音楽オタクもShazamでも解析できない、17秒のカルト的謎ソングに迫る 米

carl92が切り取った「Everyone Knows That」の元ネタ候補は後を絶たない。1990年代にMTVで流れていたサウンドを拾ったのだという説もあれば、CMジングルだと確信する者もいる。日の目を見ずに終わったバンドの未発表デモ音源の可能性もある。あるいは日本の企業が制作し、東ヨーロッパのどこぞのマックドナルで流れていた店内BGMのコンピレーションかもしれない――ただし、ユーザーの1人がコンピレーションの配信業者に問い合わせたところ、データベースにはそのような楽曲はなかったことが確認された。このように、追跡が行き詰まるケースは増すばかりだった。

ハンドルネーム「sodapopyarn」というre/everyoneknowsthatの別のモデレーターが言うには、追跡コミュニティはいまだ八方ふさがりだそうだ。「残念なことに、現時点では十分な手がかりがなく、デマのほうがはるかに多い」とローリングストーン誌に語った。とくに陰険だったのが、「michale92事件」と呼ばれるデマだ。Sodapopyarnによると、「michael92というユーザーが全編日本語をかぶせた長尺バージョンをWatZatSongに投稿した」という。「コミュニティ全員が騙され、本物だと思い込んだが、4時間後に化けの皮がはがされた。結局michael92はいろんな音源やカバー/リミックスを寄せ集め、それらしい音源を作っていたことが判明した」。企てがばれてファイルが削除されると、偽音源自体も謎音源と化したが、最近になってsodapopyarnが「本物の『Everyone Knows』探しのちょっとした“歴史的遺物”」としてフルバージョンをsubredditにアップロードした。

「希望があるから面白かったのに、最近ではデマが日常茶飯事になってきて、追跡にも次第に支障が出てきている」とsodapopyarnは嘆く。とはいえ、クリエイティブな作品のおかげで議論が維持されているような部分もある。YouTubeに投稿されたコメントの1つは、洗練された形で曲に命を吹き込んだ最近のミュージックビデオに言及し、これぞぴったりな1980年代のネオン輝く画像が添えられていた。「元ネタが見つかったとしても、ここまで出来がよくなかったりして」と書かれていた。

とはいえ、元ネタを突き止めたあかつきには、「Everyone Knows That」事件簿もさらに面白さを増すだろう。元ネタのバンドを見つけ出したら、「お宝さがしを最初から最後まで、本人たちに伝えたい」とsodapopyarnは言う。また「みんなが制作したカバー曲を聞かせてあげられたら、なお最高だ」と続けた。

だが忍耐こそがカギだ。謎音源の追跡に熱狂的なファンの中には、偶然にも魅了された音源の作曲者やアーティストを発見できぬまま、もっと長い時間を費やしているものもいる。アイルランドのクランベリーズのヒット曲に似た、通称「How Long Will It Take」と呼ばれる切ないジャングルロックの場合、少なくとも2007年後期から散発的に話題になっている。だが20年近く追跡が行われても、アーティスト名やタイトルついては全く進展がない。この曲に特化した新たなsubredditも1カ月前に立ち上がったばかりだ。

sodapopyarnのような音楽通は、答えがなくてもへこたれない――ここまで長く続いた共同作業そのものが、追跡活動を価値あるものにしている。「コミュニティ内のメンバーはつねに入れ替わりしていくだろう」と本人。「だけど曲の全容が解明されるまで、コミュニティは絶対なくならないと確信している」。

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from Rolling Stone US

Akiko Kato

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