アンディ・テイラーが語るデュラン・デュラン復帰の可能性、がん闘病からのカムバック

アンディ・テイラー

 
元デュラン・デュラン(Duran Duran)~パワー・ステーション(The Power Station)のギタリスト、アンディ・テイラー(Andy Taylor)が33年ぶりのソロアルバム『Man's A Wolf To Man』をリリースした。最新治療のおかげで前立腺がんを克服できる希望を見出したギタリストは、治療と並行してソロワークだけでなく、デュラン・デュラン向けの音楽制作にも取り組んでいるという。ローリングストーンUS版による最新インタビュー。

2022年11月5日は、アンディ・テイラーにとって生涯忘れることのできない夜になるはずだった。デュラン・デュランが、何年も待ち望んだロックの殿堂入りを果たしたのだ。テイラーは1980年の結成時からギタリストとしてバンドに参加し、「Rio」「Hungry Like the Wolf」などの大ヒット曲に貢献してきた。ただし2006年以降、テイラーはバンドと同じステージに立っていない。デュラン・デュランのアルバム『Reportage』の制作中に、過去の確執が再び表面化し、テイラーは他のメンバーと袂を分かつことになった。結局アルバムが世に出ることはなかった。

ロサンゼルスのマイクロソフト・シアターで開催されたロックの殿堂入り授賞式では、オリジナルの5人のメンバーが再結集し、世界各国から集まったデュラン・デュラン・ファンの前でお披露目するはずだった。しかし登壇したメンバーの中に、アンディ・テイラーの姿はなかった。ステージ上では、フロントマンのサイモン・ル・ボンが、テイラーからのレターを代読した。

「4年ほど前に、転移性前立腺がんのステージ4と診断された」との内容に、会場は動揺した。「その場にいられず、本当に残念でならない。今回の受賞には本当に興奮して、思わずギターを新調したほどだった。この場にいる4人の兄弟を本当に誇りに思う。君らの永続性には実に驚かされる。一緒に受賞できて本当に嬉しい。こんな日がやって来るとは、信じられない。この日を迎えられて最高に幸せだ」

前立腺がんステージ4の5年生存率はわずか29%で、当時テイラーは診断を受けてから4年目に入っていた。そして、ギターを下げて3曲演奏することさえできないほどに衰弱した現実を考えると、状況はそう明るくないように思われた。

ところがこの1年は、テイラーにとって奇跡的な時間になった。現在受けている最新治療のおかげで、余命が延びる可能性が出てきたというのだ。さらにテイラーは、デュラン・デュランのニューアルバムにゲスト参加し、自身のソロアルバム『Man’s a Wolf to Man』を完成させるまでに回復した。テイラーのソロ作品は、1990年のカバーアルバム『Dangerous』以来となる。ニューアルバムは、パワー・ステーション風のファンク曲「Reaching Out to Get You」から、デヴィッド・ボウイの影響を感じさせる「Influential Blondes」、カントリーロック・バラードの「Try To Get Even」まで色彩に富んでいる。「Try To Get Even」でテイラーは、オーストラリア出身のシンガー・ソングライター、ティナ・アリーナとデュエットしている。

ローリングストーン誌はZoomを通じたインタビューで、テイラーのニューアルバム、治療の状況、デュラン・デュランの歴史と最近の再会、そして今後の話などを伺った。彼は、がんと闘いながら5年目に入ろうとしているとは思えないほどに、シャープで生き生きとしていて、ユーモアを交えながら話してくれた。テイラーにとっては嬉しくもあり同時に微妙な感情で見ていたデュラン・デュランの授賞式から約1年が経ち、小さな奇跡が起きたようだ。




がん闘病からの復活劇

―今日はありがとうございます。ロックの殿堂の授賞式から1年後に、このような形でお話できるとは想像もしていませんでした。

アンディ:人生で最も素晴らしい夜を逃してしまったよ。でもおかげで新しい治療法が見つかった。余命が5年ほど延びるようだ。5年後にはまた新たな治療法が出てくるだろうね。皮肉なものさ。授賞式の晩が近づくまで、「俺は行ける。俺なら大丈夫だ」と現実を受け入れられずにいた。でも数日前になって、自分の状況を公開して出席を断念しなければならなくなった。すると、たくさんの励ましや心のこもったメッセージがどっさり届いた。それまで公にしたことはなかったが、今は治療を始めてもう5年になる。

その後、専門医からの助言で別の治療法を知った。それが驚くなかれ、それまでになかった治療方法だったのさ。受けてみると、結果はとても良好だった。

―その新しい治療法はいかがでしょう?

アンディ:8週間前から始めて、これまで2度受けた。ルテチウム177を使った核医学治療だ。がん細胞の中に入り込まずに細胞の外側から、中のがんを見つけるんだ。見つけたら、ピンポイントでがん細胞を殺してくれる。外側から最小限の放射線を放出するのさ。

先週の木曜日に、2度目の治療を受けた。俺が苦しくてのたうちまわっていると、妻は「ほら、パワフルなアンディが帰ってきたわ」なんて言うのさ。面白い奴だ。治療を受けてから通常の状態に戻るまでに4日間かかる。でも驚くほど素晴らしい効果がある。

―授賞式の夜にご自身の健康状態を公開したおかげで、新たな治療法が見つかったということでしょうか?

アンディ:その通りだ。後日、英国の科学者クリス・エヴァンズ卿と知り合いになった。彼はがんの専門家で、その他にもいろいろな肩書を持っている。彼はすごい人間だ。「私のチームに診察させてもらえませんか?」と言うから、俺は「もちろん。これまでの記録は全て持っている」という感じで始まった。

まずはゲノム検査をしたが、俺には初めての経験だった。俺が受けていたがん治療は、少し時代遅れだったのかもしれない。検査の結果、遺伝子に突然変異が見つかった。遺伝的なものらしい。それから彼らは、新たな治療法でどれほど効果が上がるかを検討した。チームによれば「数年は寿命が延びるだろう」ということだった。この治療を受けているうちに、また新たな治療法が出てくるだろう。そうやってコンスタントに新たな治療法を試していくことになる。「死ぬ可能性よりも、死なない可能性の方が高まった」と言われたよ。

5年前の診断では、余命は最長5年と宣告された。今では「5年前の宣告は何だったのだろう。俺は運に恵まれたのか?」という感じだ。

Translated by Smokva Tokyo

 
 
 
 

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