リヴァース・クオモは彼のファン、レコード・レーベル、そして成功そのものと闘ってきた。しかし、ウィーザーの8枚目のアルバムのタイトルは、絶賛か批判のどちらかしかない、オタクっぽい彼らの聴衆への和解の印だ。『ロスト』の登場人物から名前を取ったウィーザーのアルバムは、『スカーフェイス』の頃のアル・パチ―ノの写真をアルバムのカヴァーに使って、それを『トニー』と名付けたリック・ロスのようである。
 これはまたウィーザーがインディー・レーベルから発表した最初のアルバムでもあり、「ゲフィン・レコーズから開放されれば、リヴァースはもう少しマシになるはずだ」という定説を立証するチャンスを、クオモ学者たちに与えることになった。  完全に反対の面から言えば『ハーリー』は彼らのもっとも“企業的”なレコード。クオモはA級のソング・ドクターたち(リンダ・ペリー、トニー・カナル、デズモンド・チャイルド)と共作し、『ジャッカス』のクルーとマイケル・セラを、面白半分にカメオ出演させている。その結果、少々の野暮ったいポップ・メタル・チューンに少々の皮肉と精神障害を加えたウィーザーのレコードだ。  もちろん、軽い認知症なしには、ウィーザーはありえない。「ホエア・イズ・マイ・セックス?」は、“ソックス”の代わりに“セックス”という言葉が歌われた、『ピンカートン』風の曲である──つまり、「セックスなしには外へ行けない/外は寒いし、僕のつま先が濡れてしまう」といった具合に。ハーレーもきっとこう言うだろう。 「ウー、お前、大丈夫か?」

RECOMMENDEDおすすめの記事


MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE