中国最大の音楽ストリーミングサービス、いよいよアメリカ上陸

(Photo Illustration by Chesnot/Getty Images)

中国最大手の音楽ストリーミング会社、騰訊(テンセント・ミュージック・エンターテインメント、以下TME)が、火曜日アメリカでの株式上場を申請した。実現すれば、アメリカ証券株式市場の歴史に残る、IT企業の上場になると見られている。

TMEはQQ音乐(QQ Music)、酷我(Kuwo)、酷狗(KuGou)という中国三大デジタルサービスの他、カラオケアプリWeSingを運営し、合わせて月間8億人以上のアクティブユーザーを抱えている。同社がアメリカ証券取引委員会に提出した届出書によれば、2017年の年間収入は16億6000万ドル。2018年はこの数字をさらに上回ると見られている。アナリストは、新規株式公開によるTMEの株か評価は300億ドル前後にのぼると予想。4月にSpotifyがアメリカ株式市場にダイレクトリスティングで上場した際の評価額も、ほぼ同規模の295億ドルだった。Spotifyの現在の評価額は320億ドル。

明らかに、2018年は音楽ストリーミング企業の当たり年。だが、テンセントとSpotifyを比べると明白な違いがひとつある。Spotifyが、安価な商品価格とアーティストや著作権保有者への巨額なロイヤリティ支払いが原因で年々損失を出しているのに対し、騰訊は利益を上げているのだ。届出書によれば、過去2年間の年間収益は相当額にのぼる。成功の秘訣は何なのか? その理由は、TMEの親会社であるインターネット巨大企業、騰訊控股有限公司(テンセント・ホールディングス)が、ゲームプラットフォームやソーシャルネットワーク、人気のメッセージアプリWeChatといった他のデジタル事業の会員と密に繋がっていることが挙げられる。こうした多岐にわたる収益共有システムが、TMEを一匹狼のSpotifyよりもさらに強力な立場に押し上げているのだ。

さらにTMEは、音楽ストリーミング以外のサービスも提供している。QQ Musicを例に挙げれば、会員登録による音楽試聴に加え、コンサートチケット販売や限定曲のダウンロードなど、総合的なエンターテインメント体験を提供する。届出書によれば、2018年上半期オンライン音楽サービスはTMEの総収入の29.6%を占めるが、カーオーディオやイベントチケット販売、オンラインカラオケ、ヘッドフォンやカラオケマイクの販売といった「エンターテインメントその他サービス」の収入が占める割合は70.4%にのぼる。この2つの数字は、音楽分野に関心のある投資家のみならず、自社の成長戦略見直しを迫られる他の音楽ストリーミング企業からも、大いに関心を集めることになるだろう。

TMEの株式のうち、テンセント・ホールディングスの所有株は58%。さらに9%は、昨年TMEと株式スワップを実施したSpotifyが所有している。業界情報サイトのミュージック・ビジネス・ワールドワイドが指摘しているように、これまで音楽レーベル御三家のうちの2社、ワーナー・ミュージック・グループやソニー・ミュージック・エンターテインメントも、総額2億ドル前後の現金対価交換により同社の普通株を合計6800万株獲得している。

Translated by Akiko Kato

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE