「ツタロック DIG LIVE vol.11 -OSAKA-」大阪で2度目の開催、9組のバンドが魅せた熱気と矜持


ルサンチマン

東京発のルサンチマンは台風による交通事情で到着が遅れ、スタートが押す事態に。開始時刻を10分過ぎた頃メンバーが到着! 急いで機材をセッティングする。きっと道中は大変だったことだろう。北(Vo.&Gt.)が「到着が遅れました、ルサンチマンです! よろしくお願いします!」と挨拶し、リハで「十九」を短く終わらせて本番へ。ライブにおいてはトラブルも良きスパイスとなり得るが、ルサンチマンのこの日のライブもそうだったと思う。もぎ(Dr.)が叩いた1打目のすさまじさは雷が落ちたようで、4人の轟音が轟くと同時にステージが明るくなりフロアの手もアップ! 清水(Ba.)の弾き出すビートも、クーラーNAKANO(Gt.)の歪んだギターも、北の咆哮も、体内のパワーを四方八方に爆発させるような激しさを孕んでいた。低音と爆音のパワープレイで全身がビリビリする。MCもせず、「荻窪」「心配事」「ニヒリズム」「いやいやいやいや」をとにかく豪速球で叩き込む。文字通り渾身のライブでフロアをぐいぐい引き込み、大迫力の渦に巻き込んだ。彼らのエネルギーを全て注ぎ込んだような鬼気迫るステージ。時間の都合上仕方ないが、当初のセトリから楽曲もカットされていたので、正直なところもっと見たかった。ぜひ続きはワンマンライブに足を運んでほしい。


reGretGirl

大トリは、地元大阪出身のreGretGirl。この日はサポートメンバー2人を迎えた5人編成。「From大阪! reGretGirl始めます!」と平部雅洋(Vo.&Gt.)が叫び、「ルックバック」で鮮やかな音を放つ。続く「ピアス」では前田将司(Dr.)のビートに合わせて高速クラップが大発生。伸びやかな歌声とメロディアスな展開でサビでは手もアップ。MCでは平部が地元でのライブを喜び、台風の話題へ。平部は2日前から大阪入りしていたそうだが、十九川宗裕(Ba.)と前田は機材車で前日移動。その様子を十九川は「クルーズ。ほんまに船でした」と形容。大阪ならではのトークも交えつつ「ルサンチマンが無事到着して良かったよね」と安堵してライブに戻る。「自己肯定感爆上げする歌、歌っていいですかー!」と投下された「KAWAII」で<イエベとかブルベとかはわからねえけど 俺はヒラべだ気にすんな>と可愛らしい男心を歌った後は「報われない恋の歌」と紹介した「ダレヨリ」をしっとり歌い上げる。平部はギターを爪弾いて「僕は大阪の和泉市で生まれ育って、JR阪和線が最寄りなんですけど、調子良い日は週5で遅れるんです。今日は人身事故で遅延しますと書いてて。僕はその人を知らんけど、誰かにとって大切な人やったかもしれんし、逃れられずこういう結果になったんかなと思うと、他人事に思えなくて。皆きっと逃げ出したい日もあると思う。だから皆の寄る辺ない心に寄り添えたらと思って歌います」と、2月リリースの最新アルバムのタイトル曲「tear」を披露。上質なメロディーと5人のアンサンブルが力をくれると同時に、浄化されるような温かさを感じる。平部は曲中、「この曲が守ってくれますように!」「泣きたい時は泣けよー!」と声を張り上げ、フロアを包み込む。「ホワイトアウト」では、ライブアレンジバージョンで平部がアカペラでサビを歌うと客席も大合唱。そのまま上がった拳と共に最高の一体感を引き連れて、ラストチューン「soak」をパワフルに届けた。

惜しみない拍手はすぐさまアンコールに変化し、平部、十九川、前田が再びステージに登場。イベントタイトルの“DIG=掘る”の意味に触れ、「今日新しいバンド見つけたよって人おる?」とフロアに問いかけると多くの手が挙がる。「最高やん。皆イベントの主旨に合いすぎ。新しいバンドとの出会いをいっぱい持って帰って、次そのバンドのライブ行ったらいいし、初めてreGretGirl観たよって人は秋にツアーをやりますんで! 今日は本当にありがとうございました。一番最後にうってつけの曲を!」と3人で「Shunari」を演奏。会場を切なくも眩しい多幸感で満たしてライブを終えた。熱くて温かい血の通ったステージは、彼らの人柄があってこそ。大トリとしての貫禄と包容力も見せたreGretGirlだった。

こうして2度目の大阪での「ツタロック DIG LIVE」は大団円を迎えた。台風による影響も少しあったが、全出演者が無事にステージに立つことができた。コロナ禍に結成したバンドからキャリア8年を迎えるバンドまで全9組。それぞれがそれぞれの決意と矜持を胸に活動していることを改めて感じられた1日だった。次なる主役との出会いもまた楽しみだ。



<セットリスト>

センチメンタルリリー
1.国道25号線
2.隣に
3.大恋愛

CAT ATE HOTDOGS
1.魔法をかけて
2.intro / 7th wonder!!
3.バディロックノイズ
4.ヤドカリ
5.intro / Q&A
6.熱
7.カラッポ。
8.群青

サバシスター
1.スケボー泥棒!
2.ヘイまま!プリーズコールミー
3.しげちゃん
4.アイリー
5.ジャージ
6.ナイスなガール
7.タイムセール逃してくれ
8.サバシスター's THEME

Hello Hello
1.THINK
2.Hello!!!
3.youth
4.君と手
5.Stay with Me
6.リリィ
7.花火

帝国喫茶
1.貴方日和
2.君が月
3.季節すら追い抜いて
4.夜に叶えて
5.じゃなくて
6.カレンダー
7.ガソリンタンク
8.春風往来

yutori
1.センチメンタル
2.音信不通
3.モラトリアム
4.煩イ
5.ワンルーム
6.愛してるよ
7.君と癖
8.煙より

なきごと
1.シャーデンフロイデ
2.連れ去ってサラブレッド
3.知らない惑星
4.私は私なりの言葉でしか愛してると伝えることが出来ない
5.憧れとレモンサワー
6.メトロポリタン
7.深夜2時とハイボール

ルサンチマン
1.荻窪
2.心配事
3.ニヒリズム
4.いやいやいやいや

reGretGirl
1.ルックバック
2.ピアス
3.KAWAII
4.ダレヨリ
5.tear
6.ホワイトアウト
7.soak
EN.Shunari

Rolling Stone Japan 編集部

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE