THE COLLECTORS、「現在進行形のバンド」としての姿を見せつけた2度目の武道館

ダメ押しされるモッズ魂

古市が歌う軽妙なロックンロール「マネー」を終えて加藤が一旦退場すると、ステージ場に残った3人が怒涛のジャムに突入(渡されたセットリストには「Instrumental」とだけ書いてあった)。優れたプレイヤー揃いのバンドだけに、ヘヴィなリフ・ロックのダイナミズムも堂々と表現できてしまうから恐ろしい。その熱が冷めないうちに、着替えを済ませた加藤が登場。続く「ロボット工場」では、元来持っていた“セックス・ピストルズ+ザ・ジャム”的な刺々しさが浮き彫りになり、ド迫力で押しまくる。

短いインストゥルメンタルを冒頭に加えた「愛ある世界」で理想のラヴ&ピースを高らかに歌い上げてから、初期を象徴する反戦歌「NICK! NICK! NICK!」を披露。マイケル・チミノ監督の映画『ディア・ハンター』にインスパイアされて生まれた曲だ。演奏中に照明がウクライナの国旗と同じ青と黄色に変わるや、一部の観客がこれに反応、掲げていたペンライトの色も青と黄がじわじわと広がっていく……という感動的な光景を見ることもできた。偶発的に起きた現象らしいのだが、こういうマジックが起こるのもTHE COLLECTORSのライブならでは、だと思う。この曲を歌い切ってから、思わず「これがロックだよ!」と叫ぶ加藤ひさし。曲を通してプロテストすることがごく当たり前だった世代ならではの、極めてまっすぐな雄叫びだ。

そして本編はいよいよ終盤。「お願いマーシー」「限界ライン」、そしてドラマティックな「虚っぽの世界」と並ぶ3曲の流れは、いまだに出口が見えないコロナ禍の閉塞感に抗いたい我々の気持ちに、何気なく寄り添ってくれているようにも思えた。この辺は選曲マジックの見せどころだ。


Photo by 後藤倫人

アンコールは、ディープ・パープル「紫の炎」(1975年にこの場所でパープルが演奏した曲だ)のイントロを少し聞かせて聖地・武道館に一礼してから、不朽のラヴ・ソング「世界を止めて」で踊らせて、クライマックスへ。そして「僕はコレクター」で大団円……かと思いきや、なんとダブル・アンコールでもう1曲、「僕の時間機械」が隠れていた。しかも、加藤ひさしはモッズパーカーを着て歌うという徹底ぶり。最後まで冷静に見届けるつもりだったが、このダメ押しにはさすがに頰が緩んだ。

MCで加藤ひさしからメンバー紹介をいきなり振られた古市コータローは、咄嗟に「最高のシンガーであり、ソングライターだと思います!」と加藤について表現していた。その2つこそ、何度もピンチを経験してきたTHE COLLECTORSを今日まで生き永らえさせてきた大きな原動力。デビュー当時は“マニアックで趣味の良いバンド”として扱われていた彼らが、35年もの活動を経て、武道館を2回埋めるほど多くの人々に愛される存在になったのも、圧倒的な詞・曲の魅力があってこそだろう。果てしない紆余曲折の末に、このバンドを最も輝かせる方法をついに見出したのかも……と実感させる、ほぼパーフェクトと言っていい内容の全21曲であった。



セットリスト
01. 裸のランチ
02. クルーソー
03. ヒマラヤ
04. ひとりぼっちのアイラブユー
05. GIFT
06. たよれる男
07. Stay Cool! Stay Hip! Stay Young!
08. 扉をたたいて
09. 全部やれ!
10. ノビシロマックス
11. マネー
12. Instrumental
13. ロボット工場
14. 愛ある世界
15. NICK! NICK! NICK!
16. お願いマーシー
17. 限界ライン
18. 虚っぽの世界
<アンコール>
19. 世界を止めて
20. 僕はコレクター
<ダブルアンコール>
21. 僕の時間機械

THE COLLECTORS 東名阪ツアー
2022年7月23日(土)東京都 チームスマイル・豊洲PIT
2022年8月27日(土)大阪府 BIGCAT
2022年8月28日(日)愛知県 名古屋CLUB QUATTRO

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE