田中宗一郎が語る、ポピュリズムが更に猛威を振るう2020年代と、だからこそポップ・カルチャーが重要である理由

Courtesy of Rolling Stone Japan

音楽評論家・田中宗一郎と映画・音楽ジャーナリストの宇野維正が旬なポップ・カルチャーの話題を縦横無尽に語りまくる、音楽カルチャー誌「Rolling Stone Japan」の人気連載「POP RULES THE WORLD」。

2019年9月25日発売号の対談では、2020年代は更にポピュリズムが猛威を振るう時代になるであろうこと、そしてそのような状況下だからこそ、ポップ・カルチャーに帰属意識を持つのが重要であることについて、田中が語っている。

田中曰く、ポピュリズムのさらなる台頭の予兆は、イタリアの連立政権の顛末、2020年のアメリカ大統領選、そして小泉進次郎の躍進などに見て取れるという。

田中:去年11月に宇野くん、柴くんとCINRAのイベントに一緒に出たときは、俺はひたすらイタリアの連立政権の話ばかりしていたでしょ? 反移民という共通点を通して、左翼のポピュリズム政党「五つ星」と極右の「同盟」が手を組んだっていう。でも、結局、今年8月になって、イタリアの連立政権内で左翼と極右の対立が激化して、極右から追い出される形でコンテ首相が辞任することになった。つまり、左翼ポピュリズムの力でのし上がった政権が完全に極右ポピュリズムに懐柔された形になった。一方で、アメリカの民主党にはトゥルシー・ギャバードっていう米国議会初のサモア系の女性議員がいて、今注目を集めている。彼女、ヒンドゥー教徒でもあって。

宇野:来たるべき大統領選の民主党候補の台風の目って言われてる人ですよね。

田中:ギャバードの公約の最大の軸は、国外の事象に対する不干渉で、それが右からも左からも支持されてる。39歳と若いから民主党の代表に選ばれるのは難しいかもしれないけど、もし選ばれるようなことがあれば、これまでのパースペクティヴでは読めないことが2020年代には起こることになるかもしれない。東京オリンピック後の混乱の後で、小泉進次郎が自民党総裁選に立候補したりするようなことになれば、それもよく似た話だよね。このポピュリズムの時代に、彼ほど人気のある政治家はいないわけだから。これからは、よりポピュリズム――感情に訴えかけることがすべてを動かすことになるかもしれない。となると、さらにカオティックになると思う。

そして、そのような状況下では日本という国家に希望が持てないからこそ、グローバルなポップ・カルチャーの一員として自らを規定することが重要だと語っている。

田中:実際、これだけ日本がひどい状況になってくると、自治国家を造るしかないんじゃないかと思えてくるよね(笑)。まあ、俺は北朝鮮が日本に何か落として、北はロシア、南は中国に分割統治されることだってあり得るよね、くらいの気持ちでいようかなと思っているから。

宇野:ディストピア恐怖症が過ぎますね(笑)。

田中:一市民としての政治参加を諦めてるわけじゃないんだけど、国家という枠組みとか、固有のガラパゴス化したカルチャーにこだわっていても仕方ないと思うの。だって、グローバルなポップ・カルチャーという誰もがアクセス可能な場所はあるわけだし、気候変動や格差経済とかグローバル社会に暮らす人間の誰もが真剣に向き合わなくちゃならないイシューもあるわけじゃない。だからこそ、自分のアイデンティティをそこに向き合うコミュニティの一員だって風に規定していないと、これから先は本当にキツくなると思う。

宇野:ということは、今後よりポップ・カルチャーが重要になるっていうことですよね。そこに帰属するのが救いだっていう。

田中:子供時代から自分がポップ・カルチャーに対してずっと感じていたことはそれなんだよね。いくら日本や地元の大阪の価値観にアクセスできなくても、ポップ・カルチャーが帰る場所を与えてくれた。リアルタイムのポップ・カルチャーもそうだし、ポップ・カルチャーの歴史もそう。そこに自分が帰属している、俺は自分の共和国を持っているんだって風に感じながら生きてきた。だから、これからもその住民であり続けるだけ。

本誌での2人の会話は、テイラー・スウィフトの2020年の大統領選に向けた動きや、ROCK IN JAPANを始めた渋谷陽一の偉大さにまで及んでいる。

Edited by The Sign Magazine

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