ザ・ビートルズ『リボルバー』が生まれ変わる スペシャル・エディションの全貌を徹底解説

 
『リボルバー』スペシャル・エディション 8つのハイライト

1. 「レイン (テイク5/アクチュアル・スピード)」

この「Paperback Writer」のB面曲で聴かれる幻想的なサイケデリック・サウンドは、速度を上げて演奏したバッキングトラックの再生速度を落とすことで実現している。しかし、ステージ上の彼らがオリジナルの速度で演奏する姿には、驚嘆するしかない。リンゴが1人で、ラモーンズ4人分の働きをしているのだ。ビートルマニアは、「Rain」のドラムを聴くたびに絶賛する。リンゴ・スターはかつて「僕がいて、僕の演奏があって、そして“Rain”がある」と語っている。リンゴに拍手喝采を!

2. 「イエロー・サブマリン (ソングライティング・ワーク・テープ/パート1・2)」

驚かないで聞いてほしい。「Yellow Submarine」に関してこれまで信じられてきたことは誤りだ。アンクル・リンゴが子ども受けするコーラスを歌い、ジョンが顔をしかめて我慢しつつ、手早く仕上げたポールの作品、というのが一般的な認識だった。しかし、ジョンが歌う「Yellow Submarine」を聴いて自然と涙している自分に、ショックを受けないよう気を付けてほしい。本デモテープのバージョンは、ポールがコーラス(サビ)を担当しているが、ヴァースではジョンが、フォークギターに乗せた悲しげなメロディを歌っている。“僕が生まれた場所では/みんな無関心で、誰も気にしない/僕が何という名前かも/誰も知らない、誰も気にしない”とジョンが歌う。ジョンが自宅のテープレコーダーで録音したデモ・バージョンは、「Strawberry Fields Forever」と「Julia」の中間の時期にあたる、少年時代の思い出を歌っている。胸を締め付けられるようなバラードだ。

「アウトテイクをチェックし始めるまで、全く知らなかった。例によって、レノン=マッカートニーの共作ということになっていた」とマーティンは言う。彼はポールに、「あなたが書いて、ボーカルをリンゴに託した作品だと思っていました。そしてジョンは、“ああ、ひどいイエロー・サブマリンだ”という反応だった、という認識でした」と聞いてみたという。ところが、マーティンの認識は全く違っていた。「どちらかと言えばウディ・ガスリー的だが、ある意味で美しい曲だ。この作品には、こんなにも奥深さがあったのだ、と実感させられる」とマーティンは言う。それでも、リンゴ・バージョンが存在しない世界など、想像もつかない。「アウトテイクを聴いてみると、ジョンのバージョンの美しさを知ったところで、最終的にリンゴにボーカルを任せた理由が理解できる。現実的に、正しい判断だったと言える」



3. 「エリナー・リグビー (スピーチ・ビフォ・テイク2)」

ジョージ・マーティンは、「Eleanor Rigby」に参加するクラシック演奏家たちのリハーサルで、ポールとの間に入ってコミュニケーションを手伝っていた。弦楽器にビブラートさせるべきかどうか問われたポールは、マーティンに決断を任せた。マーティンは、ビブラートをかけると楽曲の美しさを損なうと判断した。「ビブラートは使わないでくれ。何か言いたいことがある時にだけ、ビブラートさせてくれ」と彼は言った。マーティン自身のプロデュース哲学を、一行で見事に言い表している。彼は常に、意味のないものを付け加えるのを避けていた。『リボルバー』が素晴らしい作品になった理由が、ここにある。

4. 「ラヴ・ユー・トゥ (テイク7)」

ジョージ・ハリスンによるシタールとタブラの演奏が、ポールの歌う繊細なメロディーと調和して、バンドに新たな一面が加わった。曲に軽快さが加わるも、「Love You To」のようなシンプルな楽曲に取り入れる難しさがわかる。苦労してハーモニー・パートを仕上げながらも、フィットしないと判断したら切り捨てる。ビートルズの音楽づくりに対するこだわりが見える。


© APPLE CORPS LTD.

5. 「フォー・ノー・ワン (テイク10/バッキング・トラック)」

「じゃあ、俺は何もせずに普通に叩いていればいいのか?」と問いかけるリンゴに対して、「そういう意味じゃない。やってくれ!」とポールが言い返す。『リボルバー』のクリエイティブ・ミッションの全体像を象徴するシーンだ。最後に残った2人のビートル・ブラザーズが奏でるピアノとドラムのデュエットは、誰もが想像する通り、心にガツンと来る。

6. 「アイ・ウォント・トゥ・テル・ユー (スピーチ&テイク4)」

ジョージは、曲のタイトルを決めるのに四苦八苦する傾向にあった。「Love You To」の曲が出来上がった時も、最後まで「グラニー・スミス(※りんごの品種)」と呼び、正式なタイトルを決められずにいた。「I Want to Tell You」は、間違いなくジョージの傑作のひとつだ。曲のフックの部分でジョージは、“I want to tell you”と繰り返す。誰が聴いても、そのままタイトルにすべきなのは明らかだった(ジョージは後に、同様の流れで曲に「I’ve Got a Feeling」とタイトルを付けたポールを鼻で笑うような人間だ)。マーティンが「ジョージ、タイトルはどうする?」と聞くと、ジョージ以外のメンバーは大爆笑だった。ジョンは「グラニー・スミス・パート2だろ!」とからかった。いつも社交家のリンゴは「“Tell You”は、どうだい。いいだろう」と、思わずヒントを出した。計り知れない忍耐力を持った汝の名は、リンゴ。

7. 「ヒア・ザア・アンド・エヴリホエア (テイク6)」

ポールが、他のメンバーの息づかいが聴こえるコーラス抜きの、ギター一本で永遠の愛を歌っている。ポールがルーズに即興で歌う「Here, There and Everywhere」こそが、ポールのバラードの中でも秀逸だ。これを超えるものはない。

8. 「アンド・ユア・バード・キャン・シング (ファースト・ヴァージョン/テイク2/ギグリング)」

ジョンは、この皮肉めいたソウルフルな名曲を軽視することが多かった。曲の中で彼自身が丸裸にされるのを恐れた時に、ジョンがよく取った典型的な行動だ。アルバム『アンソロジー2』に収録された「くすくす笑い」テイクは既に好評だったが、今回はデュエット・ボーカルの別バージョンに加えて、ヘッドホンをしたジョンとポールが顔を突き合わせて笑いを止めらない144秒間が収録されている。自分がその場にいて、デュエットの片方を担当する時の喜びを想像できるだろうか。そこに、今回のスペシャル・エディションを楽しむための鍵がある。

From Rolling Stone US.



ザ・ビートルズ
『リボルバー』スペシャル・エディション
2022年10月28日世界同時発売
予約・購入:https://umj.lnk.to/TheBeatles_Revolver2022
特設サイト:https://sp.universal-music.co.jp/beatles/


①<スペシャル・エディション[5CDスーパー・デラックス]>
価格:21,450円税込
https://the-beatles-store.jp/product/uicy80210/

※輸入国内仕様/完全生産限定盤
※日本盤のみ英文ライナー翻訳付/歌詞対訳付
・63曲収録
・CD1:オリジナル・アルバム ニュー・ステレオ・ミックス:14曲
・CD2 & 3:セッションズ(ステレオ&モノ):31曲
・CD4:『リボルバー』 オリジナル・モノ・マスター:14曲
・CD5:『リボルバー』EP:4曲
・本文100ページの豪華ブックレット付

【①購入特典】B2ポスター




②<スペシャル・エディション[2CDデラックス]>
価格:3,960円税込
https://the-beatles-store.jp/product/uicy80211/

※日本盤のみ英文ライナー翻訳付/歌詞対訳付
・29曲収録
・CD1:オリジナル・アルバム ニュー・ステレオ・ミックス:14曲
・CD2:セッションズ・ハイライト+「ペイパーバック・ライター」&「レイン」ニュー・ステレオ・ミックス:15曲
・40ページのブックレット付


③<スペシャル・エディション[1CD]>
価格:2,860円税込
https://the-beatles-store.jp/product/uicy16125/

※英文ライナー翻訳付/歌詞対訳付
・オリジナル・アルバム ニュー・ステレオ・ミックス:14曲


④<スペシャル・エディション[4LP+7インチ・シングル:スーパー・デラックス]>
価格:32,450円税込
https://the-beatles-store.jp/product/uijy75228/

※直輸入仕様/完全生産限定盤
※日本盤のみ英文ライナー翻訳付/歌詞対訳付
・63曲収録(4枚の180g/ハーフスピード・マスタリングLP+45rpm 7インチEP)
・LP1:オリジナル・アルバム ニュー・ステレオ・ミックス:14曲
・LP2 & 3:セッションズ(ステレオ&モノ):31曲
・LP4:『リボルバー』 オリジナル・モノ・マスター:14曲
・EP:『リボルバー』EP:4曲
・本文100ページの豪華ブックレット付


⑤<スペシャル・エディション[1LP]>
価格:6,380円税込
https://the-beatles-store.jp/product/uijy75227/

※直輸入仕様/完全生産限定盤
※日本盤のみ英文ライナー翻訳付/歌詞対訳付
・オリジナル・アルバム ニュー・ステレオ・ミックス:14曲
・180g/ハーフスピード・マスタリングLP


⑥<スペシャル・エディション[1LPピクチャー・ディスク]>
価格:6,600円税込
https://the-beatles-store.jp/product/pdjt1031/

※直輸入仕様/完全生産限定盤
※日本盤のみ英文ライナー翻訳付/歌詞対訳付
・THE BEATLES STORE JAPAN限定商品
・オリジナル・アルバム ニュー・ステレオ・ミックス:14曲
・180g/ハーフスピード・マスタリングLP
・アルバム・アートのピクチャー・ディスク仕様

Translated by Smokva Tokyo

 
 
 
 

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