生命を脅かす「鎮痛剤」ープリンスやトム・ペティの死亡原因となった合成ドラッグ「フェンタニル」とは?

プリンスの妹やトム・ペティの家族らがオピオイド中毒に関して声を上げた。(Jimmy Turrell for Rolling Stone)

音楽業界に蔓延し、ヘロインの30倍も強力な影響力を及ぼす「オピオイド」。近年のドラッグの過剰摂取による死因ではヘロインを上回り、2016年米国におけるオピオイドの致命的な過剰摂取は約6万5000件と増加している。オピオイドの中でも最も危険とされている新種の合成ドラッグが「フェンタニル」だ。プリンス、トム・ペティやサウンドガーデンのクリス・コーネルなど、このフェンタニルによる死亡が増えてきている。その現状とは?

「ツアーやスタジオが本当に落ち着ける唯一の場所なんだ」と2017年夏、トム・ペティはローリングストーン誌に語った。そして、トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズの40周年を記念したハードなツアーを始めた理由を説明した。ところがツアーは、彼にとって容易なものではなかった。53公演のツアー中、ペティは左腰の骨折による激しい痛みと戦っていた。バックステージでの移動にはゴルフカートを使い、鎮痛剤を服用しながら乗り切った。「トムは病んでいた」と、友人のスティーヴィー・ニックスは言う。「ツアーをなんとかこなそうとがんばっていたのね。彼はツアーをキャンセルして家へ帰り、病院へ行くべきだったわ。でもトムはそうしなかった。彼は三途の川を渡ろうとしていたのよ」

2017年10月、ハリウッド・ボウルでツアーの最終公演を行ってから1週間後、ペティは66歳でこの世を去った。死因は、複数のドラッグを誤って過剰摂取したことによる。中でもペティの家族がやり玉に挙げるフェンタニルは、米国麻薬取締局(DEA)によれば、ヘロインより30〜50倍も効能の高い合成オピオイドだ。オピオイド乱用の前歴があったにもかかわらず、彼には痛みを和らげる目的でフェンタニル・パッチを処方されていた。遅効性のパッチのほか、彼の体内からは、より危険な2種類の合成ドラッグが検出されている。「ブラック・マーケットで入手できるような違法ドラッグだ」と、米国立薬物乱用研究所のノラ・ヴォルコウ博士は言う。(ペティの家族はコメントを避けている)

ペティによるドラッグの過剰摂取は、彼より1年半早く亡くなったプリンスとあらゆる意味で酷似している。プリンスもまた、長年に渡る激しいライヴ・パフォーマンスが原因と思われる腰の故障のため、薬を服用していた。この10年で、ジェイ・ベネット(ウィルコの元ギタリスト)、マット・ロバーツ(3ドアーズ・ダウンのギタリスト)、ポール・グレイ(スリップノットのベーシスト)らが、フェンタニルの過剰摂取を主な原因として死亡している。2017年11月、急成長中だったラッパーのリル・ピープは、フェンタニルとザナックスを同時に服用した後、21歳で亡くなった。「とても強力な薬です」と、ペティの娘エイドリアは言う。彼女は、反フェンタニル・キャンペーンの立ち上げを計画している。「このような目に遭うのは、私たちが最後になって欲しいと本当に願います。愛する人を正当な理由もなく失うことほどつらいことはない、と私たちは知りました」

Translated by Smokva Tokyo

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