ビリー・ジョエル来日公演を総括 16年待ち続けた日本のファンへの「堪らないプレゼント」

ロックンロールの連打でフィナーレ

「若死にするのは善人だけ」以降の構成は、本国のライブと同じで、曲目がほぼ固定されている。「リヴァー・オブ・ドリームス」では、途中でクリスタル・タリエフェロが飛び出してきてアイク&ティナ・ターナーの「リヴァー・ディープ・マウンテン・ハイ」を歌う演出を日本でもやってくれた。もちろんこれは昨年亡くなったティナへのトリビュートだ。

マイケル・デルジュディスの堂々たるリード・ボーカルに拍手が巻き起こった、プッチーニの「誰も寝てはならぬ」を挟んで、MVのアニメーションとも違う映像を使った「イタリアン・レストランで」へ。7分を超える組曲風のドラマティックな曲だが、だれる場面がまったくない。ここではカール・フィッシャーがトロンボーン、マーク・リヴェラがサックスという編成。アンサンブルの作り方がとにかく丁寧で、細部まで神経が行き届いている。

そして本編ラストは、誰もが待っていた「ピアノ・マン」。ビリーがハーモニカホルダーを取り出しただけで、察知した客席から声援が上がる。この曲での合唱を成立させようと歌詞を配布したファンもいたそう。これまでの来日公演に比べて遥かに厚めに歌声を聴くことができて、ビリーも満足したことだろう。


アンコールは「ハートにファイア」からド派手にスタート。スマホの画面を使って歌詞を捕捉していく映像の演出は実に見事で、言葉の壁を越えたコミュニケーションはかくあるべし、と思わず唸らされた。中毒性の高いコード進行を誇る人気曲「アップタウン・ガール」はライブで演奏するのが難しいタイプの曲だが、重厚なハーモニーが眼前に迫ってくる好演。この曲を愛してやまなかったシンガー・ソングライター、KANが観たら飛び上がって喜んだのでは……という想いも心に湧き上がった。


ラストは「ロックンロールが最高さ」「ビッグ・ショット」「ガラスのニューヨーク」のロックンロール3連打でビシッと終了。どうしてもバラード・シンガーというイメージで語られがちな人だが、やはり本質的にはピアノを弾くロッカーであり続けていることを強調するような構成にスッと胸がすいた。若い頃はピアノの上で暴れまわることもあったが、70代になる今もマイクスタンドぶん回しを見せてくれるいたずら心は不変だ。


Photo by Tomohiro Akutsu

2月1日に緊急リリースされることが明らかになった17年振りの新曲「Turn The Lights Back On」の初お披露目は残念ながらなかったが、つい先ほどパフォーマンス出演が告知された2月4日のグラミー授賞式で、この曲を披露してくれるのかも知れない。“来日はこれが最後かも”という触れ込みだったけれど、想像以上に現役感を保っていたし、前より少しスリムになってパフォーマーとしての艶が復活した感じすら受けた。“日本さよなら公演”的な終活感ではなく、まだまだ行けるのでは?という期待ばかりが高まった大充実の一夜。強くリクエストし続けたら、きっとまた来てくれるのでは、というのが今現在の正直な感想だし、会場でご覧になった皆さんも同じ想いだろう。

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ビリー・ジョエルのFacebookページより引用

〈セットリスト〉
1. My Life / マイ・ライフ(冒頭にベートーヴェン「交響曲第9番」を演奏)
2. Movin’ Out (Anthony’s Song) / ムーヴィン・アウト
3. The Entertainer / エンターテイナー
4. Honesty / オネスティ
5. Zanzibar / ザンジバル(冒頭に 「さくらさくら」 の一節)
6. An Innocent Man / イノセント・マン(冒頭にザ・ローリングストーンズ 「Start Me Up」をビリーがモノマネ歌唱)
7. The Longest Time / ロンゲスト・タイム(冒頭にトーケンズ「ライオンは寝ている」を歌唱)
8. Don’t Ask Me Why / ドント・アスク・ミー・ホワイ
9. Vienna / ウィーン
10. Keeping The Faith / キーピン・ザ・フェイス
11. Allentown / アレンタウン
12. New York State of Mind / ニューヨークの想い
13. The Stranger / ストレンジャー
14. Say Goodbye to Hollywood / さよならハリウッド
15. Sometimes a Fantasy / 真夜中のラブ・コール
16. Only the Good Die Young / 若死にするのは善人だけ
17. The River of Dreams / リヴァー・オブ・ドリームス(ブレイクにバンド・メンバーのクリスタル・ タリエフェロがアイク&ティナ・ターナーの「River Deep, Mountain High」 を歌唱)
18. Nessun dorma / 誰も寝てはならぬ(バンド・メンバーのマイク・デルジュディスが歌唱)
19. Scenes From an Italian Restaurant / イタリアン・レストランで
20. Piano Man / ピアノ・マン
(アンコール)
21. We Didn’t Start the Fire / ハートにファイア
22. Uptown Girl / アップタウン・ガール
23. It’s Still Rock and Roll to Me / ロックン・ロールが最高さ
24. Big Shot / ビッグ・ショット
25. You May Be Right / ガラスのニューヨーク(アウトロにレッド・ツェッペリン「Rock and Roll」を演奏)


■ビリー・ジョエル来日公演セトリプレイリスト
https://BillyJoelJP.lnk.to/Setlist2024RS


〈リリース情報〉


17年振りの新曲
「ターン・ザ・ライツ・バック・オン|Turn The Lights Back On」
2024年2月1日発売(デジタル配信/7インチVinyl、輸入盤のみ)
詳細:https://www.sonymusic.co.jp/artist/BillyJoel/info/559952





『ビリー・ザ・ベスト:ライヴ!|Live Through The Years -Japan Edition-』
発売中
■高品質Blu-spec CD2仕様
■2枚組全32曲収録(うち世界初CD化13曲、日本初CD化6曲)
■2023年最新マスタリング
■歌詞・対訳・解説付
収録内容詳細:https://www.sonymusic.co.jp/artist/BillyJoel/info/557731
購入・配信:https://SonyMusicJapan.lnk.to/BillyJoel_btb

『ピアノ・マン 50周年記念デラックス・エディション<SACDマルチ・ハイブリッド盤 7インチ紙ジャケット仕様>』
(3枚組:SACD+CD+DVD)【完全生産限定盤】
2024年2月28日発売
詳細:https://www.sonymusic.co.jp/artist/BillyJoel/info/559671


〈関連番組情報〉
ビリー・ジョエル 『ライヴ・アット・シェイ・スタジアム』
放送日時:1月28日(日)夜8時30分~
放送局:BS松竹東急(BS260ch)全国無料放送
https://www.shochiku-tokyu.co.jp/

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