「ウイルス、テロはすべて嘘」...米NFL選手が陰謀論を狂信する理由

エプスタイン
第一に、ジミー・キンメルが故エプスタインとつるんでいたという批判はマジでばかげているし、無責任だ。だがエプスタインについて知れば知るほど、脳みそも少々おかしくなる。読めば読むほどイカれてくる、ラヴクラフトの怪奇小説並みの悪夢だ。ご存じだろうか、エプスタインの右腕だったギレーヌ・マックスウェル被告が潜水艦の操縦士で、2014年に自ら運営する海洋保全組織を国連でアピールしていたことを? 水面下で何が起きていたのか、誰も知らなかったなどありえるだろうか? どのぐらい根深い事件なのか?

パット・マカフィー
遡ること数カ月前、ESPNは大量解雇に踏み切った――ニール・エヴェレット、ジェイレン・ローズ、ジェフ・ヴァン・ガンディ、スージー・コルベア、マーク・ジャクソンなどなど、長年勤めあげた信頼の厚い古株勢が大勢クビを切られた。なぜかというと、ESPNは利益を上げてはいたものの、明らかに後期資本主義ほど収益はあがっていなかった。そこでスポーツメディアを独占していた怪物を運営する親会社で、メディア界のヘッジファンドともいうべきディズニーから、「そろそろ心機一転するタイミングだな」と鶴の一声が飛んだ。

財布のひもを締めるESPNを一番わかりやすく体現しているのが『The Pat McAfee Show』だ。マカフィーはTV向きのジョー・ローガン[訳注:人気の格闘技解説者]といった男で、矢継ぎ早にまくしたて、ハイになったアスリートのようなエネルギーを放ち、スタジオを歩き回ってはアドリブで対応する。ゲストは全員ネット出演で、ターゲットとなる視聴者はスポーツニュースをTVでザッピングするお行儀のよい視聴者ではなく、YouTubeでコンテンツをあさるニッチ層だ。だらだらとした、憶測ばかりが飛び交ういいかげんなトーク中心の番組だ。プロデューサー陣や編集スタッフが揃った従来のスタジオ型番組と比べると、かなり安っぽい。

陳腐で、ニッチで、いささか軽薄。これぞまさにESNPの未来、ひどい話だ。だがマカフィーはひとつだけ大きな賭けに出た。週1ゲストとしてロジャースを雇い、ナンセンスなトークをさせたのだ。オンエアでロジャースが口にする突飛な話を筆者のようなメディア系の人間が記事にして、マカフィーのPodcastまがいの低予算帯番組に注目を集めるのがねらいだ。

ある意味、ロジャースの転落はESPNに非がある。放送局はロジャースに巨大な発言の場を与えて好き放題させ、ロジャースはまっさかさまにいくつもの沼に落ちていった。ESPNと午後の番組は注目を浴び、ESPNからほんの少しでもいいから金を絞り取ってやろうする連中が押し寄せた。その結果、ESPNは様々な商品やサービスを提供するディズニー傘下の中で無用の長物であることが証明されてしまった。

今週マカフィーは、ロジャースが今シーズンはもう出演しないと発表した。同じ親会社の下で働く大物タレントを小児性愛者と決めつけ、その後そんなつもりはなかったと弁解したのが理由だ。まさにその翌日、ロジャースは何事もなかったかのように『The Pat McAfee Show』に出演した。

関連記事:性犯罪者エプスタイン被告の自殺を招いた「重大な過失」とは? 米

from Rolling Stone US

Akiko Kato

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE