賛否両論の正当防衛、レイプされて殺されかけたと主張する女性の訴え認められず

トッドの精液がブリタニーから発見されていないため、レイプは立証できないと地方検事は断言

当初ブリタニーは警察に対し、トッドを殺したのは弟だと供述していた。警察がレイプ検査をする頃にはもう手遅れになっているだろう、と思ったからだ(ザ・ニューヨーカー誌によると、レイプ検査の結果「首、胸部、両腕、両脚、腰回りに痣、首を絞められた跡、首と顎に噛み跡、首と膣から体液」が発見された)。これにより彼女の信頼性が疑われ、正当防衛審問でもネックになった。刑事事件専門のニュースサイトThe Appealによると彼女は翌日、トッドを殺したと自供した。

ブリタニーは殺人容疑で逮捕、起訴された。4カ月間拘束された後、さらに6カ月間精神病棟に収容され、1月に正当防衛を訴える機会を得た――正当防衛法とは、十分に危険な状態にある、あるいはそのように感じた場合、凶器を使用しても合法だとする法律だ。もしブリタニーの訴えが認められていれば、殺人罪を免れることができたはずだった。

審問はアラバマ州スコッツボロのジャクソン郡裁判所で行われた。性暴力被害者看護師のジェニン・スアマン氏――問題のレイプの後、ブリトニーを診察した人物――は審問の中で、彼女が噛まれ、首を絞められ、暴行を受けていたと証言した。ザ・ニューヨーカー誌によれば、トッドは過去80回逮捕歴があり、そのうち少なくとも6回は家庭内暴力だったという。

だがジャクソン郡のジェイソン・ピアース地方検事は、トッドの精液がブリタニーから発見されていないため、レイプは立証できないと断言した。判事も判決書の中で、警察の通報でブリタニーがレイプのことに一言も触れていなかった点を指摘した。本人はザ・ニューヨーカー誌に対し、恥ずかしくて電話のオペレーターに言えなかったのだと語った。

訴えの却下を受け、ブリタニーと弁護団はアラバマ州刑事控訴裁判所へ「職務執行令状」、つまり判事に判決破棄を請求することになる。もし認められなければ、次はアラバマ州最高裁判所へ上訴することになる。ここでも認められなければ、本裁判へと進む。

正当防衛法を巡り激しい議論が近年交わされてきた。いずれもパートナーから暴力を受けていた女性や有色人種が関係している。ザ・ニューヨーカー誌も指摘しているように、アラバマ州で正当防衛法が施行された2006年以降、同州で免罪となった女性はわずか数人――その中には、2018年に夫と揉み合いになり射殺したセルマ在住のジャクリーン・ディクソン氏も含まれる。

恐らく最も悪名高いのは、2012年に10代の黒人少年トレイボン・マーティンさんを射殺して、2013年に無罪放免となったフロリダ州のジョージ・ジマーマン氏だろう。近隣地区の警備を買って出たジマーマン氏は、マーティンさんを射殺したのは正当防衛だったと主張した。これに対し、当時のバラク・オバマ大統領からスティーヴィー・ワンダーまで、あらゆる人々が抗議の声を上げた。ワンダーは正当防衛法を施行している州では今後一切演奏しない、とまで言い切った。2013年のタンパベイ・タイムズ紙の調査によれば、正当防衛を主張した人のうち70%以上がお咎め無しだったこと、また被害者が黒人の場合、免罪される確率がずっと高くなることが判明した。

Translated by Akiko Kato

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