Frikoが相思相愛の日本で語る「マイベスト」人生を変えた音楽と新作の展望

Photo by Masato Yokoyama

デビューアルバム『Where We've Been, Where We Go From Here』で一大センセーションを巻き起こしてから半年弱、早くもフリコ(Friko)がフジロックで初来日を果たした。新人としては破格の大抜擢と言えるGREEN STAGEでおこなったライブは、彼らが今持てる力を120%ぶつけてきたような、フレッシュなエナジーに満ちたものだった。まだ大会場慣れしていない初々しさも、今だからこそ観られるものだと思えば貴重。ライブの最後に発表された11月の単独ジャパンツアーでは、ライブハウスのキャパでまた違った表情を見せてくれることだろう。

以下のインタビューは、フジロック出演2日前に東京にておこなわれたもの。アルバムリリース時の取材でこれまでの歩みやアルバムについては訊き尽くしたので、今回はニコとベイリーの2人にいろんな「マイベスト」を訊く――ベストソングやベストライブなど――という企画インタビューだ。取材はリラックスしたムードながらも、彼らの音楽観や地元シカゴへの愛情、さらには現時点での新作の展望などが聞ける貴重なものとなった。

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フジロック出演後の会場にて撮影(Photo by Masato Yokoyama)
左からデイヴィッド・フラー(Ba)、ニコ・カペタン(Vo, Gt)、ベイリー・ミンゼンバーガー(Dr, Vo)、コーガン・ロブ(Gt)


人生でもっとも心を揺さぶられた曲

―フリコの音楽は、エモーショナルで、聴く人の心を強く揺さぶるようなものですよね。じゃあ、自分にとって、これまでの人生でもっともエモーショナルにさせられた、心を揺さぶられた曲を挙げるとしたら?

ニコ:父親がエリオット・スミスの『Figure 8』のCDを持ってたんだ。車でよくかけていてさ、特に「Everything Means Nothing to Me」はすごく好きな曲。8歳の頃だったかな、初めて聴いた時、どういうわけか分からないけど、心に刺さったんだ。エリオット・スミスは僕が最初に出会ったアーティストで、特別な存在だよ。

―今振り返ると、エリオット・スミスのどういうところに一番惹かれたんだと思いますか?

ニコ:彼のセンスかな。メロディが幼い頃の僕に刺さったんだ。5〜6歳の頃はよくビートルズを聴いていたんだけど、ビートルズとは違う表現をする彼の音楽が、どこか印象的だったんだと思う。それから、彼はいい曲を作ることを何よりも大事にしていたよね。曲自体がよくない限りは、悲しみやエモーションを感じられないから。



―ベイリーはどうですか?

ベイリー:私はずっとビッグ・シーフのファンで。バンドも好きだし、ソングライターとしてのエイドリアン・レンカーも好き。「Terminal Paradise」は特別な曲で、いつも心を打たれる。美しい翳りがあって、すばらしいサウンドスケープだよね。だから「Terminal Paradise」が私のチョイスかな。

ニコ:どのバージョンもいいよね。

ベイリー:そうそう、バンドのバージョンもね。この曲は、最初のアルバムを通しで聴いた時、もう好きになっちゃったんだ。あのムードに惹かれたのかな。エイドリアン・レンカーは美しいメロディを生み出す、並外れたギタリストだと思う。素直さと詩的な表現がうまく組み合わさった歌詞もすばらしいし。そういった要素がすごく刺さったっていうか。ビッグ・シーフの音楽を聴くと、悲しい曲じゃなくてもメランコリックな気持ちになってしまう。そういう感情を揺さぶられる音楽が好きなんだよね。


「Terminal Paradise」はエイドリアン・レンカーのソロ作『Abysskiss』(2018年)とビッグ・シーフ『U.F.O.F.』(2019年)に収録


Photo by Masato Yokoyama

一番好きなレディオヘッドのアルバム

―少し前にレディオヘッド「Weird Fishes/Arpeggi」のカバーをリリースしましたけど、あなたたちにとってレディオヘッドのベストアルバムというと?

ベイリー:(「Weird Fishes/Arpeggi」が収録されている)『In Rainbows』かな、やっぱり。

ニコ:やっぱりそうなるよね。僕は『In Rainbows』か『Kid A』かな。最近はよく『Hail to the Thief』も聴いてる。頭が上がらないよ、長いキャリアの間ずっといい曲を作り続けられるなんてさ。レディオヘッドは初期の頃、日本でかなり人気だったんだよね?

―そうそう、よく知ってますね。『In Rainbows』は、特にどこが好きなんでしょうか?

ベイリー:サウンドはもちろん、すばらしいソングライティング。ダンスっぽい要素もあるんだけど、エモーショナルで。非の打ちどころがないよ。どの曲も個性が立っているのに、アルバムとして成り立っているし。

ニコ:トム・ヨークの歌詞って風変わりなんだけど、普遍性があるというか。「All I Need」の歌詞もそう。

ベイリー:あれは最高。

ニコ:あれは僕らみんなの歌詞でもあるんだ。

―じゃあ、お気に入りの『In Rainbows』の中から、「Weird Fishes/ Arpeggi」をカバーすることにした理由を教えてください。

ニコ:弦楽器を入れようってアイディアが思い浮かんで、(シカゴのライブハウスの)Metroで演奏したんだ。やってみたらすごくうまくいって、「レコーディングしよう!」って話が進んでいって。特に理由があるわけでもなく、やってみたらいい感じだったから、流れに身を任せたって感じかな。

ベイリー:すごく自然な流れだったよね。きっかけはニコのアイディアだった。

ニコ:そう、ただやってみたかったんだ。大好きな曲の一つだし、思いついたからには「やろう!」って。その勢いでやったんだよね。




―乱暴な区分けではありますが、レディオヘッドの実験的な側面とソングライティングの側面、どちらにより惹かれていますか?

ニコ:もちろん、その二つのコンビネーションがすばらしいんだけど、僕はソングライターとしての側面だね。

ベイリー:私は実験的な側面かな。風変わりなトーンが心に引っかかってくる。そこにソングライティングの良さがあいまって魅力的な音楽になってると思う。だから、その実験的な部分に惹かれてるかな。

―最近僕が面白いなと思うのは、『The Bends』の影響を受けているアーティストが増えてきたなということなんです。でも『The Bends』って結構長い間、大声で「このアルバムが好き!」とは言いづらい作品でもあったじゃないですか。

ニコ:たしかに、僕も最近になってよく聴くようになった。昔はそれほど好きじゃなかったんだけど、今ではライブビデオも観るくらい好きだよ。とにかくエネルギーがすごいよね、当時はまだストレートなロックバンドって感じだったし。個人的に、ロックミュージックがさまざまな形で更新されていくのが好きなんだよね。『The Bends』もそう。95年にリリースされたんだっけ? 当時ってウォール・オブ・サウンドが主流で、それ以外のサウンドをやることって難しかったと思う。

ベイリー:初めて『The Bends』を聴いた時はあまりピンとこなくて。それからしばらく聴いてなかったから、もう一度聴き直してみようかな。今がきっといいタイミングだと思うから。

―うん、ぜひ聴いてみてください。

Translated by Ayako Takezawa, Natsumi Ueda

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