35
「Intro: Singularity」(2018年)


『LOVE YOURSELF 轉 ‘Tear’』(2018年)のオープニングを飾るVの官能的なソロ曲「Intro: Singularity」は、豊かなバリトーンや私たちを虜にする静謐さをたたえたエキセントリシティといったVの強みを通じて彼の才能を余すところなく披露する。ネオソウル風のこの曲は、魅惑的であると同時にミステリアスで、歌い手は自らの感情を隠すためにつけている仮面について考察する。“一時の夢のなかでさえ、僕を苛む幻覚はいつも同じ”と歌うV。“僕は自分を見失ったのか? それとも君を手に入れたのか?”いつもは自らの感情をさらけ出すVも、ここでは胸の内を明かさない。この曲には、もっと強くなった未来の自分への期待が込められている。—N.M.

34
「Butter」(2021年)


2021年5月、甘塩っぱいタイトルと同じくらい滑らかで、耳に残る夏らしいメロディーが特徴的な「Butter」でBTSは世の中が必要としていた祝祭ムードに火をつけた。真似したくなる軽快なステップと歌詞に込められたアッシャーやマイケル・ジャクソンへのオマージュとともに、全編英語詞曲2作目の「Butter」は、コロナ規制の緩和とともに希望を抱きはじめた世界中の人のサウンドトラックとなった。グラミー賞にノミネートされたこのダンストラックが多彩なリミックスでリリースされたこと(Hotter Remix、Cooler Remix、ミーガン・ジースタリオンをゲストボーカルに迎えたものなど)に加えて、あらゆるチャートで1位を獲得したことは、「Butter」の人気を一気に加速させた(一年近く経ったいまも、ビルボードのHot Trending Songsのトップに君臨している)。“コツをつかんだら、さっそく始めよう”という歌詞がぴったりだ—A.L.

33
「House Of Cards (Full Length Edition)」(2016年)


BTSのボーカルラインの「House Of Cards」パフォーマンスをとらえたファン動画がYouTubeで1300万回以上再生されていることには理由がある。「House Of Cards」は、BTSのディスコグラフィー屈指のセンシュアルな曲であり、映画『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』のサウンドトラックさながらのオーケストレーションに合わせて官能的なドラマが繰り広げられる。JIN、JUNG KOOK、JIMIN、そしてVが崩壊寸前の悲しい関係について歌う姿から目を離すことはほぼ不可能だ。—N.M.

32
「Lie」(2016年)


『WINGS』(2016)の収録曲「Lie」は、緊張感にあふれていると同時にダークなJIMINのソロ曲だ。自己欺瞞と不安定さに溺れることを歌うJIMINの声は、いつもの甘い高音テノールを離れて、一度聴いたら忘れられない叫びやトリル、慟哭を繰り広げる。この曲を表現するためにJIMINが用いるモダンなコレオグラフィーにも、どこか自暴自棄なところがある。いちばん怖い魔物が潜んでいるのはベッドの下ではなく、心の中であることを教えてくれる。—N.M.

31
「Trivia 轉: Seesaw」(2018年)


SUGAのトレードマークである激しいヴァースとハードなヒップホップビートを期待していた人は、『LOVE YOURSELF 結 ‘Answer’』(2018年)の過程で起きた彼の変化にいい意味で驚かされたことだろう。いつも私たちの期待を裏切ってくれるSUGAは、軽快で遊び心あふれる「Trivia 轉: Seesaw」で、追いつ追われつを繰り返す「シーソーゲーム」にとらわれた関係を歌っている。マインドゲームは時とともに古くなる。だが、ファンがSUGAの傷つきやすい側面を見飽きることは決してないだろう。—N.M.

Translated by Shoko Natori

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