいですよね。あとは、音楽の価値がこのままだと落ちていく一方だなって。サブスクからの収入は配信曲数で割られるわけですけど、誰でも配信できる分、曲の数は増え続けるわけで、サブスクの月額が変わらない限り、一曲当たりの収入は右肩下がりになっていく。なので、新しい音楽のあり方を考えないと、音楽の未来が潰えると思っていて。

ーNFTはそこに一石を投じる可能性があると。

川谷:僕が昔から言ってたのは、一曲の価値がどんどん下がってる中で、アートだったら一枚の絵で何百万円したりするわけだから、音楽でも一曲500万円とかがあってもいいんじゃないかってことで。NFTはその考え方に近いと思うんですよね。CDの値段はずっと一緒で、サブスクにはまだいろんな問題があって、最近ライブの値段が上がってるけど、それは単純にコロナの影響で。音楽はアートでもあるべきだと思うし、それがさっきの「聴く人を想定する」っていう話とも繋がるところで、メジャーにいると「いろんな人に聴いてほしい」っていう価値観が当たり前になってるけど、「この曲はこの人に聴いてほしい」っていう考え方もありなのかもしれない。単純に、今って音楽が安すぎるから、自分たちの作ってるものがここまで安く消費されることが果たして正しいのかどうかっていうのは、考えなくちゃいけないことだなって。

ーNFTには利益共有も含めたファンエコノミーの構築という側面も大きいわけですが、その可能性についてはどのように思いますか?

川谷:ファンクラブよりもファンクラブな部分もあったりして、現状だと両立が難しいというか、ファンクラブとNFTが競合みたいになっちゃってますよね。今感じてるのは、NFTのほうが高い金額を払った上での参加型な分、能動的な人が多い印象で、そこの違いはあるなと思いました。最後の質疑応答も、普段のライブとかだとあんなに積極的に手を上げる人はいないと思うから、仕込みかと思いましたもん(笑)。ミュージシャンとファンの距離がより近くなって、NFTで一緒に何かを作るっていうのは、怖さもありますけど、面白そうだなとも思います。途中で出たスヌープの話は、NFTを使って誰でも好きに音楽を作っていいっていう話だったけど、例えば、僕らが7割まで作った曲を、一番うまく100%にした人の曲をそのまま採用して、権利の30%をあげるとか……将来的にはそういうこともなくはないのかなと思ったりもしました。



「Maru」
公式サイト:https://maru.band/ja
公式Twitter:https://twitter.com/MaruOfficialNFT
公式Discord:https://discord.gg/marunft

KLKTN
ジェフ・ミヤハラ、ファビアーノ・ソリアーニ、岩瀬大輔の3名によって創業、ファンダムの新時代に向けて構築された新しいデジタルプラットフォーム「Kollektion」を運営。クリエイターやアーティストが舞台裏のコンテンツやクリエイティブ作業の過程を共有し、その一部を購入可能とすることで、ファンとの結びつきを豊かにすることを目指す。
https://klktn.com/ja


ゲスの極み乙女
【映像作品】
10周年記念公演「解体」
2022年11月9日リリース
https://gesunokiwamiotome.lnk.to/kaitai

「スローに踊るだけ」配信中
https://gesunokiwamiotome.lnk.to/slowniodorudake

「スローに踊るだけ」MusicVideo
https://youtu.be/Fceiv52n-lo

ゲスの極み乙女 ワンマンツアー 2022「文化再考」
2022年11月13日(日)北海道 カナモトホール
2022年11月18日(金)群馬県 高崎芸術劇場
2022年11月22日(火)福岡県 福岡市民会館
2022年11月23日(水・祝)大阪府 グランキューブ大阪
2022年11月26日(土)宮城県 仙台GIGS
2022年12月3日(土)東京都 国際フォーラム ホールA
2022年12月10日(土)岡山県 岡山市民文化ホール
2022年12月18日(日)愛知県 名古屋市公会堂

ゲスの極み乙女 オフィシャルサイト:https://gesuotome.com/

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