米大統領選密着ルポ アンドリュー・ヤンによる奔放な選挙活動の内幕「私はネットの申し子」

アンドリュー・ヤン(Photo by Sacha Lecca for Rolling Stone)

はみ出し者の米民主党大統領候補と、彼を支持する熱狂的なオンラインフォロワーたちに密着。

ああ、デモクラシーの匂いがする。揚げた魚の強烈な匂いと人々の熱気が充満する2019年6月のある暑い金曜の夜。ジム・クライバーン下院議員主催のイベント「World Famous Fish Fry」に人々が集まった。2020年の米国大統領選挙へ向けた大騒ぎが、サウスカロライナ州コロンビアにもやってきたのだ。イベント会場では、クライバーンの名前をプリントした藤紫色のTシャツを着た候補者たちが、まるでコンテストの出場者のように次々とステージ上に登場する(ただしバーニー・サンダースだけはTシャツを着ていなかった)。各候補者には、予備選挙の行われる重要な州に集まった数千人の有権者たちの前でクライバーンに敬意を表すための「十分な時間」が与えられた。

米下院民主党議員のナンバー3でサウスカロライナ州の党トップを務めるクライバーンが、各候補者を紹介する。午後10時をかなり回った頃、政治経験がないものの「ヤン・ギャング」と称するネット上の熱狂的な支持者を有する候補者のアンドリュー・ヤンがステージ上に姿を現すと、クライバーンが紹介する前に大歓声が上がった。

アン、ドリュー、ヤン! アン、ドリュー、ヤン!

イベントに駆けつけた20数名の候補者の多くはこのような歓声を受けることはなく、大統領候補に名乗りを上げた議員や知事ら全員に対する拍手喝采よりもヤン一人に対する歓迎の声のほうが大きかった。普段は感情をあまり表に出さないジム・クライバーンですら、もう笑うしかなかった。

マイクを手にしたヤンは、拳を天につき上げながら叫んだ。

「ハロー、サウスカロライナァァァ!」

彼は「現代の最も大きな問題を解決するために」立ち上がった、と観衆に向かって語った。

2018年前半に大統領選への立候補を表明した時、ヤンは米国の政治の世界で全く無名の存在だった。彼は選挙に立候補したことも選挙活動に携わったこともないどころか、前回の民主党予備選挙で投票すらしていない(仮に投票所へ出向いたとすれば、自分はバーニーに投票しただろう、と本人は述べている)。「ヒューマニティ第一主義」を公式のモットーとして掲げるヤンだが、初期の選挙キャンペーンのチラシには「アンドリュー・ヤンで検索」という、より実務的なメッセージが書かれていた。

Translated by Smokva Tokyo

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