ヒップホップの基本の「き」が分かるドキュメンタリー映画、8つの教訓とは?

ラップにおけるリリシズムに焦点を置いたドキュメンタリー映画『Word Is Bond』(Photo by Mass Appeal/Showtime)

現在のメインストリームのヒップホップでは、パンチの効いたビートや魅惑的なメロディ、あるいはSpotifyのプレイリストフレンドリーな曲などがもてはやされる。しかしサシャ・ジェンキンスが手がけたドキュメンタリー映画『Word Is Bond』は、ヒップホップにおけるリリシズムに焦点を合わせる。

ナズ、ラキム、ビッグ・ダディ・ケイン等、ラップ界におけるレジェンド達のインタビューを数多く収録する一方で、本作にはフラットブッシュ・ゾンビーズやアンダーソン・パーク等、新進気鋭のアーティストも多数登場する。また各インタビューの合間には、ラッパーたちの言葉に沿った手書きのイラストが登場するなど、エンターテイメント性も十分な内容となっている。完全無欠の16小節を生み出すために必要なものとは? 本作から学ぶ8つの教訓を以下で紹介する。

1.ヒップホップは一夜にしてストリートを染め上げた

ビッグ・ダディ・ケインとラキムは、ヒップホップとの出会いが一瞬にして彼らの人生を変えたと話す。「ラップは俺たちのストリートに、文字通り旋風を巻き起こした」。ラキムはそう話す。「一夜にして、町中がラッパーやブレイクダンサーやDJで溢れかえるようになった」。彼は初めて書いたライムを今もはっきりと覚えているという。「ミッキーマウスは国境付近に家を建てた / やがて地震がきて彼の城は海に沈んだ」

ラップと出会ってすぐ夢中になったと話すケインは、上には上がいることを痛感した瞬間をはっきりと覚えているという。「俺は自分のスキルに自信を持ってた」。そう話す彼は、友人からコールド・クラッシュ・ブラザーズを聴かされ、完全に打ちのめされたという。「それまでに書いたライムを全部ボツにして、いちから出直すことに決めたんだ」

2. 小節の頭を見逃すな

『Word is Bond』の魅力の一つは、リリシズムにおけるテクニカルな内容や、その重要性を過剰に強調しない点にある。それでもブラザー・アリ等さまざまなMCたちは、小節の頭(ザ・ワンと呼ばれる)に合わせることの大切さについて語る形で、ヒップホップの歴史を簡潔に紹介していく。しかしラッパーのスラグとライムの書き方について議論するとき、アリは思わず語気を強める。「何より大切なのは小節の頭だ」。アリはそう話す。「それより前に入る言葉はカウントされない。一拍目の頭にくるシラブル(音節)が、そのラインの冒頭になるんだ」

「あのスキルにおいて、チャック・Dの右に出るやつはいない」。彼はそう語り、パブリック・エナミーの「ドント・ビリーヴ・ザ・ハイプ」のラップを披露してみせる。「当時からそれを重要視しないラッパーもいた(と話した後、LL・クール・Jの「ママ・セイド・ノック・ユー・アウト」のラップをする)。最近じゃそのルールを守ってるやつの方が圧倒的に少ない。小節の頭を逃すっていうのは、そこに句読点を置くようなもんなんだ」

Translated by Masaaki Yoshida

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