Aile The Shotaが語る、J-POPとカルチャーが交わる新たな場所づくり

Aile The Shota

ヒップホップ/R&BシーンとJ-POPを行き来するソロアーティスト、Aile The Shota。3月28日には、Bleecker Chrome、Cookie Plant、vividboooy、Dr.SWAGなどを招いた初のオーガナイズイベント『PANDORA organized by Aile The Shota』を開催し、Aile The Shota自身のルーツを表現しながら、クラブで歌っていた当時の空気感やヴァイブスをZepp Haneda(TOKYO)という大きな規模へ持ち込むことに成功した。

【写真を見る】「PANDORA organized by Aile The Shota」

その後4月19日には、イベントにも出演したMaddy Soma(Cookie Plant)、Kenya Fujita(Bleecker Chrome)、さらには所属事務所・BMSGの仲間であるNovel Coreとedhiii boiをフィーチャリングに招いた、計4曲収録のEP『omen』をリリース。昨年12月に発表した「J-POPSTAR feat. SKY-HI」(4th EP『Epilogue』収録)でAile The Shotaは、J-POPのメインストリームのど真ん中にまで駆け上がっていくことを宣言したが、今作『omen』には、その道のりに仲間を連れていく決意と、自分を奮い立たせる力強さが込められている。イベント『PANDORA』とEP『omen』を中心としたこのインタビューでは、Aile The Shotaがどんな場所から誕生したアーティストで、どんなふうにシーンをつなげようとしているのかが伝わると思う。今、シーンの地図が変わりそうなうねりが、確実に起き始めている。

―4th EP『Epilogue』でひとつの章を終えて、来年3月の東京ガーデンシアター単独公演まで階段を上っていこうとしている途中だと思います。1stアルバムのリリースが発表されていたので、EP『omen』ついて聞いた時には「EPを出すんだ」という驚きがあったんですけど、聴けばこれは今出すことが必然な1枚だと思って。Shotaさんの中で『omen』は、どういった位置付けですか。

ここで出そうと思った理由はいくつかあって。オーガナイズイベント(『PANDORA organized by Aile The Shota』)のコンセプトや出演者が決まっていく中で、「だったらこの日のために曲を作りたいよな」と思ったんですよね。次に出すアルバムは、「J-POPSTAR」と言ってからの1stなので、当初は「そんなにアングラに振り切ったことはできないかも」と思ってて、説得力をつけるためにも俺が通ってきたカルチャー寄りのものを別軸で作らなきゃな、という想いが後押ししたところもありました。もう1個思ったのは、ライブでVLOT(「J-POPSTAR」をサウンドプロデュース)の曲と、Yohji Igarashiの曲(「PANDORA」をサウンドプロデュース)がもっとほしいということで。ああいうテンションの曲が、本当はいちばんやりたいやつだと思ったんです。そうやって自分の中でいくつか理由ができて、タイミングも重なって、「だったら急いでEPを作りたいです」ってなって(笑)。テーマとかビジュアルの感じも今までとは異質な感じじゃないですか。アー写も「ストリートに帰る」という意味で、私服で街で撮ったんです。映画でいうアナザーストーリー的なものになって、結果的によかったなと思います。正直、今まででいちばん好きなEPかもしれない。

―前回Rolling Stone Japanで取材したのが11月中旬で、その時はまだ『omen』のことも『PANDORA』のことも発表されていなかったんだけど、Maddy Soma、Bleecker Chrome、vividboooyとかの名前をインタビューの中で出してくれていたんですよね。Shotaさん、時々そうやってさりげなく「次回予告」を放り込んできますよね(笑)。

漫画みたいな展開が大好きだから(笑)。そうだ、やったわ。あの時、俺、名前出しとこうと思ったんです。その頃は、俺の中で絶対に一緒にやりたいと思ってて、ギリ声かけてるかかけてないかくらいだったのかな。実際に客演してくれたことが嬉しいし、ヒップホップに出会った当初の自分の夢が叶った感じがありますね。本当の原点回帰――それこそオーディション『THE FIRST』に参加する以前のところ――を、イベント『PANDORA』とEP『omen』でわかりやすく提示できたかなと思います。

―原点を示すことがなぜ今のAile The Shotaにとって大事だったのか、一言でいえば、さっき言ってくれた「説得力をつける」ということだと思うんですけど、その想いをもう少し深く聞かせてもらってもいいですか。

Aile The Shotaの唯一無二性はルーツにあると思っていて。J-POPがルーツにあることはメロディラインを聴いてもらえばわかると思うんですけど、もう1個音の中で説明するとなったら、Maddy Somaとかがいるシーンから出てきたということを聴かせることが必要だと思ってました。Aile The Shotaが何をJ-POPSTARと言っているのか、どういう状態でJ-POPSTARになりたいのかの大事な要素のひとつが「こういうシーン出身である」ということで、僕が見ているビジョンの共有をしたかったですね。

―ここからさらにメインストリームに駆け上がっていくためにも、自分の唯一無二のアイデンティティと、どういうシーンに軸足を置いたアーティストであるかを明確に示したかったということですよね。

だからこのEPは、Aile The Shotaの序章(1st EP『AIINOCENCE』から4th EP『Epilogue』まで)の前の「エピソード0」な感覚もあります。これをJ-POPのアルバムを出す前に置いておくことに意味があると思ってました。

―「Aile The Shotaにとって自分自身の表明」であると同時に、『PANDORA』でも感じたことは、Aile The Shotaのスタンスや大勢の前に立ってライブをする姿がアンダーグラウンドの人たちに与えている影響も大きいということで。

よかったです。それをまっすぐに受け取ってくれる先輩や仲間でよかったなって思いますね。僕の中で、カルチャーを大事にしてる人のセンスはいいという前提があるから、そういった目がいい人たちから見て、僕がいるメジャーシーンはどうなんだろうなって……自分はどっちの側面も持ってるからわかるんですよ。大衆的になることってリスクもいっぱいあるし、失ってしまうものもある中で、J-POPSTARになろうとしている僕が呼ぶということは、そっちサイドへの招待でもあるじゃないですか。そういう中で演者としてあのライブをどう受け取ってくれるのだろうと思っていたんですけど、みんなめっちゃ楽しんでくれていたので嬉しかったです。これからまたちょっと違う位置で交わり続けられる気もしました。

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