SIRUP×CODY JONが語り合うコラボの裏側、音楽とファンに誠実であること

Photo by Haruki Horikawa

 
SIRUPとコーディ・ジョン(CODY JON)の対談が実現。日本を代表するR&Bシンガーとオーストラリアの新星が、話題のコラボ曲「2MANYTIMES」の制作秘話やお互いへのシンパシーについて語り合った。

コーディ・ジョンは2023年を象徴するニューカマーの一人だ。90s〜Y2Kの影響を感じるニューノスタルジックな音楽性は、ここ日本でも早耳リスナーから熱い視線を集め、12月6日に開催された初来日公演も大盛況。シドニー出身のZ世代シンガーソングライターは、ベッドルームから世界へ飛び立とうとしている。

そんな新しい才能をいち早くキャッチしたSIRUPは、コーディを迎えた「2MANYTIMES」を11月末にリリース。豪・日のルーツを持つタカ・ペリー(Taka Perry)がサウンドプロデュースを手掛けたグルーヴィーなR&Bナンバーは、それぞれの持ち味が溶け合った理想的なコラボとなり、お互いのライブでも披露され、双方のファンから大いに歓迎された。

都内某所で実現した今回の対談では、SIRUPの活動をサポートし、コーディが日本で広まるきっかけを作った(詳しくは後述)ライター・竹田ダニエルがインタビュアー兼通訳を担当。コーディの世界観を尊重すべく、写真撮影のムードボード作成にも携わったSIRUP。日本での日々を「最高の思い出」と語り、SIRUPとファンに繰り返し感謝の気持ちを示すコーディ。共鳴し合うピュアな二人の対話をお届けする。


左からSIRUP、コーディ・ジョン(Photo by Haruki Horikawa)


ーまず、今日の撮影はどうでしたか?

コーディ:90年代っぽい雰囲気があって、すごく楽しかったです! 撮影でばっちりキメたかったんだけど、カセットプレイヤーの開け方が分からなくて、どうやって開けるんだ?っていうようなことはあったけど(笑)。

ーコーディの音楽は、オールドスクールのR&Bやレトロなテイストとすごく親和性があるよね!

コーディ:たしかに。僕のMVは「”コーディvs.昔のテクノロジー”って感じだよね」って、誰かに言われたことがある。「dirty dancing」のMVには、DVDショップにある古いテレビに吸い込まれるシーンがあったり、「STAGEFRIGHT」では、昔のPCや固定電話を使ったし、「Becky's Plan」でも昔の携帯電話を使ってますもんね。わざと選んでるわけでもなくて、なんとなく、その時代のテクノロジーが好きなんですよ。




ーそういったものとの出会いはいつだったんでしょうか? TVドラマなどからの影響ですか?

コーディ:父がフォトグラファーで、たくさんカメラを持っていました。だから、VHSも身近にあって、ビデオを撮ったりできたのはラッキーだったかも。12歳くらいの時、ずっと使われていない父の古いカメラを見つけて、そのカメラで友達とショートムービーを撮ったのがきっかけで、それからカメラにハマって、デジタルカメラを集めたりしてるんです。

SIRUP:コーディの世界観は俺も好きだし、90年代の世界観が今日本でも再ブームになっていることもあって、そういったイメージを想定しながらムードボードを作りました。

コーディ:「2MANYTIMES」のアートワークを見た時、拡大したりして隅々までチェックしました。僕らのイニシャルが入ってたり、ディテールがすごくクールで感動した! それに、アートワークが完成するまでの速さにもびっくりして。本当に感謝しています!

SIRUP:俺のチームのみんなも今回のイメージを気に入っていたし、いつもアーティストにリスペクトを持ちながら、スピーディーに制作をしてくれるんですよ。

コーディ:僕もそう感じた!




SIRUP:先ほどの話にもあったように、コーディのMVには古いテクノロジーがよく登場するよね。そのアイディアやムードはどこからやってくるのか気になります。

コーディ:映画とTVからインスピレーションを受けることが多いかな。MVの世界観を作り上げるために、かなりの量の映画を観てきました。「Becky's Plan」の曲を聴いた時、思い浮かんだのはウェス・アンダーソンの世界観。『ムーンライズ・キングダム』を観て、撮影のアイディアを膨らませていったりとか。それから、『ミーン・ガールズ』のスタイリング、ストーリーに出てくるBurn Bookのアイディアを参考にしたり、他にも『フォーチュン・クッキー』や『ダーティ・ダンシング』のライブとステージを行き来する演出からも影響を受けています。「STAGEFRIGHT」のステージの小さいオフィスのセットは、『マトリックス』が元になっていたり。僕にとって、MVの制作は、子供の頃に友達とショートムービーを作っていたあの時の気持ちを思い出させてくれるんです。実際のMV制作では予算もあるし、当時とは違って真剣にできるじゃないですか。「よし、チャンスだ!」ってね(笑)。「Becky's Plan」では、友達2人に声をかけた。1人は俳優で、「一緒にやってくれない?」ってお願いしたんです。ショートムービーを作ってる気持ちで制作しています。

ーほとんどの作品は、コーディが監督をしているということですか?

コーディ:ビデオグラファーと一緒に、共同で監督をやっています。僕がストーリーボードを作って、みんなでロケハンをして、撮影を進めていくという感じ。「STAGEFRIGHT」では編集と仕上げをやったり、制作のプロセス全体にすごく興味があるんです。そういえば、昨日のライブで、「Becky's Plan」のベッキーとデイジーの2人の格好をしてる人がいたんだ! そのMVのスタイリングは僕が担当したから、「僕がスタイリングしたキャラクターで来てくれてる!」って、超テンション上がりました。

SIRUP:日本では90年代のクリエイティブが今も根付いていて、若い世代もレトロなスタイルと親和性を持っていますよね。そのことがコーディの音楽に親しみを感じて、若いオーディエンスに受け入れられているんじゃないかと思いました。今は90年代やY2Kのカルチャーが流行っていて、そういう時代性にコーディの音楽の世界観がフィットしている。それに、曲もすごくキャッチーで素敵だし、コーディのキャラクターも本当に最高。すべての要素がマッチしていると、今日改めて思いました。

コーディ:このあたりに(渋谷周辺)大きいレコードストアがありますよね?

ータワレコのこと?

コーディ:そう! シドニーには、ああいう雰囲気のお店とか街並みは残ってなくて。90年代の建築や街並み、お店が今も残っているのってすごいよね。

SIRUP:コーディはタワレコの雰囲気が似合うよね(笑)。

コーディ:ちょうどタワーレコードで撮影したいと思ってたんだ!


Photo by Haruki Horikawa

SIRUP:コーディにぜひ聞きたかったのが、さっき撮影中のBGMに90年代のR&Bを流していたよね。俺にとっては大学生の頃にリアルタイムで聴いていた音楽だけど、どういう経緯でその時代の音楽と出会ったのかな?っていうこと。

コーディ:たしか昔、友達の家に行った時、彼女の親が家でアリーヤをかけていたんです。それまでアリーヤを知らなくて、初めて聴いた時はとにかく衝撃的だった。家に帰って彼女のことを調べて、それで聴き始めたのがきっかけになったと思う。似たようなサウンドの曲は聴いたことがあったけど、彼女ほどの音楽と出会ったのは初めてで。あとは、仕事場に40代の同僚がいて、彼女が作った2000年代のR&Bのプレイリストを送ってもらったり。彼女は、僕が知ってる中で90〜20年代のR&Bに最も詳しい人なんだ。今度、シドニーで開催される「RNB Fridays Live」っていうイベントにも一緒に行くんですよ! たしか、来年はTLCも参加するはず。その同僚は、いろんなアーティストや他のジャンルのこともよく知っていて、たくさんの魅力を教えてくれるんです。R&Bにハマっていったのは、彼女のおかげでもあります。

ー自分で音楽を作り始める前から、R&B自体には興味があったんですか?

コーディ:うん! R&Bはずっと好きだったけど、その頃は、どちらかというと今のR&Bを聴いていた。オールドスクールの音楽を聴き始めてから、今と昔のサウンドの違いに気づいたんだ。特にフルートの音が入っていたり、昔の豊かなR&Bサウンドにすごく惹かれていった。

SIRUP:なるほどね!

コーディ:僕はSIRUPの曲のプロダクションがすごく好きで、特に「2MANYTIMES」にも入っているホルンやサックスのミキシングは超最高だよ。それから、SIRUPのバンドのリハーサル動画(※12月に開催されたSIRUP主催・企画イベント「channel 03」に向けたもの、ファンクラブの有料会員にのみ公開された)もチェックしました。フルバンドでパフォーマンスをするなんて、まさに僕の夢だ! 楽器のサウンドを肌で感じることができるなんて…...オーディエンスにとってすごく貴重なライブ体験だったと思う。

SIRUP:俺自身も長年一緒に音楽やってるバンドメンバーも90年代のR&Bにルーツがあるので、その感覚を強く共有できています。このルーツをきちんと表現しているバンドって、日本にほぼいないと思っていて。俺はアーティストとして、ルーツをきちんと表現しつつ発信していきたいので、ルーツを強く意識したアレンジをしています。今回の「2MANYTIMES」は、今までで一番、そういう「ルーツ」をしっくり取り込めた曲ができたんじゃないかな。いつもなら大げさになりがちなサウンドも、今回は気にせず入れられました。話がオタクっぽくなってくるけど(笑)。例えば、コーディが入れてくれたコーラスが伸びるところに、バンドを抜いて、音を残したりしてる。”I need to let go…”の部分とか……。

コーディ:”Ah, ha…”のパートだよね、あそこは最高だった!

SIRUP:昔のR&Bは、よくこういうアレンジとかサウンド作りをやってたよね。コーディの音楽はバンドが合うと思うし、もし今度日本でライブやりたいなら、いつでもうちのバンドを紹介するよ!

コーディ:ありがとう! 実現できたら最高だろうな。リハーサル映像は何回も観てるんだけど、あのベーシストが本当に大好きで……。

ー彼の名前は「Funky」って言うんですよ!

コーディ:ベーシストにふさわしすぎる名前だね(笑)。

Hair by TAKAI, Translated by Natsumi Ueda

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