ペイル・ファウンテンズ、シャック、そして新たな黄金期 マイケル・ヘッドが語る音楽遍歴

ペイル・ファウンテンズ、シャックを振り返る

─ペイル・ファウンテンズを始める頃、イギリスではポストカード・レコーズがアズテック・カメラやオレンジ・ジュースのレコードを発売して、あなたも耳にしたと思います。彼らの作品からどんな刺激を受けましたか?

MH:アズテック・カメラのロディ・フレイムは、僕よりちょっと年下だと思うけど、僕にとって音楽的なヒーローだ。アズテック・カメラがポストカードから出した最初のシングル「Just Like Gold」も聴いて、刺激された。ペイル・ファウンテンズでアズテック・カメラのリヴァプール公演をサポートしたときに、サウンドチェックを見たんだけど、圧倒されたね。ロディは僕が見てきた中で最高のギタリストだと思った。まるでジャズ・ギタリストのように流麗でさ。僕はギターを弾き始めてから長くなかったから、当時はG、Dとか基本的なコードを使っていたので、それからジャズのコードを学ぶようになった。ロディは人柄も良いし、大きな影響を受けたミュージシャンだよ。


ペイル・ファウンテンズ、写真左上がマイケル・ヘッド(Photo by Fin Costello/Redferns)

─ペイル・ファウンテンズの音楽性はあなたが聴いてきた多種多様な音楽の影響がミックスされた、幅広いものでしたよね。具体的には、あの頃どんなレコードを主に聴いていたんでしょう?

MH:面白いんだけど、最近レーベルの人間に同じようなことを訊かれたよ。クラシックやジャズも聴いていたのか?とね。でも、その頃は聴いていなかったんだ。トランペットを使っていたけど、僕に管楽器の経験はなかったし。僕が子供の頃はBBCのテレビ放送が2チャンネルしかなくて、それが限られた娯楽だった。今思うと、番組のジングルで、ボサノヴァやセルジオ・メンデスのような、エレベーターでかかる種類の音楽が流れていたので、それをスポンジのように吸収していたんじゃないかと思う。

─なるほど。では、ペイル・ファウンテンズの「Thank You」がああいうドラマティックなアレンジの曲になったのも、自然と湧き出てきた感じですか?

MH:そうだね。ギターで曲を作りながら、これにはトランペットやオーケストラが合う曲かも……と、頭の中で音が鳴っていた。トランペットやブラスを使っているバンドが少ない時代だったから、個性的でいいとも思った。



今回の来日公演で、ペイル・ファウンテンズの楽曲は「Reach」(『Pacific Street』収録)、「Jean's Not Happening」(『...From Across The Kitchen Table』収録)の2つが披露された。

─シャックを結成して1988年に最初のアルバムを出してからは、それまでよりビートが強調されたグルーヴ感のあるサウンドにも取り組みました。音楽の好みの変化や、時代性に合わせたところはありましたか?

MH:いい質問だね。何故かと言うと、あの頃は正しくない方向へ行ったと思っているから。新しいテクノロジーに依存するのはギャンブルだった。シャックの最初のアルバム『Zilch』は、できればドラムマシーンを使わずに、生楽器で作り直したいと思っているぐらいだよ。なので、シャックの作品は途中からだんだんと現実に戻って行ったんだ。



来日公演の本編ラストを飾った、シャック「Comedy」(『H.M.S. Fable』収録)

─マイケル・ヘッド&ザ・ストランズとしてリリースしたアルバムは、アコースティック・ギターが中心の穏やかなものになりました。この頃は、どんなレコードを好んで聴いていたんでしょう?

MH:ティム・バックリィ、ニック・ドレイク、カレン・ダルトンとか。同じ頃、ドビュッシーやサン=サーンス、エリック・サティも聴くようになった。アトモスフェリックで、空間がたくさんあって、不協和音があって、普通のクラシック音楽とは違う、そういうものにも魅力を感じるようになっていたよ。マイルス・デイヴィスもよく聴くようになった。

─シャックの2006年のアルバム『On The Corner Of Miles And Gil』は、ノエル・ギャラガーのレーベル、SOUR MASHから発売されました。彼はあなたの大ファンですが、SOUR MASHと契約する際に彼とはどんな話をしましたか?

MH:僕らの音楽を気に入ってくれて馬が合ったのでリリースすることになった。ごくシンプルだよ。彼とはフェスの会場で顔を合わせたりして、結構前から知っていたし。音楽的にこうしてくれというリクエストとかは一切なく、僕らに任せてくれた。


『On The Corner Of Miles And Gil』というタイトルは、マイケル・ヘッドが敬愛するマイルス・デイヴィスとギル・エヴァンスにちなんで名づけられた。

Translated by Keiko Yuyama

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