Lucky Kilimanjaro熊木幸丸とフレデリック三原康司が語る、踊らせる「歌詞」の作り方

左から、Lucky Kilimanjaro熊木幸丸とフレデリック三原康司(Photo by Mitsuru Nishimura)

「踊る」をテーマに、ダンスミュージックやR&Bなどを混ぜ合わせたサウンドを肉体的に鳴らすLucky Kilimanjaroと、ブラックミュージックの要素を入れつつもロックバンドとして昇華するフレデリック。それぞれのバンドで楽曲制作を担う熊木幸丸と三原康司に、ダンスミュージックにおける歌詞の考え方や生み出し方について話してもらった。年齢が一つ違いでほぼ同世代という2人の共通点が多く見える貴重な対談となった。

【写真を見る】取材中の熊木幸丸(Lucky Kilimanjaro)と三原康司 (フレデリック)

自分の変化を追求していくアルバムになった (熊木)

熊木 三原さんとこういう形で対談させていただくことが初めてで。取材は緊張しないタイプなんですけど、割と緊張しています(笑)。

三原 僕もしゃべりたかったことが色々あったので、すごく嬉しいです。

ーまずは、熊木さんがフレデリックの最新ミニアルバム『優游涵泳回遊録』を聴いた感想から聞かせていただけますか?

熊木 ロックバンドの皮を被っているんですけど、サウンドデザインがディスコマシーンというか、どの言葉にもミラーボールが見える。どう作っているのか不思議に思うぐらいロックっぽいんだけどロックっぽくない構造で完成されていて。元からフレデリックはそういう要素があるバンドだと思っているんですけど、今作はよりテクノ感やオールド感と、今のフレデリックのメロディ感だったりパワフルな存在感だったりが融合していて。本当に誰にも出せなかったサウンドで、改めてすごいバンドだなと思いました。

三原 今作はより自分たちの個性みたいな部分を磨き上げた部分があって。フレデリックの個性を担っているのは僕だから託したいとメンバーが思っている部分もあったみたいで、会話を重ねた結果、個性が出まくりな作品になっていきましたね。



ー康司さんは、Lucky Kilimanjaroの新作アルバム『Kimochy Season』を聴いてどう思われましたか。

三原 「踊る」って言葉に対する追求がサウンドだけじゃなく、意思や気持ちにも全部載っているなと思いました。僕らもそこを言葉でもサウンドでも意識するバンドなので共通点を感じたし、同時にLucky Kilimanjaroにしか出せない追求の仕方がすごく出ていて、めちゃくちゃ曲を書くポテンシャルを感じて素晴らしいなと思いました。



ー熊木さんは、今作をどういうテーマをもって作られたんでしょう。

熊木 世界情勢の変化だったり、自身も結婚したり変化が多くて。バンドとしてもメジャーデビューの最初のツアーからコロナ禍で、ずっと変化の最中に置かれている感覚があって。そういう変化って実は一時的なものじゃなく、持続し続けるものなんだと捉えるようになってきたんです。日本人は特に変化を嫌う国民性があるというか。ある種、自分のポジション、キャラクター、アイデンティティを1つの場所に固定して安心感を求める部分がある。そんな中で、日本のポップスにおいて変化していくことの気持ちよさや流動性の気持ちよさをどう組み立てるか。それを説教的な形ではなく、気持ちいいダンスミュージックとしてどう届けるかを全体のコンセプトとして掲げて作り上げました。自身も、自分のキャラクターみたいな部分にこだわってしまう瞬間はありますが、そこを超えてようやく自分の面白さだったり新しい自分が発見できたり、もっと面白くなると思っていて。自分の変化に対してもどんどん追求していくアルバムになったのかなと思っています。

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