ポン・ジュノ監督が語る、『パラサイト 半地下の家族』誕生秘話

第92回アカデミー賞で作品賞、監督賞、脚本賞、国際長編映画賞の4部門を受賞した映画『パラサイト 半地下の家族』のポン・ジュノ監督(Photo by Rachel Luna/Getty Images)


さらに、ポン監督による前半と後半の美しいシンクロがあったからこそ、同作は第72回カンヌ国際映画祭で韓国映画初となるパルムドールを受賞し、その直後に米国でもほぼ満場一致の人気作になったとも言える。2019年10月11日に米ニューヨーク州マンハッタンのダウンタウンの劇場で限定上映されると、その週末のチケットは事前予約で完売した。映画評論家たちがアカデミー賞国際長編映画賞(旧外国語映画賞)は確実と予測する一方(※本記事はアカデミー賞より以前に公開)、一部には作品賞だって狙えるという意見もあった。多くの人は、このおかしくもショッキングかつ反体制的な、階級同士のバトルを描いた同作がこの10年の最高傑作のひとつである、と確信した。その他の人々にとって同作は、現代の映画界においてもっとも爽快かつ予測できない一名作に過ぎない。

今回のプロジェクトの原点は何だったのか? という質問をポン監督に投げかけると、監督は「これだ!」という瞬間に至った経緯を3つに絞り込んでくれた。本作には、監督自らの体験が部分的に含まれているのだ。「学生の頃、とても裕福な家庭の家庭教師をしていました」と監督は語り、教え子の豪邸に足を踏み入れるたびに自分が本来いるべき世界ではない場所にいる感覚を少なからず抱いたことを鮮明に覚えていると語った。「二ヶ月後にクビになりましたが、常に見知らぬ人の家に忍び込んでいるような気分でした」。

2つ目のインスピレーションに出会ったのは6年前、フランスのグラフィック本”Le Transperceneige”を実写化した映画『スノーピアサー』(2013年)の製作準備段階に没頭していた頃だった。同作のテーマである、列車というヒエラルキーにもとづいた可動式社会は、階級の問題として監督の心に重くのしかかった。「この概念をもっと探究したいと思いました」と監督は言う。「でも、スケールの大きな作品や、ハリウッド映画から距離を置く必要性を感じていました」同作の米国版のファイナルカットをめぐるポン監督と映画プロデューサーのハーヴェイ・ワインスタインとのやり取りは、誰もが知るところだ。「それに、韓国を舞台としたよりリアルなストーリーを描きたかったのです」子供向けのエコファンタジー『Okja/オクジャ』(2017年)が結局は『スノーピアサー』の次のプロジェクトとなったものの、監督はもっと地に足のついた何かを企画していた。

3つ目のインスピレーションは2つ目とほぼ同時に生まれた、と監督は言う。というのも、監督は演劇作品というアイデアも検討していたのだ。「舞台用の何かを考えようとしていました」と語る。「劇場で仕事をする場合は、空間が限られています。そこで、ひとつあるいは2つのロケーションでできそうなことを考えはじめました。裕福な家庭と貧しい家庭という、2つの家庭を舞台にしたストーリーというアイデアがあったのです」

Translated by Shoko Natori

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE