新型コロナ、多くのミュージシャンの暮らしが崩壊する危険性

Laura Partain*

ナッシュビルのシンガーソングライター、カレブ・カードルは困難な選択を迫られており、インディペンデント系アーティストたちはパンデミックの脅威にさらされている。「新型コロナウイルスの世界的感染によって、ツアーミュージシャンたちの暮らしが崩壊する危険がある」と、彼は語る。

2週間前、シンガーソングライターのカレブ・カードルはナッシュビルでジョニー・キャッシュ所有の質素な船内スタジオにいた。4月3日リリースの新作アルバム『Better Hurry Up(原題)』に向けて、意気揚々と準備をしていた。ノース・カロライナ出身のカードルは、自身のクリエイティヴな人生の中でも「平和で喜びに満ちたとき」と認める時期に、この作品を同スタジオでレコーディングした。しかし、今ではアルバムの成功も、彼のライブ・コンサートの収益も、カードルとマネージャーである妻の暮らしも、新型コロナウイルスの世界的感染によって風前の灯火だ。先週中止が決まったSXSWで行う予定だった2公演も消え去り、もうすぐスタートすることになっている16週間のツアーも実現できるのかわからない。彼がギターを抱えてライブ会場に登場したとしても、観客が来るのか? 新型コロナウイルスの脅威がインディペンデント系アーティストたちやツアーミュージシャンたちにどのような影響を与えるのかを、カードル自身が赤裸々に綴る。

ツアーが中止されることは、農家が農作物を失うに等しい。スーパースターではない人間にとって、新作アルバム完成後からそのアルバムを引っさげてのツアーを行なうまでが金銭的に非常に苦しい。この時がこの仕事で最も厳しい時期と言える。資金すべてがメディア、ラジオ、物販に費やされるのだ。私たちも新作リリース・ツアーで販売するグッズを作るため大金を支払ったばかりだ。そういう経費はすでに支払い済みということ。最初に経費を全額支払い、それを元手に収益を得るのがツアーというわけだ。

私たちは完全にグッズ物販とライブ公演に依存している。この仕事はそういうふうに出来ているのだ。これがなければこの仕事は続けられない。しかし、現在、複数の方向から恐怖が忍び寄っている。その一つが、あのウイルスだ。感染の仕方とそのあまりの速さに恐ろしくなる。二つ目は、ツアーのライブをすべて行い、お客さんを集める責任が自分にのしかかってくる心配だ。これは間違いなく重荷となる。そして三つ目が、今回行なうのは新作リリースに伴うツアーで、7〜8ヵ月前から企画していたツアーということ。ツアーを行うための手配をしたあの月日と労力を考えてしまう。その苦労が報われないのだ。利益は後から支払われる。つまりツアーに出てからだ。私のスケジュールを見れば明白だが、現在の私たちは利益という嬉しい波を受け止める準備が整っている。16週間ぶっ続けでツアーを行なう予定で、そのうち半分がアメリカ国内、残りの半分が海外だ。現状を鑑みてこのツアーが危険にさらされていることを考えると、何をどう考えたらいいのか悩んでしまう。一つだけはっきりしていることは、この状況はチケットの売り上げに決して貢献しないことだ。

Translated by Miki Nakayama

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