BREIMEN・高木祥太とヘアスタイリスト・木村一真が語る、ヘアメイクの奥にあるもの

「トライ」を積み重ねて
他者の「トライ」も許容する

ーさきほどの撮影もそうでしたけど、ヘアメイクの方がポージングや撮影場所までアイデアを出してくれることって珍しいと思うんです。一枚のアートを作るための道筋が見えている感覚があるのだろうなという気がして。

木村 最初はエゴでやりたいことだけを表現していたんですけど、自分が作っているものはそれじゃないんだと気づいて、1枚のフレームをどれだけこだわれるかという感覚でヘアとかメイクをいじるようになった瞬間がありました。撮影をやってるときにヘアが浮いてる感覚を感じちゃったり。

高木 ああなるほどね。失敗の経験もあるわけで。

木村 そう。

高木 結局、そうだよね。うまくいったときの経験より記憶に残るというか。

木村 そう。「もっともっと」と思ってたら、そういうことになってきた。

高木 キムは「最終的に『いいもの』を作りたい」があって、そこに自分の意思もあって、それをちゃんと伝えることもできる。意思があっても、それを提案できるかどうかが本当の違いというか。そこで行動できるかどうかに違いがある気がする。

木村 でもそれはね、言える空気を作ってくれているからで。どんどん人が混ざり合ってくると想像を超えるものになるけど、それができる場の空気作りをしてくれたから。こないだ別の撮影で「こういうのどうですか」って言ったけど、「いや、頭でっかく写っちゃうから」ってなって。一言で終わらせちゃうやつなのか、そういうときに探れるやつなのかで、変わってくるというか。今日はそこで一緒に作っていける空気感があったからこそ、俺は自由に伝えられた。その空気は自分でも作らなきゃいけないし、それを受けてくれる仲間がいないとできないなと思う。

高木 言うか言わないかは、こっちの問題もあるけど、場がどうなのかも確かにすごくあるよね。だから俺が意見を言いにくい現場はもうやってないかも。サポートでもセトリとか提案するし、そういうことができるところしか俺の場合はやってない。

ー「肯定」というのが今日のキーワードのひとつですね。

高木 「肯定」って、ニアリーイコール、チャレンジでもあると思う。自分的に「ん?」と思っても、一回受け入れて、とりあえずやれることならやってみる。

木村 「レッツトライ」。これは受け売りなんだけど。映画監督が「まず肯定することが大事」みたいなことを言ってて、そこから「肯定」とか「レッツトライ」というものに意識的になったんだよね。言われたの、「木村くんって人の意見を全く否定しないよね」って。「そうかも」と思って、そこから「肯定」というワードにとらわれてしまったんだけど。

高木 それがあってのキムだと思う。

木村 もう「肯定」って言いたくなくなってきた(笑)。

高木 だから「肯定」でも「否定」でもなく、「レッツトライ」なんだよ。「レッツトライ」した結果「違う」ってなることもあるし。

木村 ただ、「違う」ってなれない状況もあるよね。一発勝負のときとか。

高木 でもそこで、それまでに「レッツトライ」した経験がいきるんじゃない? そこまで「レッツトライ」してないとさ、一発勝負のときに本当に何もできないと思うんだよね。失敗の経験も含めて「レッツトライ」しているからこそ、そういうときに決められるんじゃない?

木村 「レッツトライ」してないのに、今まで以上の力が出るわけないもんね。

高木と木村が考える
「美」とは?

ー最後に、木村さんが思う美しい、かっこいいとは何か?というテーマで聞かせてもらえますか。

木村 真っ直ぐなものですかね。真っ直ぐなものが俺は美しいと思う。自分の信じたものをずっと真っ直ぐ好きで、揺るがないものを表現していることをこちら側が感じたときに「美しい」と思います。「こいつの中に嘘がない表現なんだ」って、相手が本当に思っていることがちゃんと見えたときに「美しい」と感じるかな。自分の名前が「一」に「真」だから、それに恥じないように、自分の生き方としてもそういうものに美学を感じます。だから「これでいく」って決めたら揺るがないし、それが「違う」って言われたら「わかった」ってすぐに作り直して、「これでどうだ」ってやる。作っているものに対して曲げずに表現したいですね。

高木 自分とスタイルが違ったり、自分はやりたくないと思うことだったりしても、それをめちゃくちゃ真っ直ぐやってる人ってかっこいいよね。たとえば自分はそんなに好きじゃない音楽をやってるバンドだったとしても、そこに淀みのない人たちだと「かっこいいな」と思う。結局どれくらい信じてやってるかって見えてくるじゃん。自分とは違うスタイルとか服装をめちゃくちゃ真っ直ぐにやってる人と対峙したときの方が、もしかしたら圧倒されるかも。もしかしたら、自分が一番感動できるのは、対極にいる人なのかもしれませんね。

ーそういった生き方自体が外見にも表れると感じますか?

木村 そこが多分、面白いところですよね。これはまだ科学で見つけられないものなんじゃないのかな。自分はロマン派なので、見えないものだったり、形のないものに対してものすごく興味があるんですけど。結局そういうものを意識してる人は外に出る。人間の目で可視化できてなくても、エネルギーとしては確実にそこに存在していると信じたい。ただそれが外見に出るのかということに対しては……外見には出ないのかも。

高木 でも、どうなんだろう? 外見というか、出てる人いるじゃん?

木村 いるねえ。

高木 マクロで見るか、ミクロで見るかみたいな。たとえばこの髭に出てるのかもしれないし。顔も、人生をどう重ねてきたか、どういう生き方をしたかで、全然違う表情になるっていう。だから、明確にあるところもあると思う。そんなにシンプルなことじゃないけど。

木村 まだまだいろんな人の美しいと思うものを勉強して、ずっと追い続けたいですね。


Photo by Goku Noguchi, Hair and Make-up by Kazuma Kimura, Styling by Riku Murata


『AVEANTIN』
BREIMEN
ソニー・ミュージックレーベルズ
4月3日(水)発売

BREIMEN MAJOR 1st ONEMAN TOUR「AVEANTING」
4月19日 (金) 東京 人見記念講堂
4月26日 (金) 札幌 sound lab mole
5月10日 (金) 仙台 Rensa
5月18日 (土) 大阪 なんばHatch
5月24日 (金) 金沢 AZ
5月31日 (金) 福岡 BEAT STATION
6月1日 (土) 広島 LIVE VANQUISH
6月7日 (金) 名古屋 ボトムライン

BREIMEN
常軌を逸した演奏とジャンルにとらわれないスタイルで注目を浴びる、5人組オルタナティブファンクバンド。バンドを軸としながらも各々が有名アーティストのサポートを行い、その確かな演奏技術と、セッションからなるジャンルに拘らない型破りのサウンドセンスで熱烈なファンを獲得している。岡野昭仁×井口理「MELODY(prod.by BREIMEN)」では高木祥太(Vo, Ba)が作詞・作曲、BREIMENメンバーが編曲・演奏に参加。2023年10月、アメリカ・ロサンゼルス州・エンゼルスタジアム前にてメジャー移籍を発表。

木村一真
ヘアスタイリスト。2020年に駒場東大にヘアアトリエ・捨迦刃庭をオープンしたのち、2022年に外苑前にヘアサロン・SKAVATIをオープン。アーティストのミュージックビデオやアーティスト写真、俳優の撮影仕事を中心に、ブランドルック、エディトリアル、広告など様々な媒体でヘアメイクを手がける。

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