尾崎裕哉が語る、父・尾崎豊の名曲「I LOVE YOU」をいまカバーした理由

―2曲ともラブソングですが、世の中から遮断されたようなところにいる自分と相手、僕と君みたいな世界観があると思います。そこが尾崎豊さんの歌の特徴であり魅力だと思うのですが、そうした曲の世界観についてはどう解釈して歌っているのでしょうか。

なるほど。たしかに歌っている中では“君と僕”という2人の間柄だと思うんですけど、その関係って曲の中で常に社会と照らし合わせていると思うんですよね。そういう片鱗が曲の中にいつも見える気がします。〈二人はまるで 捨て猫みたい〉(「I LOVE YOU」)という言葉って、もちろん2人のことを歌っているんだけど、“若すぎる2人”の背景に、誰かがまわりにいることが見えるというか。社会の中での2人の関係性みたいなものが見えている気がします。「OH MY LITTLE GIRL」の方は、もう少し“君と僕”という2人の世界観な気がしますけど。

―ちょっと余談になりますけど、「I LOVE YOU」の〈二人はまるで 捨て猫みたい〉って、氣志團が「One Night Carnival」の歌詞でオマージュしているじゃないですか(“俺達まるで捨て猫みたい”と歌っている)? あれがすごく好きなんですけど(笑)。裕哉さんはどう感じてますか。

ああ~、使ってますね。面白いと思いますよ。上手い使い方だと思いますし、「すごく好き」っておっしゃっているのが答えというか、「ああ、これ使うんだ!?」っていう遊び心に、みなさんが上手く乗せられてるんだと思います(笑)。例えば僕も、マカロニえんぴつの「なんでもないよ、」で、間奏にジョン・メイヤー風なギターフレーズが入っているのを聴いて「ああ、あれね。わかってんね!」ってなるんですよ。そういうのに近い気がします。

―愛のあるオマージュというか。

そうですね。そういうサンプリング的なのは良いと思います。

―氣志團じゃないですけど、「I LOVE YOU」「OH MY LITTLE GIRL」をリリースした頃、初期の尾崎豊さんの作品って、言ってしまえばそれこそ“不良少年の歌”じゃないですか?

うん、うん。

―その頃の尾崎豊さんの心情に、裕哉さんの10代を重ねたりもしましたか。

10代の頃って、社会がなんであるのかわかっていないじゃないですか? まだ学校の授業の中だけが自分の世界だし、プラス恋愛ぐらいが自分の見えている範疇だと思うんです。家と通学路ぐらいしか社会との接点がないというか。だから、「自由」とか「愛」っていうことがものすごく魅力的に見えるわけですよね。それは、僕も10代のときに特に思っていました。当時、僕は男子校だったんですよ。しかも全寮制の。全寮制の男子校って地獄のような環境ですよ(笑)

―ははははは(笑)。

その環境で「I LOVE YOU」や「OH MY LITTLE GIRL」を聴いたときに、「恋愛ってなんなんだろうな」って想像させられることはありました。勝手に恋した気分になれるような、誰かを愛した気分になれるような。この2曲に限らず、音楽というもの自体が、想像力を掻き立てるものなんじゃないかなって思います。「15の夜」や「卒業」「Scrambling Rock 'n' Roll」とか、自由に対する歌っていうのはすごく共感できたんですよね。全寮制にいるから自由なんて無いわけですよ。朝何時に起きてベッドメイクして、朝飯食って授業やって宿題をやって……っていう暮らしの中で、学校のルールとかに「こんなに厳しくしなくていいんじゃないの?」って思ったり。小さいことなんだけど、自分にとってはデカいことなんですよ。だから、尾崎豊のそういう初期の曲は、僕にも響いてました。

―父親だからということではなくて、純粋に共感できた音楽だったわけですね。

そうですね。僕にとってはアーティストしての魅力が強いですね。

Rolling Stone Japan 編集部

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