心がけてきたのは「無心」で歌うこと─akkoさんのボーカルは、歌い上げるようないわゆる「ディーヴァ」スタイルとは対照的な、無垢な魅力があるといいますか。楽器の一部のように歌をアンサンブルに溶け込ませるからこそ、聴き手は感情を乗せやすかったのではないかと思っています。最近そういうスタイルの歌い手も多くなってきて、マイラバはある意味「先駆者」だったのではないかとも。akko:良くも悪くも、自分は何も狙っていないんですよね(笑)。とにかく、無我夢中でやってきたことの結果なので、だからこそ聞いてくださった人の近くにそっと寄り添うことができたのかもしれない。きっと計算されたものだと面白くないんだろうな、と思うのは、今もライブの時に「無心」で歌えた時に反響が大きい気がしていて。出来るだけそういう気持ちで歌えるように心がけてはいますね。
─「無心」ですか。akko:経験を積めば積むほど、人って頭で考えてしまいがちだと思うんですよ。歌なんて特に、そういう作為的なものがない方が、心も洗われると思う。「あれ? 今私は一体何をしていたんだっけ?」と思えるくらい心を「空(くう)」に近づいた時こそ、多くの拍手をいただいたり、泣きながら聞いてくれている人がいたりするんです。なので、「無心」という状態を常に一番大事にしなければいけないなと思っていますね。
─すでに身についてしまったものを、あえて外していくのはなかなか勇気が要りますよね。akko:歌っている人が気持ち良くなりすぎてしまってはいけないんじゃないかと。レコーディングでもそう。さっき「楽器の一部のように歌をアンサンブルに溶け込ませる」と言ってもらいましたが、まさにそう。楽器の一部になりたいと思いながら歌っていますね。もちろん、言葉はすごく大事にしたいし、それを届ける工夫も練っていますが。
2020年にビルボードライブで開催された前回公演「My Little Lover ☆ acoakko live, Happy 25th Anniversary」のライブ写真─デビュー25周年のアニバーサリーだった2020年には、Billboard Liveにて11月にライブを行いましたよね。緊急事態宣言は開けたとはいけコロナ禍の真っ最中。当時はどんな心境だったのでしょうか。akko:やっぱり、マスクをしているお客さんの前で歌うことが、頭では分かっていたけど実際に目の当たりにするとすごく寂しい気持ちにはなりました。その時はとにかく、コロナ禍でも「やれるならやりたい」と。もともと予定していた5月が延期になってしまったモヤモヤも残っていましたし、自分の中でライブのイメージも出来ていたんです。
─当時は何が正しくて、何が間違っているかももはや分からない状態でしたしね。akko:どんな行動をとったとしても、批判を受けただろうし。とにかく生で演奏したものを、直に聞いてもらうことの喜びはミュージシャンにとって何物にも替え難く大切なことなので、やらせてもらえてよかったと思っています。
音楽って、人の心を励ましたりハッピーにしたりするのが役目じゃないですか。それを届けることが、私たちミュージシャンの「務め」だと思うので、とにかく誰かの役に立ちたいという気持ちもありました。世の中は本当に暗いニュースも多く、不安なこともたくさんあるので、そんな中で今回ライブができることに大きな喜びを感じています。今回はリクエストを募ったり、明るめの楽曲を中心にセレクトしたりして。これからメンバーと詰めていく予定なのですが、セットリストの大体はもう決まりました。
─今回もakkoさんは楽器を弾くのですか?akko:実を言うと今まさに悩んでいるところなんです(笑)。今は楽器を弾くのが楽しいし、Billboard Liveにあるピアノが本当に素晴らしくて、それを弾ける喜びも十分あるのですが、上手なプロの弾き手と一緒なのでどうしようかなって。
─そこは「お楽しみ」という感じですかね。ちなみにBillboard Liveにはどんな思い出がありますか?akko:とにかく、いるだけで気持ちの良い空間ってなかなかないと思うんですよ。もちろん音響も素晴らしいですし、美味しいお酒や食事を楽しみながらゆったりと音楽を楽しんでもらえたら嬉しいですね。そういえば以前、大好きなリアン・ラ・ハヴァスのライブをBillboardで見たのですが(2013年)それもめちゃくちゃよかったです。
─普段はどんな音楽を聴いているのですか?akko:私、犬の散歩によく行くので、その道すがらいろんな音楽を聴いています。最近はジョン・バティステとマディソン・カニングハムがめちゃくちゃお気に入りですね。やっぱりR&Bとか、ポップかつオーガニックな楽曲が好きです。