キース・リチャーズとボズ・スキャッグス:まだまだ辞めないレジェンドたち

左:キース・リチャーズと右:ボズ・スキャッグス(Graham Denholm/WireImage/Getty Images, Tim Mosenfelder/Getty Images)

キャリア数十年、キース・リチャーズとボズ・スキャッグスがパワフルなソロアルバムをリリース

70年代のギターロックを聴きたい気分なら、70年代のロッカーの新作にたどりつく。
我々はどうやら、そんな奇妙で驚異的な時代を迎えたようだ。こんなことになるとは、知るよしもなかった。彼らがこんなに長くやり続けるなんて、思いも付かなかったからだ。でもキース・リチャーズはストーンズのライヴでセンターに立つと毎回こう言っている。「ここに立てるのは良い気分だ。というか、どこに立てるのも良い気分なんだが」

念のため、笑うポイントは、71歳のキース・リチャーズが「立てる」ことを自慢しているという点である。新しいソロアルバム、『クロスアイド・ハート』も、まさにそのような作品だ。そこには、けして崩れることのないサウンド、ヨレヨレなのにソリッドな音楽がある。ときに焦点を欠いているような曲もありつつ(それはつまり、ミック・ジャガーを欠いているということなのだが)、怒りや喜びもふんだんに表現されている。『ブルーズ・イン、ザ・モーニング』では、リチャーズがチャック・ベリー風に決めているし、『アムネイジア』で明かす自身のサバイバルについてのジョークは毒ガス級の面白さだ。

リチャーズが1988年の最初のソロアルバム制作の際にプロデューサー兼ドラマーのスティーブ・ジョーダンと組むようになった頃、彼らはまるで、大好きなブルースやR&Bの伝統を受け継いでいく方法を模索する近代主義者のように見えた。それから27年、いまの彼らはほとんど歴史保全主義者だ。そのジョーダンはボズ・スキャッグスの新作『ア・フール・トゥ・ケア』でも、まさに同じ役割を果たし、豊かな成果と大きな驚きを生み出している。普通に素晴らしいカヴァー曲集でありながら(この国の現状を歌う辛辣で傑作なオリジナル曲『ヘル・トゥ・ペイ』も含まれている)、ニューオーリンズの不滅のグルーヴ感にインスパイアされて、たとえばヒューイ「ザ・ピアノ」ルイスの「ハイ・ブラッド・プレッシャー」といった50年代の古典の持つゆったりとした暖かさをしっかり捉える音の魔術を駆使している。

リチャーズ同様、スキャッグスも71歳で、2人とももはや、成し遂げるべき目標があるというよりは、音楽への愛情だけで仕事をしているように見える。同様に、もはや目標などないであろう79歳のバディ・ガイの近作2作は玉石混淆だ。バーバンド風のホーンや、ピンとこないデュエットが多すぎる(2013年の『リズム&ブルース』では、キッド・ロックとキース・アーバン、新作の『ボーン・トゥ・プレイ・ギター』ではジョス・ストーンを迎えている)。それでも、「シック・ライク・ミシシッピ・マッド」といった形式的なブルースナンバーで、彼がノイズをまき散らし始めると、楽曲はいきなり生命力を取り戻し、50年前にジミ・ヘンドリックスが開拓した「抑制と奔放」の領域へといざなわれる。

そのヘンドリックスはかつて、誰のためでもなく自分のために演奏して世界を驚かせた。もし彼が中年になるまで生きていて、聴衆をつなぎ止めるプレッシャーと戦ったとしたら、どんな音楽を生み出したのかは、今となっては知る術もない。新しい2枚組CD『フリーダム:アトランタ・ポップ・フェスティバル』は、メロディとリズムの革新を探求する彼の底なしの能力を示す、長くてとりとめのない講義のような作品だ。そしてこれが、ヘンドリックスが70歳になった時の音楽に最も近いはずである。このアルバムは1970年7月4日、彼の死の2か月前に録音された。

Translation by Kuniaki Takahashi

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