テイラー・スウィフトの若さゆえに、人々は「まあ、年齢のわりにはすごく良いよね」などと決めつけてしまいがちだ。けれどもきかせてほしい。テイラー・スウィフトよりも年上で、彼女よりも素晴らしいポップ・レコードを作れる人たちがどこにいるだろう? ほんの4年足らずの間に、ナッシュヴィルの20歳の爆弾娘は、ポップやロック、カントリー界の誰よりも優れた30数曲を、自分のものにしてきたのである。
 スウィフトのサード・アルバムとなる『スピーク・ナウ』は大雑把に言って、2006年のデビュー作の2倍素晴らしかった『フィアレス』(08年)よりも、さらに2倍素晴らしい。ここに収められた14曲は、男の子に夢中なすべての小さな町の女の子たちの夢と希望を綴ったもので、スウィフトはそれを、すべて自分ひとりで書き上げたのだ。スウィフトはヒットの仕組みのすべてを知るナッシュヴィルの優秀なプロデューサーになれるだけでなく、アチャファラヤ川ぐらい感傷的な性質を持った、最高にロマンティックな女の子でもある。だからこそ彼女は自分自身の恋の葛藤を、素晴らしいポップ・ソングスに変えることができるのだ。この点において、彼女はアイラインを多めに引いた、新しいモリッシーのようである。
 その歌声は彼女がシンガーとして成長したことを悟らせないほどに無垢だが、スウィフトは『スピーク・ナウ』で大人の階段を上っている。彼女はカントリー・スターのほとんどが得意としているバツイチ女性の層を狙っていて、自分のラヴストーリーに少しだけ大人びた表現をしのばせているのだ。それはカントリー・ラジオのお決まりではあるが、T・スウィージーが「わたしのものをしまう引き出しが、あなたの部屋にあるの」といった歌詞を歌うのは、やはり違和感がある。「ディア・ジョン」や「ザ・ストーリー・オブ・アス」、「エンチャンテッド」のように、そのタイトルだけで彼女がどんな少女向け映画を観てきたかわかる曲もあるのだから。
『スピーク・ナウ』で彼女がやりあう男の子に関して言えば、よくあるいつものタイプである。「あなたは謝るのが上手で/言葉尻を濁し続ける/あなたのテストを演じるわたしには/決して心動かされないの」。この手の男には慣れてしまったよ、テイラー。君はこれからもこういう男と出会うだろう。彼らに対する彼女からのアドヴァイス?「ただその瞳を私から離さないで」と、「スパークス・フライ」で彼女は歌う。けれども我々はもう、彼が次の曲ではとっくに忘れられた存在になっているとわかるのだ。
『スピーク・ナウ』は、デフ・レパードの「ヒステリア」のギター・リフに、ロネッツやシュレルズといったガール・グループの恍惚を足したバカバカしいまでのプロム賛歌「ロング・リヴ」でピークに達する。スウィフトはキングとクイーンに選ばれることがどんなに素晴らしいかを力強く歌うが、それはいかにも高校時代をツアー・バスで過ごしたアーティストが書きそうなプロム・ソングだ。けれども彼女がそう歌う時、あなたはすべての言葉を信じずにはいられないだろう。

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