マネスキン、サマソニの伝説的ライブで体現した「新世代のロック」と「平等意識」

 
「自分たちの世代のロックンロール」が体現するもの

自分たちの世代と言えば、そんな中でも熱狂が最高潮に達したのは、オーディエンスの引力に引き寄せられるようにしてフロアに飛び降りたダミアーノが、通路を練り歩きながら「Touch Me」を聞かせた時だった。『Mammamia』のアナログ盤のB面に収められていた粗削りなガレージロック・ソングなのだが、彼らはそこに、ザ・フーの「My Generation」をスポークン・ワード調に解釈してマッシュアップ。そう、当時20歳のピート・タウンゼンドが、社会に居場所を求める自分のフラストレーションを託した1965年発表の究極のユース・アンセムだ。これが自分たちの世代のロックンロールであり、そのオーセンティシティを疑われる筋合いはない――と言わんばかりに“This is my generation!”とシャウトするダミアーノの声は、ロジャー・ダルトリーのそれを遥かに凌ぐ挑発とアグレッションを含んでいたことを、指摘しておきたい。

そして次の1曲もガレージ路線、ザ・ストゥージズの『I Wanna Be Your Dog』のカバーを披露し、ラストはそのザ・ストゥージズのイギー・ポップをゲストに迎えて新バージョンを録音した、大ヒット・シングル『I WANNA BE YOUR SLAVE』で飾る。MVでもお馴染みのボロボロのストラトキャスターを泣かせるトーマスのリードで華々しいフィナーレを迎えると、力尽きたように座り込んだダミアーノは「アリガトウ」と3度繰り返してから、ステージをあとにしたのだった。


©SUMMER SONIC All Rights Reserved.

ちなみに公演の最中から、いつの間にかヴィクトリアを含めて全員がトップレスになっていたことがSNSで物議を醸していたらしいが、初めてのことじゃないし、驚いている場合でもない。こんなに暑いのに、女も裸になっちゃいけない理由などないわけで、バンド内の平等意識の表れなのだから。逆にメイクの濃さも男女変わらず、ファッションは完全ジェンダー・ニュートラル。サウンドはマッチョ思想の時代にあやかっているとしても、中身は2020年代仕様。これが彼らのジェネレーションなのだ。

思えばこの日のラインナップはリンダ・リンダズに始まり、CHAIにリナ・サワヤマ、ケイシー・マスグレイヴス、そしてヴィクトリアを擁するマネスキンと、まさにステレオタイプを拒絶する現代の女性アーティストのショウケースだった。こういう海外のスタンダードをナマで実感できるのも、余談ではあるがサマーソニックのようなイベントの重要な意義なのだと、フルスケールでの復活に際して再確認できた。

【写真を見る 全17点】マネスキン サマソニ東京公演(記事未掲載カット多数)






〈セットリスト〉
1. ZITTI E BUONI
2. IN NOME DEL PADRE
3. MAMMAMIA
4. Beggin’ (The Four Seasons cover)
5. FOR YOUR LOVE
6. SUPERMODEL
7. Touch Me
8. I Wanna Be Your Dog (The Stooges cover)
9. I WANNA BE YOUR SLAVE
プレイリストで聴く:https://SonyMusicJapan.lnk.to/ManeskinSS22SetlistRS


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