フジロック現地レポ「ポスト・マローンが伝える、自分を信じることの大切さ」

7月27日(金)、フジロック1日目のホワイトステージに出演したポスト・マローン(Photo by Shuya Nakano)

2018年上半期、アメリカとイギリスで最も売れたアルバムはポスト・マローンの2ndアルバム『ビアボングス&ベントレーズ』である。若者のグループ、子連れファミリー、大人のカップルなど、ホワイトステージの前方には様々な外国人オーディエンスが集まり、誰もが知っている「ロックスター」の登場を心待ちにしている様子。日本人のオーディエンスからは「ポスト・マローンって、まだ23歳なんだって」「若っ!」という会話が聞こえる。パッと見た印象、マローンと同世代の日本人が多い。満月が夜空に浮かぶ22時半、スモークの中から彼は現れたのだった。

冒頭3曲は「Too Young」「Takin’ Shots」「Better Now」という展開。日本のファンに向けていきなり「Psycho」「Rockstar」などのメガヒット曲を披露するかもと思ったりもしたが、いつもと変わらない入り方で、愛嬌のある笑顔を浮かべながら、23歳とは思えない堂々としたパフォーマンスを見せた。


Photo by Shuya Nakano

ローリングストーンの記事では、ハンク・ウィリアムス、エイサップ・ファーグ、バイオハザード、ファーザー・ジョン・ミスティ等をフェイバリットに挙げていたように、彼が作る音楽のバックグラウンドは多様である。この日のライブ後半では「Feeling Whitney」「Stay」とギターを手にしての弾き語り(コーチェラのときと同じように最後にはギターを叩きつけて壊した)。大ヒット曲「Rockstar」もコーチェラのときと同じようにディストーションのギターを効かせたアレンジで聴かせるなど、今回はバンド編成ではなかったものの、ライブ仕様の曲もステージ映えする。


Photo by Shuya Nakano

自分がポスト・マローンを好きなのは、いかにもロッカーっぽい破天荒なところと繊細な人間性が表裏一体となっている点だ。初の日本のステージでも、酒とタバコを片手に歌い、さらにはファンのスニーカーに酒を注ぎ飲んでしまう男(その後に披露したのが「Paranoid」というのもよかった)。「俺のハートを壊したバカなビッチどもに捧げる」と言って始めたのは「I Fall Apart」。哀愁を帯びた歌声で「崩れ落ちるんだ、心の奥まで」という一節が、どうにもこうにもエモい曲なのだが、後ろで鳴ってるビートはトラップ風味という組み合わせが今っぽい。自分を振った女性に悪態つきまくる曲なのに、「全部俺のせい」「でも忘れられない」とボヤくところもいい。

客席にシンガロングを促すメロウな「White Iverson」は、さすがにコーチェラのときのような大合唱にはならなかったが、それでも不思議な一体感があったと思う。言葉の壁があるのは仕方がないとはいえ、彼の曲にとてもポジティブなものを感じて「好きだ」という気持ちになってくれた日本人のオーディエンスが多かったんじゃないだろうか。

「最近では自分自身であることを恐れてる人がたくさんいる。もしそういう自覚があるなら、自分を信じてやりたいことをやってみるんだ。俺がこうやって何千人もの前でプレイできるなんて、誰も信じてなかった。でも今、俺はこうして日本にいる」と話してラストに披露したのは浮遊感のある「Congratulations」。「昔は誰も見向きもしなかったけど、辛抱強くやり続け、チャンスをものにした」という内容の、いわゆる「成り上がり」なリリックが刺さる一曲である。


Photo by Shuya Nakano

白人でアウトサイダーの彼がこのような音楽スタイルで頂点を極めるまでには、様々な壁があったはずだ。そのことについて彼はローリングストーンの取材で「世間の一般的なイメージに当てはまらないものは嫌悪の対象になるんだ。俺は音楽の力で、様々な軋轢を乗り越えて、世界をより美しい場所にできればと思っているよ」 と語っている。


Photo by Shuya Nakano

ポスト・マローンはポスト・マローンであり、それ以上でもそれ以下でもない。圧倒的なスペクタクルを感じさせるスターではないが、「今、この時代にどう生きていくか?」ということをパーソナルなレベルで分かりやすく体現してくれて、何ものにも縛られない「自由さ」を手にしている。そしてロックやヒップホップを誰よりもおいしく味わうミュージシャンなのだ。ライブの最後に「俺の名前はオースティン・リチャード・ポスト」とあらためて自己紹介をしたポスティ。この飾り気のない男こそ、2018年の世界を魅了したロックスターの姿なのである。



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