クーデターの連鎖生む、対テロ軍事演習の実情 米

西アフリカのニジェールが誇る対テロ特殊部隊、ニジェール第1遠征軍(EFoN)との航空阻止演習に参加する米兵たち。(Photo by ANDREW CRAFT FOR ROLLING STONE)

2022年9月、米国防総省は米軍のアフリカでの活動をまとめた報告書をそっと発表した。その報告書によると、米国は少なくとも22のアフリカ諸国に部隊を派遣しているにもかかわらず、「テロとの戦い」において思うような成果をあげていないというのだ。

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9月末に国防総省が発表した報告書によると、アフリカ・サハラ砂漠南部の「サヘル地域」の治安情勢はまさに悪夢そのものだという。過去20年にわたり、米軍特殊部隊はこの地域で軍事演習を行なってきた。兵士たちは「影の戦争」を戦い、この地に倒れた者も少なくない。だが、これはアフリカにおける米国の軍事作戦の失敗を証明する新たな証拠にすぎない。アフリカ東部ソマリアに20年部隊を派遣し、ドローン攻撃や奇襲攻撃を行なったにもかかわらず、現地の状況は一向に良くならない。それに加えて西アフリカでは、この地域に駐留する米軍の手解きを受けた軍人によるクーデターが相次いで起きている。アフリカを担当する特殊作戦部門の司令官は、すべての原因は米国が抑圧的な政権とパートナーシップを結んだことにあると主張する。

「2019年以降、サヘル地域西部におけるイスラム過激派の暴力行為は4倍に増えた」と、アフリカを専門とする国防総省随一の研究機関であるアフリカ戦略研究センター(ACSS)が行なった分析にはこのように記されている。「2022年に発生した暴力行為の件数は2800。これは昨年の2倍である。このような暴力行為は、激しさと範囲の面で拡大している」

悪化する治安情勢は、アフリカを担当する特殊作戦部門であるSOCAFRICAにとりわけ暗い影を落とす。エリート部隊を管理しているSOCAFRICAは、ブルキナファソを拠点に活動する「ジャマーア・ヌスラ・アル・イスラム・ワ・アル・ムスリミーン」やモザンビークの「アフル・スンナ・ワル・ジャマア」といったテロ組織ないし過激な武装集団との戦いにおいて重要な役割を担ってきた。

本誌が情報自由法にもとづいて入手した2019年から2023年までの元秘密計画には、「SOCAFRICAは、米国の安全保障上の利益を向上させるため、アフリカのパートナーと協力して過激な武装集団の勢力の削減と分断を実行するべき」と記載されている。「最大限の成果をあげるためにも、SOCAFRICAはアフリカ東部、チャド盆地、サヘル地域、マグレブ(北西アフリカ)の4つの主要地域に注力しなければならない」とその文書は続く。

結果として、米国はグリーンベレーやネイビーシールズ、海兵隊武装偵察部隊といった陸・海軍屈指の特殊部隊をアフリカの危険地域に送り込んできた。本誌が入手した米特殊作戦軍のリストによると、2021年には17のアフリカ諸国に特殊部隊が派遣されたことがわかる。具体的には、ベナン、ボツワナ、ブルキナファソ、チャド、コートジボワール、ジブチ、エジプト、ガーナ、ギニア、ケニア、マラウイ、マリ、モザンビーク、ニジェール、ナイジェリア、タンザニア、チュニジアだ。

だが、実際はこれだけではない。

本誌が行なった調査によると、2021年にはコンゴ共和国、モーリタニア、モロッコ、セネガル、ソマリアの少なくとも5カ国にも米軍特殊部隊が派遣されていたのだ。それに加えて、マダガスカルやモーリシャス、セーシェルと海上で軍事演習が実施され、モロッコやケニア、ソマリアにも米兵が送り込まれたことがわかっている。

Translated by Shoko Natori

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