キース・リチャーズ23年ぶりのソロアルバムを語る:「時は飛ぶようにすぎる」

By Patrick Doyle
『クロスアイド・ハート』は、1992年の『メイン・オフェンダー~主犯~』以来のソロアルバムだ。 Photo: (C Flanigan/Getty)
ニューヨークの内輪の試聴会でギターアイコン、キース・リチャーズが『クロスアイド・ハート』を初披露

キース・リチャーズはニューヨークのエレクトリック・レディ・スタジオのブースを覗き込みながら人差し指を上に向け、「音量を上げてくれ!」と言った。

粋なデルタ・ブルース、『クロスアイド・ハート』がスピーカーから鳴り響く。リチャーズがフィンガー・ピッキングで奏でるアコースティック・ギターの音色と聞き慣れた低い声が部屋を満たす。2人の女性を同時に愛してしまったという歌だ(歌詞の冒頭:「I love my sugar, but I love my honey too(シュガーを愛しているが、ハニーも大好きだ)」)。

リチャーズは蛇革のジャケットを羽織り、今にもスタジアムのステージに立ちそうないでたちで『クロスアイド・ハート』(2015年9月18日リリース)の試聴セッションを開いている。1992年の『メイン・オフェンダー~主犯~』以来のソロアルバムで、彼のバンド、エクスペンシヴ・ワイノーズと共にレコーディングを行った。今回の『クロスアイド・ハート』は前作に増してよりリチャーズに近いアルバムだ。楽器はほとんど彼自身が演奏し、リチャーズの音楽的魅力が詰まっている。不運な境遇のロックンロール(『トラブル』、『サムシング・フォー・ナッシング』)や管楽器にどっぷり浸ったメンフィス・ソウル(『ラヴァーズ・プリー』)、営業時間後のバーを歌った素晴らしいバラード(『ジャスト・ア・ギフト』)。「ストーンズではできないような曲もある。(ソロは)俺のもう一つの発信方法だ。前回のアルバムから20年以上経つなんて信じられない。時が経つのは速いよ!」

アルバムのハイライトのひとつに失恋をソウルフルに歌い上げたノラ・ジョーンズとのデュエット『イリュージョン』がある。「ノラは俺たちがまさに必要としていた感性をくれた。俺はいつも女性ヴォーカルが参加できる曲を探してる」とリチャーズ。
ストーンズの『ア・ビガー・バン・ツアー』後の長い休養期間があった2011年頃、このアルバムの制作が始まった。暇だったリチャーズは、旧友であり共同制作者のドラマー、スティーヴ・ジョーダン(「最高の時間だった」とジョーダン)に声をかけ、ニューヨークのスタジオを予約した。それ以降2人は3年かけて時々会い、リチャーズは自分でギターやピアノ、ベースを弾き音を重ねていった。その後、元エクスペンシヴ・ワイノーズのギタリスト、ワディ・ワクテルやキーボードのアイヴァン・ネヴィル、ストーンズで一緒にツアーに出たことのあるバーナード・ファウラーやブロンディ・チャプリンといった「名手」が合流し、曲に磨きがかけられた。ワクテルは、「また一緒に演奏できて楽しかった。パーティーみたいだったよ」と語った。

モーガン・ネヴィル監督のドキュメンタリー『アンダー・ザ・インフルエンス』が2015年9月18日にネットフリックスで公開された。本作でリチャーズは自分自身への影響について語り、ナッシュビルのライマン公会堂などへの巡礼に出かけ、シカゴのバディ・ガイを訪ねて彼のナイトクラブに足を運んだ。「私はキースを理解するには音楽に目を向けなければならない、という前提でこのプロジェクトを始めた。喧噪に満ちた人生で音楽だけは常に真実であり続けた」とネヴィル監督は語る。

2015年7月にストーンズの北米ツアー『ジップコード・ツアー』が終わった。2016年2月にはストーンズで南米を回る、とリチャーズ。その前にソロライブをする可能性があり、ワイノーズメンバーの何人かとツアーに出ることを検討しているそうだ。「突然長期でスケジュールが空いたから考えている。メンバーが集まってくれるなら、何回かはライブがしたいね」。
Translation by Yoko Nagasaka

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