映画『ハドソン川の奇跡』:クリント・イーストウッドとトム・ハンクスが描く英雄パイロットの物語

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イーストウッド監督は、IMAXカメラを駆使し(撮影監督のトム・スターンに賛辞を送る)、鬼気迫る機内や救助シーンであなたを釘付けにする。しかし、そういった胸の高鳴るシーンだけで、映画全体を持たせることができるだろうか? そうは思えない。そこでイーストウッドと脚本家のトッド・コマーニキは、"ハドソン川の奇跡"と呼ばれる大惨事の後の余波を描いているのだ。公の場で、サレンバーガーはメディア、政治家、彼を崇拝する人々から質問攻めに遭う。さらに内心で、もしも不時着に失敗していたら起きたであろうゾッとするような幻覚にも悩まされていた。やがて、サレンバーガーは妻のローリー(ローラ・リニー)との電話で自分の決断に確信を持つ。

しかし、40年以上の経験に基づいたサレンバーガーの判断は国家運輸安全委員会から嫌疑をかけられ、サレンバーガーとスカイルズは執拗な尋問を受ける。国家運輸安全委員会による公聴会は救出劇の直後ではなく、事故から18カ月後だった。ではなぜ、嫌疑は覆ったのか? それこそが本作のテーマであり、経験の重さや直感がコンピュータによる計算・推測を凌駕するということ、そしてそれはそう遠くない昔、人間性が何でもデジタル化されてしまう以前は当たり前のことだったかもしれない。

映画『ハドソン川の奇跡』は、それぞれのキャリアで絶頂を迎えているイーストウッドとハンクスにとって、紛れもなく思い入れの深い一本だろう。ハンクスの芝居は素晴らしいもので、謙虚な男の大胆な所業に見事に調和し、特別な意味合いをもたせている。ハンクスは、『フィラデルフィア』と『フォレスト・ガンプ/一期一会』の演技で2度のオスカー(主演男優賞部門)を獲得しており、『ビッグ』『プライベート・ライアン』『キャスト・アウェイ』で3度ノミネートされている。驚くべきことに最後の受賞から15年も経っているのだ。何てことだ! アカデミー会員たちはハンクスの偉業を当たり前だと思っているのだろうか? 彼らは、『ロード・トゥ・パーディション』や『キャプテン・フィリップス』や『ブリッジ・オブ・スパイ』を見たのだろうか? ハンクスの手にかかると、不可能と思われることさえ楽々こなしているように見えるのだ。サレンバーガーの人柄を知るための回想シーンはわずかしかないが、そこに特別な弁明はない。そんな限られた状況でも、類稀なる才能の持ち主ハンクスは観客が知るべき全てのこと、サレンバーガーという男の実像を見事に表現しているのだ。これは第1級の演技力といえる。

本作は、まさにサレンバーガーが重んじていること、"最高の仕事"と呼ぶに相応しいだろう。



9月24日(土)丸の内ピカデリー、新宿ピカデリー他全国ロードショー。
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Translation by Sahoko Yamazaki

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