TK from 凛として時雨、今年初有観客ライブで見せた狂気と色気

開演直前、ステージ上のスクリーンには「スタンディング禁止」「マスクの着用」「大きな声での発声はNG」といった注意事項が映し出される。2020年はそういう1年だったのだ。徐々に会場が暗くなり、サウンドスケープの音が微かに聴こえる中、拍手とともにサポートメンバーがステージにあがると、ちゃんMARIによるピアノの氷のような旋律が響く。

静まり返った会場にひんやりとした空気が漂うと、TK×suzuki takayukiのワイドパンツを着こなしたTKがステージの袖から舞台中央に登場した。ダークトーンで統一された衣装は、青い照明がよく映える。BOBOのバスドラムが正確に低音リズムを刻み「Dramatic Slow Motion」でライブがスタートした。TKの声は直線的に伸び、一音一音丁寧に発する旋律は、肉声というよりも弦楽器のようだ。一瞬の沈黙の後、「凡脳」へと続く。ステージは赤色に染め上げられ、疾走感がBillboardを包んだ。堅強な低音に支えられながら、ヴァイオリンとTKの歌声の高音が妖艶に絡む。色気とは、危うさを孕むのだと実感させられる。


Photo by 岡田貴之

続いて披露されたのは、アコースティックライブらしさが全面に出た「reframe」だ。ピアノの情感溢れる「contrast」と続き、しばらくの沈黙の後「katharsis」へと流れていく。吉田一郎不可触世界のウッドベースが官能的に響き、BOBOの力強いドラムが支える上に、ちゃんMARIのピアノ、須原杏のヴァイオリンの高音が乗る。TKは重なり合う音を噛みしめるように目をしっかりと閉じて歌声で彩る。計算されたバランスで駆け上がっていくように熱量をあげた瞬間、フッと曲の終りを迎える。

Rolling Stone Japan 編集部

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