ミーガン・ザ・スタリオンが語る、負けられない理由

「恥」の感覚に悩まされる

ベルエアの大邸宅のディナーに話を戻そう。ミーガンの目から涙があふれだすと、私は自分と彼女の間に果てしない距離が広がっているような気がした。ミーガンは、7月11日の夜の出来事をいまだに頭の中で整理できずにいる。隣に座ってもいいかと尋ねると、首を縦に振ってくれた。涙に濡れた目からは、胸を刺すような痛みが感じられる。「私たちの間には、本物の絆があったと思ったのに」とレーンズのことを口にした。レーンズの母親は、彼が11歳の時に貧血に伴う合併症で病死した。母親を失った者同士、ミーガンはレーンズとの間に絆を感じていたのだ。「私の理解者だと思っていた。それに、いつか私を撃つなんて考えもしなかった」

「あの男には指一本触れていない」とミーガンは続ける。「あの男には何もしていないわ。車内で口論がはじまっただけ。でも、そんなの日常茶飯事よ。友達同士の喧嘩なんて、ごくありふれたことでしょう?」

ミーガンが受けた傷は深かった。まずは怪我から回復しなければいけないのだが、そのプロセスは過酷だった。「あの夜、私が手術を受けたことは誰も知らない。カリフォルニアの病院に4日くらい入院していたの」と語る。「その後、しばらくはニューヨークにいた。両脚を包帯でぐるぐる巻きにされて、歩けなかった。いまも両足に銃弾の破片が残っているの。もう自分がミーガン・ザ・スタリオンではいられないのかと思うと、とても怖かった。頭の中がぐちゃぐちゃだった」。ニューヨークで理学療法をはじめ、それからフロリダ州タンパに拠点を移した。タンパでは、ようやく歩けるようになった。

悪夢のような毎日が続き、やがてミーガンは恥の感覚に悩まされるようになった。あの夜の出来事と自分がとった行動に対して罪悪感を抱いたのだ。「ほんの少しだけ、自分が情けないと思った」とミーガンは言う。「車内にいるのは、みんな私の友達だと思っていたから。でも、実際はそうじゃなかった。そのことにすごく傷ついたの」

あの夜の出来事は、二重の裏切り行為だったとミーガンはほのめかす。ミーガンは、ケルシー・ハリスが事件の翌日、あるいは翌々日にレーンズとホテルで落ち合ったと主張している。「それを知った時は、『ケルシー、あなたは私の親友でしょう? それなのに、どうして私を撃った男に会いに行くの?』と思った」とミーガンは話す。「するとケルシーに『だって、あなたに電話しても全然出ないんだもの。私は追い詰められていたの。どうしていいかわからなかったのよ』と言われた。追い詰められているって、どういうこと? 私をこの状況から救えるのはケルシーしかいないのに」

ミーガンは続ける。「そしたらケルシーは、私に向かってこう言ったの。『レーンズから、黙っていてくれてありがとう。お礼に君の事業に投資させてよ。あんなことも、こんなこともやってあげるって言われた』。それ以来、ケルシーはネット上で事件のことを一切話さなくなった」。(本誌はハリスを取材したものの、コメントは得られなかった。この件についてレーンズの代理人にもインタビューを行ったが、回答は得られなかった)

自身の無罪を主張する前、レーンズは事件に乗じてアルバム『Sorry 4 What』をリリースした。アルバムを通じてレーンズは、自分が“ハメられた”と主張する一方で、事件の背景にはミーガンとの恋愛関係のもつれがあったとほのめかしている(対するミーガンは「あの男は私の元カレなんかじゃないし、私の恋人だったことは一度もない」と否定)。その後もレーンズは、ミーガンとハリスの両方と性的関係があったことを匂わせるツイートを投稿し続けた。ミーガンを撃った数時間後にレーンズから送られてきた謝罪のメッセージのスクリーンショットをミーガンが投稿すると、レーンズは「親友ふたりと寝てたのがバレた。だから謝ったんだ。そんなふうに逆ギレされるとマジ引くわ」と応酬した。

その一方で、この事件がTwitterのトレンドワードの上位にランクインしている時も、私のタイムラインに表示されたのはミーガンへの応援メッセージやアンチへの非難がほとんどだ。もちろん、ミーガンもこうしたものをいくらか目にしている。「ファンのみんなは、私のメンタルヘルスを気にかけてくれている。『ねえミーガン、ネットにアクセスしたい気分じゃなくても気にしないで。大丈夫よ。今日は、愛と応援のメッセージを送るだけにするわ』って言ってくれる」とミーガンは振り返る。「そんな時は『私のことをわかってくれてありがとう!』ってうれしくなるの」

それでも、実際は誹謗中傷にさらされることのほうが多い。「ネットにアクセスしても」とミーガンは口を開く。「一日中、馬鹿げた情報が垂れ流されている。そのなかには、私をターゲットにした人が20人ほどいて、くだらないことばかり言っているの。そんな時は、『15分間(のオンラインタイム)は終わり。もうやめよう』と自分に言って、ネットを離れる」。誹謗中傷が自分に向けられていない時でさえ、おぞましいコメントとともにレーンズが称賛されている様子を目の当たりにすることもあるそうだ。「『レーンズと同じ立場にいたら、俺だってあのアバズレを撃っていた』のようなコメントを見たことがある」とミーガンは言った。

「どういうわけか、私が悪者になってしまった」とミーガンは混乱した表情で話す。「世間が私の言うことを真剣に受け止めてくれないのは、私が強そうに見えるから? 私の外見のせい? 私が痩せていないから? 白人じゃないから? スタイルが良くないから? それとも身長のせい? 私が小柄じゃないから? だから、ひとりの女性として扱ってくれないの?」。ほんの一瞬、ミーガンの声が震えた。

「私は、この事件を乗り越えようと毎日努力している。そうしながら、誠実な人間でありたいと思っている。それなのに、世間から嘘つきだと言われるのは最悪の気分。でも、泣いている姿を見せるのは嫌なの。『なんだ、そうだったのか。君のことを傷つけていたんだね』って私に同情してほしくないから、世間には私の心の内を知ってほしくない」

ミーガンは、とりわけレーンズに対してこうした気持ちを強く抱いている。「あなたは、もう十分私を傷つけたと思う。私に向かって銃を撃ったことで肉体的にも傷つけた。それなのに、どうしてこんなことを長引かせようとするの? いったい何がしたいの? あなたは、ずっと前から私を憎んでいた。それなのに、私は気づけなかった」

「あの男が有罪になることを望んでいる」とミーガンは冷静に言った。「刑務所に入ってほしい」

Translated by Shoko Natori

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