CDレヴュー|『シュミルコ』:ウィルコがひたるのんびりムード

ウィルコ | ワーナー / シュミルコ
By WILL HERMES 2017/月号 P95〜95 |
Illustration by Jonny Ruzzo
ジェフ・トゥイーディとその仲間たちが、この10年で最ものどかなアルバムを発表

ウィルコ、通算10枚目のアルバム『シュミルコ』は『ノーマル・アメリカン・キッズ』で幕を開ける。ジェフ・トゥイーディはこの曲にのせ、これまでで最も単刀直入な歌詞を披露。コーヒーハウスでかき鳴らされるようなアコギと、抑えられたエレキの旋律が渦巻いていて、まるで古い映画を観ている気持ちにさせられる。『ノーマル・アメリカン・キッズ』でトゥイーディが振り返るのは、いつも不満を抱えていた10代のヤク中だった頃だ。"庭の小屋の裏"や"ベッドシーツの下"でラリっていた彼は、"普通"の子供を嫌悪していた。しかし同時に彼らを恐れ、たぶんひそかにうらやんでいたのだろう。

あらゆる世代のはみだし者はうまく折り合いをつけるべきだ。そんな感情が、一見のどかなウィルコのアルバムに痕跡を残している。本作は2007年の『スカイ・ブルー・スカイ』以来、最もフォークロック的な内省を含んだ作品となった。2015年にリリースされた『スター・ウォーズ』に続くものとしては良いやり方といえる。"ノー・ウェイヴ"的なグラムロックがあふれていた前作は、ワクワクさせるほどノイジー、かつエネルギーに満ちていた。

ハリー・ニルソンのエキセントリックなポップアルバム『ニルソン・シュミルソン』を思わせるタイトルの本作。トゥイーディはそれほど自意識過剰ではなく、のんびりした感じだ。彼の息子であるスペンサーもドラムを務めており、駄洒落としか思えないようなタイトルの曲も散見される。例えば『シュラッグ・アンド・デストロイ』は、ザ・ストゥージズの名曲『サーチ・アンド・デストロイ』をもじったもの(音楽的には『ホワイト・アルバム』を思わせるが)。『ウィ・アーント・ザ・ワールド(セーフティ・ガール)』は、スーパースターが集まった1985年のチャリティシングル『ウィ・アー・ザ・ワールド』を想起させるが、実際の歌詞では精力旺盛な選挙立候補者をしげしげと見ていたり、恋人への感謝を示す一方でハルマゲドンの妄想が語られたりする。『イフ・アイ・エヴァー・ワズ・ア・チャイルド』ではしとやかなギターがゆらめき、『クライ・オール・デイ』はブラシを使用したドラムが貨物列車のリズムを刻む。これらはともに、涙に濡れながらも毅然として過去を振り返った作品だ。

ウィルコは保守的であろうとする衝動を覆すのに一生懸命だ。例えば、『ロケーター』。跳ねるようなベースと調子外れなギターが印象的なこの曲は、ピクシーズ『ディベイサー』のより落ち着いた続編のようだ。あるいはまた、『コモン・センス』もいい例かもしれない。メロディ的にもリズム的にもはっきりとしない『コモン・センス』は、中流アメリカ人の美徳についての楽曲で、ギターはマリンバ風に演奏され、まるで静かな夏の夜に響くセミの声のようだ。トゥイーディは抑揚をつけずに歌う。"俺が退屈な時"、求めているのは"燃える草むらか押すべきボタン"。解決法はもちろん、歌を作ることだ。彼自身の問題であっても、自作の歌で解決し得るかもしれない。


シュミルコ
ウィルコ ワーナー 発売中
http://wmg.jp/artist/wilco/

Translation by Shinjiro Fujita(RSJ)

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