米NYの刑務所でトランジェンダー女性が死亡、暴力の痕跡ないと職員は主張

トランスジェンダー女性のレイリーン・ポランコ受刑者が、軽犯罪で4月より収監されていたライカーズ刑務所の監房で死んでいるのを発見された。(Photo by Seth Wenig/AP/Shutterstock)

アメリカ時間7日、米ニューヨーク市のライカーズ島内の刑務所に収監されていたトランスジェンダーの女性レイリーン・ポランコ受刑者が、監房で死んでいるのが発見された。NBCが報じている。

関係者によると、ローズ・M・シンガー女子受刑者センターにいた矯正局の職員が、ポランコ受刑者の身体がまったく動いていないのを発見。医療チームが到着するまで、看守が心肺蘇生を行った。その後も蘇生を試みたが、1時間後に死亡が宣告された。死因は発表されていないものの、矯正局は暴力の痕跡はなかったと述べた。

ポランコ受刑者は、軽暴力および麻薬の罪で2019年4月中旬よりライカーズ刑務所に収監されていたもよう。ニュースサイトThe Cityのローザ・ゴールデンゾーン記者によるTwitterの投稿によれば、ポランコ受刑者は2017年にも麻薬所持で逮捕されていたため、500ドルの保釈金が科されていたという。

「愛するレイリーンの死に胸が張り裂けそうです。彼女は、周りの人間を希望で照らす明るい光でした」と、ポランコ受刑者の遺族は声明を発表した。遺族はまた、死因に関して「説明を求める」とともに、「レイリーンを保護できなかった」として市当局を非難した。

ニューヨーク矯正局のシンシア・ブラン局長は、ポランコ受刑者の死についてこう発言した。「非常に痛ましい死です。我々は心より遺族の皆さんにお悔やみ申し上げます。全力を挙げて捜査に乗り出すとともに、受刑者の安全と健康を最優先課題といたします」

ポランコ受刑者は、1982年の創立以来ニューヨークのドラァグクイーンカルチャーの中心地として有名なHouse of Xtravaganzaのメンバーとして知られていた。TVドラマ『POSE』の出演者で、ポランコ受刑者のXtravaganza仲間のインディア・ムーアも、彼女の死についてTwitterに投稿した。「ずっとレイリーンのようになりたいと思っていた。彼女は、私がこれまで会ったトランスジェンダーの中でもとびきり綺麗だった。私にとって、彼女や他の女の子たちがお手本だったの」

近年、ライカーズ島での囚人に対する処遇はたびたび問題視されている。そのきっかけのひとつが、マスコミにも大々的に取り上げられたリーフ・ブラウダー受刑者の事件だ。当時16歳だった彼はバックパック窃盗の容疑で逮捕され、公判を待つ間1000日間も収監された(そのほとんどが独房での監禁)。最終的に裁判は却下されたが、その後ブラウダー受刑者は自殺。収監中に患った心的外傷後ストレス障害(PTSD)が原因とみられる。ニューヨークのビル・デブラシオ市長は2017年、市当局は2026年までにライカーズ刑務所を閉鎖する方向で進めてゆくと発表した。

ポランコ受刑者の死はトランスジェンダー、とくに有色人種のトランスジェンダーが相次いで死亡または殺害された事件が多発する中で発生した。ダラスではこの1年、シャネイル・リンジー、マレージア・ブッカー、ブリタニー・ホワイトと、少なくとも3人のトランスジェンダーの女性が殺されている。

Translated by Akiko Kato

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