TURNSTILE単独公演ルポ 「最高にハッピーな暴動」が生まれた理由

TURNSTILE(Photo by Yuki Kuroyanagi)

フジロック・フェスティバルの出演に続き、7月30日に東京・ZEPP DiverCityで単独公演を行なった新世代ハードコア・バンド、TURNSTILE(ターンスタイル)。編集者/音楽ライター・矢島大地による本誌独自ルポをお届けする。

【ライブ写真ギャラリー】TURNSTILE、東京・ZEPP DiverCity公演(全7点)

TURNSTILEの音楽が描き出すピットには、マナーはあってもルールがない。そりゃブレイクダウンではハードコアモッシュが生まれるし8ビートでは2ステップを踏むキッズもいるが、そういった伝統的・模範的な作法自体が音楽の背骨になっているのかと言ったらそうではなく、ハードコアカルチャーとしてのステップ、オーソドックスでシンプルなリフの爆発力を楽曲のエントランスにしながら、その中にダンスミュージックとしてのアイデアを挿入しまくっていく点がTURNSTILEの特異性である。

逆に言えば、旧くから受け継がれてきたハードコアの伝統的なモッシュを「伝統」としてではなく人間の命の発露としてのダンスと解釈することによって、ラテンやR&B、サイケもトライバルなビートをオーセンティックなハードコアに接着することができているのだろう。

ハードコアのセオリー以上に、カウベルやハンドクラップ、808の愛嬌あるビートをガイドにしてモッシュパートとダンスセクションを行き来するバランス感覚が前に出た楽曲の数々は、そういった発想に根ざしているものだと思う。そしてそういったミクスチャー性を完全解放してハードコアを拡張し、百花繚乱なリズムが生むポップネスによって世界的な評価を高めた『GLOW ON』は言うまでもなく、(おそらく)その実験段階のチュートリアルとして発表した『Share A View』でダンスフロアに接近したのも、ハードコアのままハードコアのリズムを互換していこうとする、すなわちハードコアをより人を選ばない音楽へと拡張していくための探究心によるものだったのだろう。





実際、ピットは100人100色の暴発具合。ハードコアモッシュが乱発するサークルの真ん中で「恋愛レボリューション21」を彷彿とするダンスをくり広げるツワモノもいたし、リフトの上で全楽曲を歌いながらブレンダンに求愛のようなジェスチャーを繰り返している人もいたし、肘が当たった見知らぬ人となぜかシェイクハンズして共にステージに駆け上がっていく謎の連帯も多発していた。


Photo by Yuki Kuroyanagi

上記したダンスやカルチャーに一切括れない、名前のない動き、名前のない爆発だけがパンパンのピットを満たすという最高にハッピーな暴動だった。もっと言えば、一人ひとりが自由であり、その表明として鳴らされてきたあらゆるレベルミュージックの本質までもが体現されているとすら感じた。自由になるためのライブハウスで発される「自由になろう」という声すら右倣えの定型になってしまう場面はこれまでも多々目にしてきたが、あそこにあったのは、ただ音楽に従順になって根源的なダンスに身をまかせる人々の姿だけだった。それこそがTURNSTILEが世界的なハードコア・ヒーローである理由であり、この音楽の間口の広さの証明なのだ。そう、「自分の踊り方で踊ればいいんだよ」である。

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