TK from 凛として時雨、今年初有観客ライブで見せた狂気と色気

アクシデント的に客席からカトラリーが落ちる音がすると、TKはステージの上から「大丈夫ですか」と声をかけた。整然と並んだ客席を見渡し、「まさかこういうスタイルだとは思わなかったので、オーディションに来たような気持ちですけれど、音に乗らないと僕たちがつまらないというわけでもないので、静かに見てもらって大丈夫です…よろしくお願いします」と笑いを誘う。

「Shinkiro」では、ちゃんMARIの伸びやか且つ抑制の効いた歌声がTKの声と付かず離れずの掛け合いを見せ、「蝶の飛ぶ水槽」ではエレガントな雰囲気から一転、エレクトリックなSEによって会場は様変わりした。青く光が当てられたステージは、まるで水の中のようにメンバーを照らし、静かな狂気を感じさせる。曲が終わるとTKはギターを置き、ピアノに身を任せるように「片つ」を歌始める。音が少ない分、会場全体を包む自然音が際立ち、寂寞の情を催した。


Photo by 岡田貴之

再びTKがギターを持つと、それぞれのパートが不均衡にメロディーを奏で始め、「I’m a Hero」とお馴染みのフレーズが唱えられると、バラバラな部品が一気に結びつくかのように「P.S. RED I」が音像となって現れた。終盤に向かうにつれ、ドラムの音色が鮮やかにステージを彩る。オーディエンスも、すっかりリズムに身を委ねるようになっていた。

Rolling Stone Japan 編集部

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