フォンテインズD.C.が赤裸々に語る、型破りな進化を遂げたバンドの自信と葛藤

Photo by Theo Cottle

 
フォンテインズD.C.(Fontaines D.C.)は最高傑作というべき4枚目のアルバム『Romance』で、古い殻を脱ぎ捨ててより幻想的な世界へと突入した。Rolling Stone Japanによる最新インタビューに続いて、UKで取材したグリアン・チャッテンの声をお届けする。


グラストンベリー・フェスティバル2024の初日の夜、The Park StageではフォンテインズD.C.がヘッドライナーとして歴史に残るステージに上がろうとしていた。敷地内に高くそびえ立ちステージを望むリボン・タワーまで続く人々の波からは、ワージー・ファームでの素晴らしい一日を求めて集まった人々の期待感が一目で見て取れる。盛り上がるステージを2曲の新曲で締めくくった彼らは、活気に満ちた新たな時代を切り開き、世代を代表するバンドの地位を確固たるものとしたように思える。



ところがイベント初日のステージの盛り上がりに反して、ほとんど記憶に残っていないと証言する者がいる。当事者であるバンドの、謎に包まれたフロントマンであるグリアン・チャッテンだ。「アドレナリンが出まくっていて、ほとんど覚えていないんだ」とダブリン出身のシンガーは、北ロンドンの自宅に近い森の中を歩きながら、つい数日前のステージを振り返った。当初、インタビューは彼の自宅で行う予定だった。しかしグラストンベリー・フェスの出演直後で、かつニューアルバムのインタビューも続いていたことから、彼自身がより落ち着ける自然の中で話すことにした。

「緊張しなかったと言えば嘘になるだろう。でも、俺があんな風になるのは滅多にないことだ」とチャッテンは言う。

「エネルギーが溢れ出して興奮しまくりで、いい気分だった。イベント全体の雰囲気にのまれて、ちょっと押さえきれなかったな。俺たちのキャリアの中でも最高のステージだったと思うけど、俺自身はほとんど記憶がないんだ」。


グラストンベリーに出演したグリアン・チャッテン(Photo by Aaron Parsons for Rolling Stone UK)

今後は、ステージ上のチャッテンからのさらなる攻撃に備えておくべきだろう。2024年秋にはアリーナ・ツアーが始まり、翌夏はフィンズベリー・パークで5万人を前にバンド史上最大規模のパフォーマンスが予定されている。

フィンズベリー・パーク公演は、8月にリリースしたばかりで図らずもバンド史上最高の傑作となった4枚目のアルバム『Romance』ツアーのウィニングランとして、バンドの歴史に刻まれることだろう。

この投稿をInstagramで見る

Fontaines D.C.(@fontainesband)がシェアした投稿


2019年のデビュー・アルバムでダブリン・ライフを描き、ロンドン移住後の2022年の3rdアルバム『Skinty Fia』では故郷を捨てる後ろめたさを感じていたフォンテインズD.C.は、各方面から本格的なアイリッシュ・バンドという評価を受けていた。

しかしバンドは、4枚目のスタジオ・アルバム『Romance』で、最もハードにリセットしたかったようだ。トリップ・ホップをベースにした鮮烈なリード・シングル「Starburster」のミュージック・ビデオには、「もしもKornとクラクソンズが融合したらどうなるか」という、そう古くない疑問に対する彼らなりの答えが込められている。ムーディーなモノクロームのTシャツを完全に捨て去り、オーバーサイズのスポーツウェアにピンクのキャンディフロス・ヘアとラップアラウンド・サングラスというスタイルを採り入れる。



「俺たちがレコードで表現しようとしていることを、型にはめて欲しくないんだ」とチャッテンは説明する。「『Boys in the Better Land』(初期の人気曲)をリピートして聴くリスナーは、それがアルバムの方向性だと決めつけがちだが、俺たちはそんな固定概念を避けたかった。部分的な一面からしか評価できない人々が、間違いなく俺たちを型にはめようとしている」。

ニュー・アルバムを一度聴くだけで、彼らが着実に変化を遂げたことがわかる。タイトル曲にはキューブリック的な暗さが漂い、「Starburster」は歌い終わりのチャッテンの苦しそうな息づかいが印象的だ。チャッテンがプロデューサーのジェームズ・フォードの家へ向かう途中で経験したパニック発作がヒントになったという。作品そのものがプレッシャーとなりパニックに陥った、とチャッテンは証言する。

Translated by Smokva Tokyo

Tag:

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE