ワインスタイン裁判、やつれた被告が頼る歩行器と女性弁護士

陪審員が思わず「勘弁してよ」と叫んだ瞬間

・陪審員選任も一悶着、利益相反を抱える候補者も

これだけの規模で、メディアの関心も高い裁判での最大の難関に、陪審員の候補者集めがある。#MeToo運動の時代にどうにか脳の回路を停止し、プロデューサーと彼の容疑に公平な判断を下すことができる人間をどれだけ集められるかにかかっている。

「勘弁してよ!」 。陪審員選任の3日目、自分がこれから担当するかもしれない裁判がワインスタイン裁判だと知らされた陪審員候補者の1人が、こう叫んだ。

8週間に及ぶと見られる裁判のために、約240人の陪審員候補者が集められた。ニューヨーク・タイムズ紙が報じているように、除外された人の中にはワインスタイン氏の元妻の知人や、ローナン・ファロー氏の著書『Catch and Kill』を読んだことがあると認めた2名も含まれていた。とある女性は、友人がワインスタイン被告と「会った」ことがあるらしい、と明かしたために候補から外された。

ゴシップサイトPage Sixも報じているように、「勘弁してよ!」と叫んだ女性はまだ候補者リストに残っている。

・ワインスタイン被告の弁護団を率いるドナ・ロトゥンノ弁護士は、全国レベルの有名人になるかもしれない

高給取りの弁護士が顔を揃えたワインスタインの弁護団は、今週新たなメンバーを迎え入れた:ドナ・ロトゥンノ氏だ。#MeToo運動に批判的なシカゴの被告側弁護士で、6月に弁護団に加わった彼女が、プロデューサーをレイプと性的暴行で告発した女性の証人に反対尋問を行うことになるだろう。
「複数の女性が証言台に立つ裁判の場合、被告側に女性がいるだけで違ってくるんです」と、ロトゥンノ氏はロイター通信に語った。

元検察官のロトゥンノ氏は、15年前に法律事務所を構えてから、40件以上の性的暴行裁判で被告側の弁護を担当したと言われている。「MeTooやTimes Upといった歴史上の転換期に女性として生まれた以上、私の役割は男性の弁護士とは違うものになるだろうと思いました」とロトゥンノ氏はロイター通信に語った。「世間は『ちょっと、あなたは自分と同じジェンダーの相手に対抗するつもりですか、よくもそんなことができますね』と言います。でも私に言わせれば、ジェンダーより大きなものがあるんです。私たちの権利です」

だがすでにロトゥンノ氏は批判の矢面に立たされている。彼女はCNNのインタビューで、検察側の証人の1人である女優のアナベラ・シオラ氏について「俳優として人生ずっと生計を立ててきた人です……そうした状況と事実、そして裁判の証拠を踏まえれば、彼女の証言はハーヴェイ・ワインスタイン氏を有罪にするには不十分だと陪審員もわかるでしょう」と発言。ジョーン・イラジー地方検事補から、シオラ氏の「名誉を傷つけ、辱めた」として非難された。

インタビューの中でロトゥンノ氏は、弁護側の論点も披露した。「被害者になりたくなければ、ホテルの部屋に行かなければいい」。 ニューヨークの裁判の発端となった告発者、制作アシスタントのミミ・ハレイー氏と匿名の女性は、それぞれマンハッタンにあるワインスタイン氏の自宅とホテルの部屋で性的暴行を受けたと証言している。

・ハーヴェイ・ワインスタインの刑事裁判、ロサンゼルス編

ワインスタイン被告の裁判は西海岸と東海岸の両方で繰り広げられることになった。ニューヨークの裁判がまさに始まろうとしたとき、ロサンゼルス検察局はプロデューサーを強姦と性的暴行の4件の重罪で起訴すると発表した。

起訴の発端となったのは2013年に2日間に渡り、それぞれ別々にワインスタイン被告から性的暴行を受けたという2名の匿名での告発。立件されれば、ワインスタイン被告は強姦、強制口腔性交、力尽くでの性的姦通、拘束下での性的暴行といった重罪で起訴される。ロサンゼルスのこれらの起訴で有罪となれば、ワインスタイン被告は懲役28年が言い渡される。

「被告が権力と影響力を行使して被害者に近づき、暴力的な犯罪を犯したことが証拠によって証明できると確信しています」と、ロサンゼルス地方検察局のジャッキー・レイシー検事は声明を発表した。

Translated by Akiko Kato

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