『ウォーキング・デッド』リックとの別れ、共に歩んだ8年間

ウォーキング・デッドでの最後の抵抗を見せるアンドリュー・リンカーン(Jackson Lee Davis/AMC)

2010年から8年間『ウォーキング・デッド』のヒーロー役リック・グリムスを務めた、アンドリュー・リンカーンがテレビシリーズから姿を消した。リックへの別れを告げるため、リックとともに歩んだ8年間を回想する。

※注意:ネタバレが多く含まれております。

2010年のハロウィンの夜にリック・グリムスはテレビに初めて姿を見せたが、それはドン・ドレイパーが女性を虐待し酒に溺れ、ウォルター・ホワイトがアルバカーキにドラッグ帝国を築き、ナッキー・トンプソンが独裁者のごとくアトランティック・シティを支配し、デクスター・モーガンがマイアミの裏社会で殺人を繰り返しながらテレビ史上最もバカにされる木こりになろうとしていた頃であった。そこに人の共感を呼ぶような目標を持った、しゃれたカウボーイハットをかぶったジョージア州の小さな町の保安官代理を演じるハンサムなイギリス人俳優アンドリュー・リンカーンが登場した。彼はただゾンビを殺し愛する人たちを守りたかっただけなのである。誰だって彼の応援をしたくなるだろう。

シーズン9の第5話の最後で鉄筋で串刺しになりダイナマイトの爆発に巻き込まれミステリアスなヘリコプターに連れ去られリックはいなくなった。AMCはエンディングロールの直後にリンカーンがテレビ映画シリーズ『ウォーキング・デッド・ユニバース』の主演を務め、リックのストーリーを続けると発表した。「これは終わりの始まりじゃない、始まりの終わりなんだ」とあらかじめ用意された声明の中でリンカーンは述べた。このアイデアをいいと思うか悪いと思うかはそれぞれ意見が別れるであろう(ツイッターでは多くのファンがよく思っていないようだ)。しかし、死んでしまったわけではないが、今朝の時点で彼はもはやテレビ版ウォーキング・デッドのヒーローではないのだ。

ある意味この8年の間にこのキャラクターに起こった出来事はテレビそのものに起こったことだと言える。2010年代当初の評価の高いケーブルテレビのドラマといえばリーダー的存在が困難な選択を迫られ、そしてまた問題を残していくというものばかりであった。そして今2010年代も終わりに近づき、現実世界もますます影響力のある悪人たちに牛耳られるようになっていることも少なからず影響し、自信満々に振る舞いながらも内には苦悩を抱えた、考えるよりまず先に行動するような男はあまり共感を呼ばず、見ていてもおもしろいものではなくなってしまった。

テレビだとかエピソード形式だとかに関わらず、それでも彼がウォーキング・デッドを去るにあたって、”いつも歓迎されるばかりではなかった”役を好演したリンカーンに賛辞を送るための機会を設ける価値はあるだろう。

ウォーキング・デッドの放映に先駆けて、王立演劇学校で訓練を受けた(ロンドンにてアンドリュー・ジェイムズ・クラッターバックとして生を受けた)この俳優はクリスマス映画の名作『ラブ・アクチュアリー』で失恋した新郎介添人役を演じたことで知られていた。しかしリンカーンが保安官代理のリックになってからは彼が他の誰かであることを想像するのは難しくなってしまった。長年リックの南部訛りのしゃがれ声をやってきたので彼がインタビューで自分の声で話しているのを聞くのですら違和感があるほどだ。

Translated by Takayuki Matsumoto

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