XTC再結成の可能性は? テリー・チェンバースが語るバンド結成時と脱退後の記憶

XTC結成時の記憶、EXTCが思い描く未来

―それからテリーさんはオーストラリアに移住し、あちらで30年以上も暮らしたそうですが、その間にXTC脱退を後悔したことはありましたか?

テリー:バンドに所属した期間はそこまで長くなかったけど、そういった瞬間は少なくとも何度かあったよ。ただ、それと同時に、音楽ビジネス全般に対してウンザリしたようなところもあった。当時の僕はまだ27歳くらいと若かったので、もっと上手くできたような気もするんだ。アンディがそうだったように、僕らは全員で休息をとるべきだったとも思う。

年齢を重ねた現在の僕は、何か重要な決断をするときは一晩置くようにしている。でも当時は若かったし、せっかちな性格もあって即座に答えを出していた気がするね。それでも僕にとって、何よりも大切だったライブをしなくなったというのは一大事だったんだ。とはいえ、もっとマシな解決方法もあったと言わざるを得ないだろうね。


XTCの前進バンド、ヘリウム・キッズによる1974年の映像。当時のテリーは長髪だった。

―2016年に地元のスウィンドンに戻ってきて、コリンと再会してからEXTCを立ち上げるまでの過程で、最初にアンディやコリンと出会い、バンドを結成したときの記憶を思い出したりしましたか?

テリー:全てが始まった1974年、僕らはたしか17歳だったかな?(テリーは1955年生まれ=当時19歳)。幸運なことに音楽への興味を共有し、小さな街で友人となった。あの頃の僕らは地元で楽しむことが全てで、アルバムを作るようなことになるとは誰一人として思っていなかっただろう。地元スウィンドンでは演奏したり音楽に触れられる場所は本当に少なかった。ギグに出演するためにはカバーをプレイするしかなくて、自分たちらしくない変なカバーもやったよ。だから、自分たちでカセットテープに録音して、ロックバンドが出演するようなロンドンのクラブに送って演奏する機会をずっと探っていた。

日本の片田舎で音楽をやっていても、結局は東京に出てこないと人前でプレイするのは難しいはずだ。アメリカならLAかNYといった具合にね。イギリスの場合は、ビートルズやマージー・ビートの時代にはリバプールという選択肢もあったけど、もっぱらロンドンに行くのが当たり前だったんだ。そういう場所に行って、人々の印象に残るようなことをやらなければいけなかった。僕たちはロンドンに行ってプレイするようになり、大都市での活動の意味について理解するようになったんだ。


1976年、ヴァージン契約前夜のXTCが演奏する「Science Friction」。当時の鍵盤担当はジョナサン・パーキンス。

テリー:EXTCの活動を始めた際にも、そういう一連のお決まりが伴うことは分かっていた。ツアーっていうのは、ほとんどの時間が移動などで拘束されてしまうし、華やかなことばかりじゃない。飛行機や車の移動で眠れなければ疲労が貯まるし、場所が変われば食事も変わり、胃腸に影響が出てくる。どこかで体の調子を崩すこともあるし、ある程度のタフさと強い気持ちがないとやっていけないんだ。今も一緒にやってくれている2人はツアー経験が豊富だし、3人で乗り切るためのペース配分ができている。今回の来日ツアーは3回のショウのみだけど、アメリカともなると過酷な長距離移動に耐えつつ演奏を続けていかなければならないからね。

EXTCのメンバーをオーディションをしたときも「彼は曲をプレイできるのか? そもそも興味を持っているのだろうか?」などの点に加えて、「オーディエンスの前でナーバスにならないだろうか?」といったことも重視した。ジョー・サトリアーニのような技術を持っていても、それだけじゃダメなんだ。人前に出てプレイできるハートを持つっていうのは、誰にでも簡単にできることじゃないから。


テリー・チェンバース(Photo by Shiho Sasaki)

―EXTCとしては今後、どんなプランを考えていますか。新曲を用意しているという話も見かけましたが。

テリー:以前から新曲を作ろうという話になっていて、今でもその機会を狙っているよ。それはこのバンドに対して、どれだけの人が興味を持っているのかにもかかっていて、売れそうにないなら作ることはないだろう。日本とアメリカは、イギリスよりも僕らのことを受け入れてくれている。イギリスの市場で好かれることはほとんどなかったから。

作品を作るならどれだけの需要があり、どれくらいの数を製造すべきか算段ができる状態でなければダメだと思う。そのためにも、まずは3〜4曲入りのEPでトライして様子を見ることになるだろう。「Walk before you run」(千里の道も一歩から)ということだね。

Translated by Tommy Molly

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