Jay Worthy、来日目前の西海岸ラッパーが語る独自のセンスと日本文化への愛

ジェイ・ワーシー

LAのラッパー、ジェイ・ワーシー(Jay Worthy)が7月28日(金)・29日(土)に日本ツアーを行う。28日は福島県郡山市の「#9」、29日は神奈川県横浜市の「THE BRIDGE YOKOHAMA」で公演。来日公演は今回で2回目となる。

カナダ生まれでLA育ちのジェイ・ワーシーは、現行ヒップホップシーンにおいて独特のポジションを築き上げているラッパーだ。エイサップ・モブの中心人物だった故エイサップ・ヤムズに後押しされてラッパーとしての活動を本格化させ、プロデューサーのショーン・ハウスと組んだデュオのロンドン・ドラッグス(LNDN DRGS)で人気を拡大。さらにデュオの活動のほか、ハリー・フラウドやサイプレス・ヒルのDJ・マグスなどのプロデューサーと共に精力的に作品をリリースしている。ジ・アルケミストとのコラボで2017年にリリースしたEP『Fantasy Island』は全編で日本の曲をサンプリングし、ここ日本でも大きな話題を集めた。

ファンクやR&Bの気持ち良さを巧みに切り取ったロンドン・ドラッグスの音楽性は、一聴すると西海岸のGファンクの伝統を汲んでいるように思える。しかし、サンプリングで作られたループ感の強いビートは、構造としてはブーンバップ的でもある。ショーン・ハウス以外にタッグを組むプロデューサーにしても、先述した三人などブーンバップ寄りの人選が目立つ。このGファンク的でもありブーンバップ的でもあるセンスは客演の人選にも表れており、ブーンバップファンの間で評価の高いロック・マルシアーノとのタッグによる最新作『Nothing Bigger Than The Program』にも、スヌープ・ドッグ周辺での活動で知られるクラプトやコケインなどが参加していた。

ジェイ・ワーシー関連作は、タッグを組むプロデューサーが誰であってもロンドン・ドラッグスでの音楽性から大きく離れないことが多い。R&Bやファンクの旨味を崩さずに使い、シンプルなループの魅力で聴かせるようなサウンドに仕上げている。このスタイルは現行の西海岸シーンにおいては異彩を放つものだ。そんな独自のスタンスで活動するジェイ・ワーシーが今回、来日直前にメールインタビューに応えてくれた。




―あなたはGファンクなどの西海岸ヒップホップの要素も強い音楽をやっていますが、同時に東海岸のブーンバップからの影響も感じられます。本格的にラッパーとしての活動を始めるにあたり、研究したラッパーはいますか?

ジェイ・ワーシー(以下、JW):正直に言うと、俺がそういうスタイルを作っている感覚はなくて、ただ幼少期に聴いた沢山の音楽が元になっているだけなんだ。インスピレーションは沢山の音楽、ジャズやドラムループから来ている。ジャンルにカテゴライズできないな。

―あなたの作品に参加しているクラプトとMC・エイトは、西海岸のギャングスタ・ラップのシーンで活躍しながらGファンクだけではなく東海岸のブーンバップのビートにも乗ってきたという点で、あなたが今やっている音楽の先駆者のような存在だと思います。二人との制作を通して学んだことや、何か言われたことはありますか?

JW:彼らのことは昔から見てきたし、俺からしたら神的な存在だね。そんな彼らと音楽を作れるのは本当に光栄だと思っている。ガキの頃からのヒーローだからね。クラプトにはよく昔のことを聞くけど、プロダクションについて音楽のアドバイスを貰ったことはないな。俺らがやっているようなことは(MC・エイトが所属するグループの)コンプトンズ・モスト・ウォンテッドが最初にやりだしたんじゃないかな。昔からMC・エイトの音楽が好きだったんだけど、最近聴き直して彼らが同じことをやっていたって気付いたよ。

―あなたはベテランラッパーと積極的に曲を作っているように見えます。一緒に制作をする中で印象に残るアドバイスをくれた人はいますか?

JW:彼らの音楽を聴いて育ったから彼らと音楽を作れて最高だし、彼らがリスペクトしてくれているのも事実。彼らが切り開いてくれた様々な道で、自分に必要な全てをやろうと思うよ。

―ラッパーとしての道を歩むきっかけになったという、エイサップ・ヤムズから言われた言葉で印象に残っていることは何かありますか?

JW:ヤムズは俺の翼に風と背中にパワーをくれた。彼は俺と同じようなスタイルが好きだったんだ。印象に残っているのは、「お前のビートやフィーチャー陣のチョイスは最高だから、A&Rやエグゼクティブ・プロデューサーとかで他のアーティストのプロジェクトもやった方が良い」と言われたことかな。興味はあるからOG達とやってみようかと思っている。



―あなたの作品からはR&Bやファンクへの深い愛情を感じます。しかし、デイム・ファンクのようなアーティストとも制作していますが、基本的にはファンクそのものに近い生演奏の制作スタイルではなくサンプリングによるビートに乗りますよね。そこにはどういう理由がありますか?

JW:ファンク、プレイヤーシット、ループ系……ビートによってラップしたい内容が変わるからその時々で変わる。全てサンプリングにこだわっているわけではないんだよね。聴いて育った音楽の影響が強くて、その時「ラップしたい」と思ったビートでラップしているだけなんだ。



―あなたは自分でビートメイクを行うわけではありませんが、どの作品のビートにも一定の色がありますよね。例えばサンプリングネタの選定など、あなたがラップ以外でビートに介入することはありますか?

JW:リリースした曲のネタはほぼ全て自分で選んでいるね。でも、一緒に制作している人間も俺の好みをわかっているから提案してきたりするよ。

―ロンドン・ドラッグスもそうですが、あなたは一人のプロデューサーとアルバム単位でコラボレーションすることを好む印象があります(そうではない作品もありますが)。その活動のやり方にインスパイアを与えたラッパーやグループはいますか?

JW:ロンドン・ドラッグスを結成した時は、「ジェイ・ワーシー」としてやっていたことと別のことをやりたかったんだよね。それでループやサンプリングをベースにしたビートでラップをしたかったんだけど、その時は誰も一緒にやってくれなかった。ショーンは初めてわかってくれた人間なんだ。そのサウンドが他のプロデューサーに刺激を与えて、声をかけられるようになった。必ず一人とやりたいと思っているわけではないんだけど、このやり方がかなり気に入っているね。



―同じようなラッパー+プロデューサーのコラボでお気に入りのものを教えてください。

JW:ブレント・ファイヤズとタイラー・ザ・クリエイター、サンダーキャットかな。昔から馴染みがあるもの以外はあまりラップを聴かないんだけど、新譜でアガるのはアル(ジ・アルケミスト)やヒット・ボーイの作品で真実が語られている時だね。

―色々な地域のプロデューサーとコラボ作品を作っていますが、コラボレーターとはいつも一緒にスタジオに入っていますか?

JW:ほとんど全て入るね。

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