BTS、全米進出の舞台裏:2017年LA滞在記

Chris Martins | 2018/09/08 09:30

| 2017年11月にLAを訪れたBTS(Photograph = Brian Guido) |


写真撮影が終わると、次はAMAでのパフォーマンスのリハーサルだ。「DNA」のオープニングの口笛から彼らの意識は一つになり、手足は見ているこちらが興奮するほど正確にシンクロする。普段は大人しく見えるJINですら、激しい手の動きをきっちり合わせている。JUNG KOOKがバレエ風のターンをした後にJIMINがJUNG KOOKのお尻を掴んで少しふざけてみるも、今この瞬間の彼らは全員100%集中している。1時間後の午前10時40分、彼らは水を一気飲みし、メンバーの顔が大きくプリントされたうちわを持った女性スタッフにあおいでもらってクールダウンする。JINがイスの上で一瞬ウトウトするが、すぐにマッサージ師に起こされる。マッサージ師が彼の肩にヒジを入れてマッサージし始めると、JINは顔をしかめる。数分後、Vが痛みで悲痛な声を上げる。トレーナーが彼の頬の内側の口内炎を治療したのだ。後で見たら、RMが血の付いたティッシュを鼻につめて踊っていた。この鼻血は時差ボケと頑張りすぎの産物だ。午前中のスケジュールを終えた後に口にした早めの昼食が、冷めたハンバーガーとフライドポテトとは寂しいものだが、彼らは大して気にすることなく食べている。


Photo by Brian Guido

BTSはBeyond The Sceneの頭文字だが、これはRMが考え出し、最終的にメンバーの投票で決めたという。このグループは音楽事務所、Big Hitエンターテインメントに所属している。Big Hitは作曲家のパン・シヒョクによって運営されているのだが、もともと彼は韓国の3大事務所の一つ、JYPエンターテインメントの共同創立者だった。しかし、JYPから独立したことでBig Hitには「小規模な事務所」というイメージが付きまとっている。BTSも寮での共同生活をしながらトレーニングを続けるというK-POP独自の厳しいシステムを経て誕生しているのだが、RMによるとBig Hitはアーティスティック面での自由度がかなり高いという。例えば、K-POPファンへのユニークなサービスとしてBTSはアルバムにまつわるストーリーを作っている。2016年の2枚目のアルバム『Wings』はヘルマン・ヘッセの教養小説『デミアン』がテーマになっていて、このコンセプトが歌詞、アート、ビデオに反映されている。これらのサブプロットがどのような形で具体化されるかは不明だが、村上春樹やアルベール・カミュなどの思慮に富んだ作家の作品を好んで読むRMなら実現可能だろう。


Photo by Brian Guido

「自分たちらしい、BTS的コンテクストを作ろうとしています」とRMが言う。「もしかしたら昔の小説からインスピレーションを得るのはリスキーかもしれないけど、(『Wings』では)それが報われたと思います。ファンに向けたギフトボックスとして成功するのです。これはアメリカのアーティストがあまり行わないことですよね」と言って、彼は『スター・ウォーズ』になぞらえた。「自分たちの宇宙を作る最大の利点は拡張性にあります」と、メンバーの中で最も静かに周囲を観察しているSUGAが通訳を通して付け加える。「自分たちの日常や興味から生まれるから好きなだけ広げられるし、自分たちにとっても馴染みのある題材です。だからこそ、僕たちが伝えるストーリーにも、僕たちが作る音楽にも多様性が生まれるのです」

彼らに「韓国の政治についても自由に歌詞を書けるのか?」と尋ねてみた。微かにそういう傾向を持った曲を書いているとRMが言うが、横でSUGAがこの題材は「危険をはらんでいる」と注意を促す。「文字通りの意味ではないのですが、感受性が十分に成熟していない若い人たちに誤解されるリスクがあります」。彼は「衝突を駆り立てる」よりも「理解を促す」ことに意識を向けたいという。このインタビュー中、他のメンバーはARMYへの感謝と、さまざまな世代にアピールするチャンスを求めている以外は一言も喋らなかった。J-HOPEの「僕たちは誰と一緒に仕事をしても光栄だと思うんです」という一言が彼らの本心を言い表している。


Photo by Brian Guido

このバンドのミッションは記録を破ることではなくて、個性を売り出すことだとRMが言う。これは本国ではあまり推奨されない。「特に韓国では常に人としての基準があります。結婚するとか、良い大学に行くとか」。彼に自分たちのメッセージをどうやって伝えるつもりなのかと聞いてみた。RMは笑顔でこう答えた。「いい音楽と病み付きになるパフォーマンスを通してです」

Translated by Miki Nakayama

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