「THE HOPE」総括 2年目の開催で示した「ヒップホップのリアルなコア」

ミックステープ的な「THE HOPE」のパフォーマンス形式

出演者だけではなく、パフォーマンスの形式も独特だ。ステージに次から次へラッパーが現れては退いていくのだが、一組の持ち時間が10分~15分と短く、単日のフェスとは思えないボリュームで60組以上のアーティストが凝縮されている。思想やテーマをコンセプチュアルに打ち出し、オルタナティブなラッパーや女性ラッパーも積極的に起用し緻密な施策を打ち出してくるPOP YOURSの傾向がアルバム的だとしたら、THE HOPEはミックステープ的と言えるかもしれない。その分、前者の方がヒップホップの多様性を感じられるし、後者の方がよりヒップホップのリアルなコア部分を体感できる。

だからこそ、この日ならではのTHE HOPEらしい特徴も見られた。まず一つ目は歴史へのまなざし。ヒップホップ生誕50年という節目についてMCで触れるラッパーが多くいた。ジャパニーズマゲニーズは50周年を祝ったうえで、「皆がいるから文化になりました、カルチャーになりました。このままヒップホップ続けていけるやつ両手見せて!」と言い、「俺らはヒップホップをリスペクトしてるんで、こういう音で歌ったらどうなるかと思って持ってきました。ビギー好きどこにいる?!」と叫びノトーリアスB.I.G.「Who Shot Ya?」に乗せてラップを披露した。他に最も感銘を受けたのは、PUNPEEの日本語ラップ史にオマージュを捧げたパフォーマンス。ECDやBUDDHA BRAND、TOKONA-X、スチャダラパー、ZEEBRA、SEEDA、OZROZAURUS、そしてLEXまでもありとあらゆるクラシックの名フレーズを繋ぎまくり、会場を大いに沸かせた。


PUNPEE(Photo by Yusuke Oishi (MARCOMONK))

二つ目は、異色のコラボ/あるいはサプライズの演出。とにかく追いきれないくらいに次々と全国津々浦々、広い世代のラッパーが出てくるのがTHE HOPEの魅力の一つだが、ゆえにこの場でしか実現しない共演も見られる。DJ RYOWがプレイしたTOKONA-X参加の「WHO ARE U?」では名古屋の”E”qual,AK-69に加えて紅桜までもが絡むステージが実現。そして、すっかりSOCKS & DJ RYOWの代表曲となりつつある「Osanpo」ではなんとR-指定と般若が現れ、さすがのスキルを見せつけた。DJ TATSUKIは「TOKYO KIDS」でMony HorseとIOだけでなく、Zeebraと般若もフィーチャー。近年の日本語ラップ有数の名曲をレジェンドバージョンで届けた。延々と続く濃厚なゲスト陣を見ていると、今のヒップホップシーンが有するタレントの豊富さに驚かざるを得ない。

また、ちゃんみなについては本フェスへの出演自体がサプライズだったと言えるだろう。元々ラップバトル出身ながら、近年は「あいつはヒップホップじゃないヒップホップとか聞き飽きたよDoctor」「ヒップホップとかヒットソングより表現したかった」(「I’m a Pop」より)と歌い、あえてヒップホップシーンから距離を置いているような印象があった。この日はMCで「ずっとこういう場に出たかった」と言っていたが、冒頭「美人」から「Best Friend(Remix)」でダンサーとともに鋭いラップを携えパフォーマンスする姿を見て、涙腺がゆるんだ。RIEHATAのステージでもその華やかさに歓声が上がっていたが、ダンスという側面からヒップホップの新たな解釈を見せる彼女たちの存在は非常に大きい。


RIEHATA with Rht.(Photo by Yusuke Kitamura)


ちゃんみな(Photo by Yusuke Oishi (MARCOMONK))

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